泣いて良いのか、笑って良いのかわからない
王家の闇として生きる一族の次男として、私メイゼストは主の第四王子ルーベンス様に兄として仕えて来た。
能力に恵まれなかったハウザー様は、他の御兄弟と違って後ろ楯となる貴族が居なく、ルーベンス様や殿下方々は悩みながらも裏と表でハウザー様を虐げる貴族を牽制、或いは物理的に始末してきた。
兄弟仲も良く、自慢の兄メイビストと力を合わせ、これからも第四王子であり唯一無二の主であるルーベンス様と、これからも王家の闇として王族を守って行くのだと信じていた。
それなのに、10年前に事件は起きた。ハウザー王子と隣国の姫との顔合わせの為……次男である代理を残し高位貴族の全てが集まった場で、ハウザー王子と姫以外の全ての者達が命を落として遺体ですら見付からずに行方不明となる事件が……。
下位、中位貴族は高位貴族の失態を責め立て、矢面に立たされた私を含めた次男の領主代理ではそもそも、事件の全貌され掴めず、公爵家から伯爵家に降格され屈辱を味合わされてしまう。
それでも私は、自分の部下を使って王家で10年前何があったのか調べようとした。
だが、どんなに調べても情報は集まらなかった。
同時にこの10年で成り上がりの高位貴族が反王家派として動き、ハウザー様とエリクレア様の命を狙っている事に気付く。
10年前の真相も知りたいし、反王家派の企みも掴みたい。
悩んだ末、私は反王家派に潜入して王家を敵に回し、自分の命を掛けて真相を掴むことにした。
乳母であり叔母のマーシャも巻き込んでしまったが、それでも知らずには居られなかった。
背中を追って居たルーベンス様と、兄のメイビストが突然消え、尊敬していた父や母も突然失った私は喪失感でいっぱいになった。
今の私には真相を探ることしか出来ない。
マーシャには妻子を託し、後は自分で自害する覚悟で牙を剥くだけ。
予想通りマーシャは捕まり、私達家族も王家に捕縛された。
私は最後までハウザー様に暴言を言って叫ぶと、そこに第二王子クレイ様と第四王子ルーベンス様が現れた。
……あぁ、やっぱり生きて居られた。……父上や兄上には一族を巻き込んでしまって申し訳ないが……此処は自分の命で償わなくては……
自分の胸に躊躇いなく爪を立てて私は自害して果てた。
……確かに死んだ筈だったのに、胸に暖かな温もりを感じて目を覚ますと、マーシャに命を狙われていた筈のエリオット様が私を必死に治療魔法で治していた。
いや、聖魔法か?……この方は……何て方なんだ……。
魔力が尽きて気を失ったエリオット様を私は抱き抱える。
シェナも、ラッチェもルックも涙を流して私を見詰める。
何故か親近感があるコウモリ達は私を睨み付けているし……
子犬4匹と鳩は呆然としていた。私は自分が助かった事に泣いて良いのか、笑って良いのか分からなかった。