閑話
薄暗い地下牢に囚われたサーランド伯爵とその家族が居た。
対峙するのはハウザーとエリクレア。
「落ちこぼれの能無しの癖に!!貴様は優秀だった4人の兄達に劣る!!何故それが分からず玉座に居座り続ける!?」
中性的な顔立ちを醜く歪ませてサーランド伯爵は怒鳴り付ける。
「それでも王の直系は私しか居ない。王族に牙を剥いたのだから例外など有り得ん。私は私の意志で王として有り続ける」
ハウザーは真っ直ぐサーランド伯爵を見据えて言い切った。
「ふふ、ハウザーは我が一族が守る。貴様らが何度命を狙っても必ずな」
エリクレアも不敵に笑って言い放つ。
「悪魔め!!無能と悪魔の息子は必ずや我が国を滅す!!それが何故分からん!?」
激しく取り乱してサーランド伯爵は叫んだ。
「ほう?それは聞き捨てならんな?」
「やめてよね?下らない言い掛かりなんて迷惑だからさ」
そこへ2人の青年達がやって来た。
「……あっ…貴殿方は……まさか……」
青年達の顔を見た途端、ハウザーは青ざめる。
「答えろ。貴様の力だけでは企てなど出来ん筈。背後に居るのは誰だ?」
「ふふ……はははっ!!どうせ知った所で王家の直系は滅びる!!」
笑ってサーランド伯爵は言うと、右手だけを神獣化させて自分の胸を貫いた。
「……馬鹿な奴……」
不愉快そうにもう1人の青年は目を細める。
「……ハウザー……」
心配そうにエリクレアはハウザーを見詰めその手を握る。
「大丈夫だよ、エリクレア。私は兄上達が亡くなってから決めたんだ。例え茨の道でも進むとね……」
ハウザーはエリクレアに答えると、サーランド伯爵の死体から目を反らさなかった。
「……恐らく、その黒幕が10年前の主犯だろうね」
「……舐めた真似を……必ずや引きずり出してやる」
青年2人は顔を見合わせて決意を固めるのだった。