命は限りあるものだから……
僕は既に亡くなってる人を見て間に合わなかったんだと思うと、隣で泣く5歳くらいの男の子達に振り返る。
同じ顔だから双子だと思う。
ごめんね、怖かったね?悲しいよね。
口に出して言えないもどかしさに苛立ちと悲しみがぐちゃぐちゃに混ざる。
悲しくなって僕も涙を流すと、4匹の子犬が慰めてくれた。
鳩の翼で銀色の子犬が僕の涙をごしごししてくる。
もふもふだけど、少し痛いかな?
僕が困って苦笑いしていると……
「ワオオン!!」「きゅわわわ!!」「くうん!!」「ぎゃいいいん!!」
他の3匹に1匹はボカスカと叩かれていた。
……ゲームとか、そう言う小説とか僕は見たことないけど、うちの生徒が言ってた気がする。
『聖魔法とか、聖力とかも一種の魔法です。ゲームやマンガでヒロインが仲間や恋人の為に涙を流すと、聖力が覚醒?して生き返らせるとか多いんですよ。まぁ、神道先生には言っても分からないと思うけど……想いの力で甦るの私、ロマンチックで好きです』
僕より少し年下で、28歳の彼女は笑って僕に言ったのを思い出した。
……此処が剣と魔法の世界なら……聖魔法もあるかも知れない!!
僕は両手に気と魔力を纏うと、鉄格子はあっさりと曲がった。
周りに居たコウモリや子犬、鳩がポカーンと口を開けているけど、僕は隙間から気にせずにずんずんと進む。
美しい女性の膝に、中世的な顔立ちの男性が亡くなって寝かせられている。
心臓の部分を何かが貫いた跡が痛々しい。
躊躇いなく僕は両手に再び気と魔力を纏って青年の心臓に手を当てる。
「なっ!?」
「っ!?」
「……!?」
女性や男の子達は僕の行動に驚く。
気は自然の力から集めるもの、魔力が僕の産まれ持つものなら……2つを合わせて万物を成せる筈……!!
聖魔法が何だか僕には分からない。
それでも、この人には家族を残して死んで貰いたくない!!
……例え、僕の魔力や気が尽きても、助けたい命を助けたいんだ!!
僕は無我夢中で力を放出し、そこで意識を失った。