閑話動き出す者前編
「父上とエリクシード国王は間違いなく一戦交える。……残ったアルカナディア側の側近達がエリクレアを逃がそうとするかも知れない。……その前に、俺達でエリクレアの身柄を押さえるぞ」
王宮全体に防御魔法結界を張り終えると、俺は弟達に命じる。
「……だけどレミオ兄さん、俺は今でもエリクレアが敵だとは思えないんだ」
「……ハウザー」
不安そうにハウザーが俺に言うので、俺もハウザーの気持ちを考えるとやりきれなさを感じる。
「俺は……彼女の人柄が好きになって妻にした。彼女が俺に見せる表情も全部が嘘に思えないのです!!」
泣きそうな顔をしてハウザーが必死に訴えた。
……その気持ちは痛い程分かる。……だが……
ハウザーになんて答えてやれば良いか、俺は困って考え込んで居ると……
「あの女は、君をゲームのキャラだと思い込んで馬鹿にして居たんだよ?同情した挙げ句に、僕達4人に苛められて可哀想な君を手に入れた事で今まで悦に浸って居たんだ!!君は……いや、お前はそれでも……あの女を庇うつもりなのかい!?」
珍しくルーベンスが感情を爆発させてハウザーに怒鳴り付ける。
「……俺は…俺は俺はそれでも……エリクレアを夫として信じたい!!」
反応に困ってハウザーは少し躊躇った後、一度目を閉じて再び目を見開いてルーベンスに答えた。
ハウザーの表情は、覚悟を決めた男の表情だった。
俺達の後ろをヒョコヒョコと、ヒヨコ見たいについて回った幼いハウザーの姿は面影を残しつつも、こうして俺達に意見を出来る大人になったんだなと感慨に更ける。
「僕の弟でありながら……馬鹿な子。フレイムチェーン」
寂しそうにルーベンスが言った後、一言だけ呪文を言うと紅色の鎖が出現してハウザーを拘束する。
「っ!?ルーベンス兄上!?」
身動きが取れずハウザーは床に転がって叫んだ。
「……情に流されて何も見えないお前はただの足手まといさ。せいぜい……床で転がっているのがお似合いだよ」
ハウザーにルーベンスは冷たく言い捨てると先に走り出す。
「……すまん、ハウザー。私もルーベンスと同意見だ」
「……あー俺もだぜ」
クレイもハウザーに謝って言うと、シリウスも申し訳無さそうな顔をして頷く。
「……クレイ兄上……シリウス兄上……」
ハウザーは呆然とする。
「そう言う訳だ。そこで反省でもしていろ」
俺も溜め息をついて言うと、クレイとシリウスと共に走り出す。
暫く走って居ると、直ぐにルーベンスに追い付いた。
「おい、ルーベンス。あの鎖でハウザーが火傷負わないだろうな?」
ハウザーを心配して俺はルーベンスの隣を走ると問い掛ける。
「それなら大丈夫。ちゃんと温度も下げたし、普通の鎖より少し暖かいだけだよ」
……だって床は冷えるでしょ?
ルームは俺に答えると泣きそうな顔になる。
「ハウザーは……昔から努力家でさ……僕達に追い付こうとして……ずっと頑張って来たのを…僕達は誰よりも見てきた。だから、あの子が王になる時も、レミオ兄さんに帝王学を学んで徹夜していたのを知っている。……それなのに……あの女はハウザーを馬鹿にした。あの子も、あの女を庇ってるから悔しくて……!!」
涙を堪えながらルーベンスは俺に言うと、拳を握りしめた。
……ハウザーが産まれた時、一番にお前が喜ぶ程、ハウザーを可愛がっていたしな……。
俺もルーベンスの気持ちに苦笑すると、その頭を片手でポンポンと撫でる。
クレイも隣を走りながらルーベンスの頭を反対側からワシャワシャ撫でた。
シリウスはルーベンスの後ろを走りつつ、後ろからバシバシとルーベンスの背を叩く。




