4匹の子犬と暗殺者
その後、僕は別室にあるベビーベッドに寝かされた。
……何だろう?僕の側付きに任命された乳母の気配がおかしい。
乳母なんて雇えるから、きっと今の両親は金持ちなのかもしれないけど……。
この気配は……プロの放つ殺気だ……。笑顔の裏に上手く隠していたけど間違いない。
僕はベビーベッドに近付いてきた乳母をじっと見詰める。
目の前まで来た乳母は、袖の中から短刀を取り出すと僕を冷たく睨む。
「ボンクラ国王と、血塗れ王妃の間に産まれたのが行けないのよ。これも任務なの。……悪く思わないでね?」
無表情で乳母はそのまま僕に短刀を振り降ろす。
……その時だった。
音も無く、天井から4匹の子犬が飛び出してきたのは……。
「ワン!!ワン!!」
金色の子犬が乳母の顔面に飛び降りて激しく吠える。
「ギャオン!!ギャオン!!」
銀色の子犬も乳母の足元で激しく吠えた。
「このぉっ!!獣ごときが!!」
怒り狂った乳母が何とか金色の子犬を顔から引き剥がそうと暴れまわった。
「くぅん!!」
「ワオン!!」
僕を守るように、紫色の子犬と、赤い子犬がベビーベッドの前で寄り添う。
「子犬達、良くやったわ」
母の声と共に、いつの間にか黒ずくめの者達が現れて乳母を取り押さえていた。
「貴女がサーランド伯爵から送られた刺客なのは分かって居たのだけど……、中々しっぽを出さないのですもの。我が息子の乳母にわざと任命して子犬と共に貴女を監視させて貰ったわ」
「己!!この私を泳がせていたのか!?」
乳母は吠えるように母に叫ぶ。
「貴女が浅はかで助かったわ。……連れていけ」
「「はっ!!」」
母の命令で乳母は黒ずくめに連れていかれた。
「エリオット、まだ貴方は赤子だから分からないと思うけれど……この国は敵ばかりよ。それでも……私達が必ず守るわ」
母は僕にそう言うと、部屋から去って行く。
……ようするに、父も母も僕も命を狙われていると言う事か?
一度前世で死んでいるからか、僕はあっさり受け入れていた。
「ワンワン!!」
「ギャウ!!」
「くうん!!」
「きゅん……」
ベビーベッドによじ登って四匹の子犬が僕の顔を舐めまくる。
……今度こそ、寿命を全うするために生き残らないとな……。
顔をべちゃくちゃにされながら僕は決意する。