誰か嘘だと言ってくれ
俺が元々の世界で、やさぐれて不良になって荒れていた俺の根性を叩き直し、俺の生き方や道を教えてくれた師匠が居た。
サラリーマンと道場主を兼任していて、馬鹿正直に真面目に生きていて俺の憧れだった。
……それなのに……俺と妹の望はあの日、時間になっても明かない道場に不自然さを感じながら合鍵で入って他の皆と自主練をしていた。
師匠は女子にも人気で、心配で休憩時間に師匠のスマホに電話する女の子も何人か居た。
「おかしいよ?鳴らしているのに繋がらない」
「何で?先生、いつもなら先に来てるのに」
「先生ならそのうち来るさ」
女の子達の声を聞きながら、高三だった俺は年長者として励まし、何気無くTVを付けた。
この時間なら、チビエマニュースで流行りの飲食店を紹介する腹ペコペロリコーナーがやってる筈。
旨い食べ物などをTVで見れば、不安なんか吹っ飛ぶ筈だ。
大丈夫、師匠ならきっと遅れてごめんって言って来る筈だ。
昨日、師匠と俺はいつも通り挨拶を交わして別れたんだ。
『じゃあ、また明日な』
ってさ、な?いつも通りだろ?
だから……きっと大丈夫。
所が、映し出されたのは……この町の駅でニュースのテロップに大きく速報と出ていた。
救急車に乗せられ次々と運ばれて行く人々。
救急隊やドクターカーで来た医者にトリアージされた負傷者から、重症度によって決められた人々が率先して運ばれているらしい。
医者達の怒号や、生々しい負傷者の呻き声。
駅の至る所には、運ばれずに死亡と判断されたのか、ブルーシートに覆われた死体が数十体あった。
『夢見る虚ろの世界には、いつだって希望と絶望が交差している♪それでも、前を向いて太陽が照らす道をひたすらに歩けば必ず出られると信じて♪』
その中から、師匠が気に入って着信音にしていたバンドの曲が聞こえる。
ブルーシートからでも分かる血の海、ブルーシートの隙間から師匠の茶髪の髪が見えた。
「嘘よ……そんな……先生が……嘘……」
「なっ………」
「どうして先生がっ!?嘘!!こんなのって!!」
師匠をガチで好きだった女の子三人が取り乱す。
師匠は三人を子供だと思って相手にせず、弟子としてしか接していなかったから知らなかったかも知れないが……。
特にこの三人は、本当に師匠を好きだった。
師匠のお陰で道を誤らずに進めた感謝も大きいかもしれないが、いつか大人に成れたらと思って頑張っていたらしい。
俺の中でも、時が止まって師匠の死体から目を反らせなくなった。
誰か、嘘だと言ってくれ。
あの人は、昨日もいつも通り別れたんだ。
だから今日だって……
アニマルミニ劇場。
玉白は玉に乗って玉に転がされる。
何だろう、メイビストが呆れた顔をして見ている。
ルーベンスが笑ってる!!
もうすぐ、第三王子とヒイロが迎えに来る。
第三王子、脳ミソが筋肉?
「いやいや、脳ミソ筋肉だったら人じゃないし」
「脳ミソが蟹味噌?」
「蟹味噌なら旨いけど、大丈夫だ。シリウス様はちゃん文武両道だからな」
「メイビスト、怪しいもんだよ?シリウス兄さんの場合はそれとなくは考えてるんじゃないかと思わせて、実は全く考えてないってのもあるもの」
何やら、言い合いするメイビストとルーベンスでした。




