エリオットを絶対に助ける!!
「エリオット様が……息をしていません!!」
青ざめた顔でメイゼストが叫び、私達は思わず冷静さを失った。
日が傾き、夜へと変わり始めた瞬間、私達この場に居た動物は人間へと戻る。
人間になった私達を見て、マーシャとシェナは直ぐに目を瞑り、シュリとマリアは2人の前に立ち、空間からローブを取り出して身に纏うと、私達男性の姿が見えないように目眩ましの結界を張った。
私達も空間からバスタオルを取り出して直ぐに腰に巻き、見苦しい姿を隠す。
女性達には悪いが、今は少しでも時間が惜しい!!
手早く自分の長い黒髪をゴムで一つに纏めると、メイゼストからエリオットを受け取り直ぐに聖魔法で治療する。
0歳児であんな聖魔法を使って只で済む筈がない。
案の定、魔力回路がズタズタだ。
「クレイ兄さん!!僕は何をした方が良い!?」
珍しくルーベンスが取り乱して叫ぶ。
「私は聖魔力に集中して治療を続けるから手を離す訳には行かない。ルーベンスはレミオ兄さんとシリウスと同じに私の背を通して魔力を貸してくれ」
「わっ分かった!!」
私が指示をすると、レミオ兄さんとシリウスと同じく、私の背に手を当て魔力を送り始めた。
本当はレミオ兄さんの方が聖魔法が上だが、魔術師として私の方が魔力と魔法の操作が長けている。
何も言わずとも、レミオ兄さんとシリウスは素早く動いてくれていた。
「ぐぉっ!?滅茶苦茶魔力を持って行かれるぜ!?」
「我慢しろ!!クレイ、絶対にエリオットを死なせるなよ!?」
魔力の消費が激しいのか、少しパニックになるシリウスに対し、レミオ兄さんは怒ると私にも叫ぶように言い放つ。
「言われなくても分かっている!!」
レミオ兄さんに言い返すと、私は目を閉じ意識を集中した。
「私も助力致します!!」
鳩から人間に戻ったアーチェスも加わると、一気に聖魔力を放出する。
アーチェスの背を、コウモリから戻ったマゼルキスとメイビスト、メイゼストも手を翳して魔力を貸していく。
「戻って来い!!エリオットっ!!戻れ!!戻れ!!戻れ!!」
必死に私はエリオットに呼び掛けて治療を続けた。
それから、一体どのくらい経ったのか、エリオットの身体が少し動いたかと思ったら息を吹き返した。
「……良かった……」
私は安心すると、身体に力が入らなくなり座り込む。
「……間に合って良かったです」
アーチェスも座り込んだ。
全員に安堵の雰囲気が流れた時、遅れてやって来た者が居た。
末っ子で現国王のハウザーと、義理妹で王妃のエリクレア。
「……これは……一体?」
「……何故死んだ筈のメイゼストが生きてるの?」
二人は困惑して顔を見合わせる。
さて、何処から話すか?
私がエリオットを抱え困って居ると……
「俺が説明しよう」
レミオ兄さんが空間からローブを取って纏うとハウザーとエリクレアに歩み寄る。
現場の異常事態に二人が生唾を呑み込んだ。