閑話動き出す者後編
「なぁ、このままアルカナディアと闘ったらどうなるかな?アクトは頭良いじゃん。教えてくれよ」
「勿論そのまま戦争になるだろう。アルカナディアは国王を含めた少数の臣下しか居ないし、王城に居る私達が有利だ。多勢に無勢になるが……確実に制圧或いは捕縛できる」
主達を待つ間、ヒイロが私に聞いて来たので困った顔をして私は答えた。
黒髪の少し長い髪を下の方で三つ編みにし、黒い軍服を着たヒイロは座り込んで不安そうにしている。
騎士団副団長であるにも関わらず、ヒイロは私達4人の中で一番甘い。
金髪の髪を一つに結わえ、灰色の魔術師団副団長の正装ローブを着る私は何とも言えず腕を組む。
確かに……10年前の事件で全てが狂ったのは私も同じだ。
トゥワイライト次期公爵だった私は、右目に禁術の影響が残ったせいで、前髪で片眼を隠している。
「……そっかぁ」
寂しそうにヒイロは下に項垂れた。
「しゃきっとしろ。うだうだ言ってても仕方ないだろうが」
そこへヒイロに苦言を言うのはナツノだった。
白銀に近い金髪の長い髪を一つに結わえ、白い近衛騎士団副団長の軍服を着ている真面目で固い青年。
あの10年前の事件さえ無ければ、ナツノはウルフソード次期公爵、ヒイロもフェレス次期公爵として主であるレミオ様、シリウス様と堂々と昼も夜も仕えていた筈。
……そう、私達は昼間人間の姿では居られない。
しかも私は、昼間エリオット様に振り回された。
目の前で、父をエリオット様に人質にされて成す術も無く。
神世の奇跡を魅せられて、その後は母に父共々説教を受けた。
やっと執務出来ると思えば、アルカナディアとの一触即発の危機。
クレイ様の右腕として、私も真剣に向き合わないと行けない。
「……何?ヒイロお前アルカナディアと闘うの嫌な訳?面白そうだろ?やり合えるんだぜ?」
メイビストが面白そうに話に入ってくる。
「……兄さん、ヒイロさんは兄さんみたいに戦闘狂じゃないんだ。同じに言っては駄目だよ」
メイビストを嗜めるのは、黒いコートに黒のタートルネック、黒いズボンと黒い革靴と黒一色の仕事着に着替えた弟のメイゼスト。
同じ双子なのに性格が違うから不思議だ。
メイゼストは眼鏡を掛けている。
間違えることは無いが、区別付ける為とメイゼストは眼鏡を今でも着用していた。
「エリクレア様とアルカナディア王国が害を与えたのは事実だ。闘うのはもう決定事項だから避けられん」
ナツノは無表情で言い切って腕を組む。
「仕方ねえよ。喧嘩売ったのはアルカナディア側だ。売られたからには倍にして買わないと気が済まねぇし」
メイビストも楽しそうに笑って目を細める。
「っ……」
ヒイロは泣きそうな顔をして落ち込んだ。
「私は主であるクレイ様の命令に忠実に従うまでだ。クレイ様が討てと命じられたら私もアルカナディアを討つ」
まだ躊躇うヒイロの表情を見て私もはっきりと言った。
「僕も皆と同じ意見です」
メイゼストも頷いて同意する。
「……分かってる……分かってるけど……こんなのは悲し過ぎるよ」
ヒイロは苦しそうに言うと、膝を抱えて項垂れる。
優し過ぎるヒイロには悪いが、もう後戻りは出来ない。
私はヒイロに呆れて溜め息を着いた。




