我が王も全て知って居られました
「……ふう……やれやれ……部下からの報告で来てみれば……まさかハーランド一族の中でも【狂剣】と異名を持つ貴方が動いているとは……」
私は溜め息を着くと、メイビストから視線を外さないまま愚痴を溢す。
ハーランドの【狂剣】。20数年前、この神獣王国は大帝国カイザーに狙われ大軍が攻め寄せた。
そう、大帝国カイザーこそ裏で手を引く黒幕だったのです。
ゾロアと同時に我がアルカナディアと、神獣王国を同時に攻めて滅ぼし、この大陸を支配しようとしたらしいですね。
当時の最強と詠われた先々代国王は他の先々代公爵と世界世直しの旅に出ていて現在も不在。
即位したばかりの先代国王が前公爵らと共に、物量で押し寄せるカイザー軍と戦闘をしていたその時……。
王都に別動隊が雪崩れ込み攻め寄せたようです。
その別動隊を、4人の幼い王子と共に副官として仕え、鬼神奮迅の強さで悉く殲滅したのが次期公爵だった幼い4人の嫡子達。
それぞれ異名を持って居ますが、その中で厄介なのが【狂剣のメイビスト】
4人の王子と副官は、東西南北の城門を死守したと言われてます。
西門を守ったルーベンス様とメイビストは、敵軍の死体の山の中でひたすら剣を振って斬り捨てていたとか……。
メイビストは返り血を浴びつつ、けっしてルーベンス様に傷を負わす事なく敵を斬り続けた。
その姿から【狂剣のメイビスト】と呼ばれるようになったのですよね。
舌舐め擦りをするメイビストを見て、私は今一度気を引き締めました。
「貴方がエリクレア様の元に居ると言うことは……エリクレア様の罪も知られたと言うことですね?」
「俄に信じがたいが、本人が言ってんだから全ての元凶と考えて間違いねぇだろ」
私が問い掛けると、メイビストは殺気を放ちながら答えた。
「エリクレア様を見逃してくれそうに有りませんか?」
「王族に禁術を使った以上、身柄は此方で預からせて貰う」
駄目元で私は問い掛けて見たが、メイビストにぴしゃりと一蹴りされてしまう。
「私と貴方が本気で闘えば、どちらもただでは済みませんよ」
「んなの分かってる。あんたが邪魔するなら黙らせるまでだ」
呆れて私は言うと、糸巻きを軽く振って広げてみた。
メイビストは油断なく糸を見ながら当然の如く答える。
……困りましたね。我が王には極力戦闘は避けるように言われているのですが……この部屋にはエリクレア様と妻パトラ様が居ます。
……本気で闘えば……二人まで巻き込んでしまいますね。それは何としても避けねばなりません。
私は先程の我が王との会話を思い出す。
『もしも、勘が良いルーベンスの配下が既にエリクレアの事を知って居たら決して退いたりはせぬだろう』
人間の姿に戻った我が王は、窓辺に立ち中庭を見ながら言った。
『そうなると、このまま闘わずに退かせるのは難しいと思います。万が一、エリクレア様とパトラを巻き込んでしまったら……私には不安しか有りません』
偽る事も無く、私は王に進言する。
『必要なら、王である俺もエリクレアとアロウの事を全て知っていたと話せ。王である俺も知っているなら、迂闊に手を出せんだろう』
『良いのですか?それでは……神獣王国の先代国王と争うことに……』
我が王の言葉に私は思わず困惑する。
『構わぬさ。遅かれ早かれ事を構えることが早くなるだけだ』
私に振り返った我が王は、王の顔ではなく、娘を持つ父親の顔をしてました。
……申し訳ありません、我が王よ……
拳を強く握り締め、私はメイビストを真っ直ぐ見据える。
「我等が王、エリクシード国王も今回のエリクレア様とアロウ様の企みを全て知って居られました」
私は苦渋の決断をしてメイビストに事実を告げた。
「……。おいおい……マジかよ。全て知った上で息子と娘を見過ごしたってか?……冗談じゃねぇ……」
あからさまにメイビストから敵意を感じるが、私は全てを受け止める覚悟で立ち続ける。
「この件はルーベンス様に報告する。恐らく先代国王陛下にも伝わるぜ。そっちの王にも伝えとけ、神獣王国はアルカナディア王国の敵になるとな」
「……分かりました」
メイビストに言われ私は苦虫を噛み潰したような表情で答えた。
そのまま音も無くメイビストは姿を消し、天井裏には私と倒された部下だけが残されました。




