思い出すのは過去の記憶
「……聖木属性魔法……認めたくはなかったが……やはりエリオットが……」
木に呑み込まれながら、私はかつて父に言われた忠告を思い出す。
カイザー大帝国に攻め込まれ、国の防衛戦争で、私は息子達に王家を任せ、四大公爵と共にカイザー帝国本軍とぶつかり死闘を繰り広げていた。
『ふはははっ!!無駄無駄無駄よ!!遥かな時を生きるこの僕と、牙が生えたばかりの子犬みたいな君達若造とでは力の差も……ましてや経験もまるで違う!!』
カイザー大帝国を千年以上統べてきた皇帝は、見た目がダークエルフの少年のままだったが、強さが桁違いの化け物だった。
魔法や剣で挑んでも、触れる事さえ敵わず、成す術もなく私達は地に倒れ死を覚悟した。
『困るなぁ、うちの息子達を此処まで痛め付けられて……親である俺達がちゃんと御礼しなきゃ駄目だよね?』
目の前に現れたのは、世直しの旅に出ていた筈の父上と先代公爵だった。
『羽虫ごときが吠えるなよ!!貴様ら獣は地に平伏して赦しを乞い、至高の存在である我がエルフ族に服従するのが正しい現実だ!!』
皇帝は、一瞬で幾つもの魔法陣を出現させて召喚獣を呼び出す。
『これだから若作りする老人は嫌だよね。俺達は誰にも従わないし生きる道は自分で選ぶ。腐っても堕ちたエルフを敬ったりはしないさ』
笑って父上が言うと、同時に魔力が膨れ上がった。
それから父上と前公爵達の闘いは凄まじかった。
父上は剣を抜いて次から次へと来る召喚獣を斬り伏せて進み、皇帝は更に魔法で父上を攻撃したが……
前公爵達の中には、皇帝の魔法を防いだり、父上の目の前に襲い掛かった召喚獣を剣で真っ二つに斬って道を切り開く者も居る者も居れば
父上に魔法結界を施す者や、父上の隣に並び召喚獣を暗器で串刺しにする者も居る。
『くそっ!!獣風情がっ!!いい気になりやがって!!』
痺れを切らした皇帝が鞘から剣を抜いて父上に斬り掛かった。
『おや?動きに切れがないね』
『五月蝿い!!五月蝿い!!』
笑って父上は皇帝を馬鹿にし、皇帝は怒りで顔を憤怒に歪めながら斬り合う。
だけど、父上と皇帝には剣の実力差が広かっていた。
何度か剣でぶつかり合った時、皇帝の僅かな油断を父上は逃さなかった。
父上が皇帝を斜めに斬り付け、皇帝の身体は血に染まり周囲に返り血が飛び散る。
父上達の闘いは神世の時代を体現したような凄まじい闘いだった。
『くっそ……あり得ないあり得ない!!この……偉大なる皇帝の僕が……貴様みたいな獣風情に……!!やられるなんて……』
父上に罵声を浴びせた皇帝は、ふらついた後ゆっくり後ろへ倒れ絶命する。
だが、私には皇帝の身体から出た黒いモヤが後ろに居た皇帝の部下に入るのを見た。
妙に気になったが、カイザー大帝国軍はそのまま撤退して直ぐに国へ引き上げていく。
私は敵が撤退するのを黙って見送った。
父上はずっと、帝国軍を見据えたまま厳しい顔付きで立ち尽くしていた。
全て分かったのは一週間後だった。




