ハーランド家侍女長の矜持
私はハーランド家に仕える侍女長マーシャ。私の向かい側の牢には亡き主人メイゼスト様の御遺体を抱き締め涙する夫人シェナ様と、怯える双子の兄弟ラッチェ様とルック様が居られます。
私は亡き主人に言われたことを思い出すと、静かに目を閉じるのでした。
半年前、メイゼスト様は私を呼びつけ計画を話されたのは、ハーランド王都別邸の地下室でした。
代々暗殺や諜報を担うハーランド家は地下室に防音や、防魔法を掛け厳重に何をしても漏れないようにしているのが普通です。
ハーランド家は王家の闇を司る家。元は公爵家でしたが、10年前の事件で下級貴族によって爵位を落とされても、メイゼスト様は頑張って居られました。
「我が家を含め四大公爵家と、連なる高位貴族が地位を奪われてから10年が経つ。我々に取って代わり、今の高位貴族は反王家派として何か良からぬ画作を目論んでいるとか……。私は今でも我が主第四王子ルーベンス殿下や、我が父と兄が死んだとは思えない。それに……王になられたハウザー様が王妃に守られているとは言え、心配で堪らないんだ」
苦しそうにメイゼスト様は仰有られました。
「及ばずながら王城の様子について私の伝や人脈を駆使し、情報を集めて参りました。昼間は人語を話す動物達が務めており、夜になると人間が務めているらしく、主な部屋には決められた人間しか入れないようです」
「昼間は人語を話す動物が?それは妙だな」
私の報告にメイゼスト様は眉を潜める。
「それと……ある一定の仔犬4匹が
他の動物を連れてハウザー様と人語で親しく話している様です」
「人語を話す仔犬が4匹……か」
私から聞いてメイゼスト様は眉をひそめられた。
「王家や他の高位貴族は10年前の事件で何か秘匿しているやもしれん。これより私とお前は反王家派に潜入し、ハウザー様に近付き真意を確かめる。もしも、我々の迫真の演技に気付かれず、全て失敗したら私は自害をする。お前は妻子をつれて逃げろ」
メイゼスト様に命じられた命令はこれが最後でした。