表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/65

30・悩める少年



うまくいかない恵太をイライラさせるもう一つの理由が

亜子と思うように連絡が取れないもどかしさだった。


急激な仕事の増加は亜子との距離を、確実に遠ざけていた。


週に数回ある英語の授業で顔をあわせるものの、

特別2人の会話を楽しめるものではない、当たり前だが淡々としたものだったし

学校で亜子を呼び止めて話をする、暁のような勇気も度胸もない。


メールも互いの忙しさのあまり、朝のメールに夜返信をするというような

時差が出てしまうことも度々だった。

声を聞きたくても、恵太には電話をする理由が見つからない。


何一つ確かなものがない関係。

それでもこの、穏やかな時間が続けば満足なはずだった。



それが、亜子からのメールが1日以上空くことはなかったのに、

もう3日連絡がない事に自分でも信じられないくらい、苛立ち、不安を感じていた。


土日を挟んで2日、そして今日、月曜日は

イメージモデルを務めるブランドの冬物のスチール撮りがあったため

学校を休んだ恵太。


今朝、亜子を案ずるメールを入れたが返事はなかった。

手にした携帯が告げる『新着メール 0件』という文字を眺めながら

何ともいえない、じめっとした感情が渦巻く。


何か気に触るようなことをして、嫌われたんじゃないのか。

ただ忙しいだけなのか、何か大変なことが起きているのか。

それとも、彼氏がいるのか・・・。


最後の思考にたどり着いたときに、ちくりと痛む喉元。


想いは伝えた。

誰にもナイショで、この小さな携帯電話で繋がっている。

それだけで満足だったはずなのに

どんどん欲張りになっている自分に気がつく。


人を好きになったこともあるし、付き合ったこともある。

でもどこか相手任せで、自分から想いを伝えたこともない。


好きになって付き合ったはいいけれど、

相手が、芸能界へのステップのために

自分に近づいていたことを知るなど、苦い経験もした。

そうじゃないにしても、


「あなたはいい人だけど、どこか物足りない」

「優しすぎて私にはつらかった」


など、恵太にとっては理不尽極まりない理由で相手が去っていく。

そんなことが続いたせいで、付き合う、という関係がとても苦手だった。

本気になって、傷つきたくなかった。


それなのに、今。

亜子を独占したい。

亜子と確かなつながりが欲しい。

亜子に触れたい。


恐ろしい勢いで膨れ上がっていく感情に

自分でも戸惑うことしか出来なかった。


「あー!もう!!」


役のために、伸びたままになっている頭を乱暴に掻く。

映画を引き受けるなど、返事もしていないのに役作りで髪を伸ばす。

おかしな話だった。


結局どうしたいんだ、俺は。

仕事も、先生も。


携帯を乱暴にしまおうとした時、

着信音が鳴り響いた。

先生?!

咄嗟にディスプレイを確認する。

そこには『 暁 』と出ていて、自分でも嫌になるくらい

イライラしてしまった。


「・・・はい」

『あ、恵太~?俺~。今大丈夫??』


のんびりと間延びした暁の声。

まるで悩みのなさそうなその声に、溜息交じりで返す。


「今終わった。何?」

『うっわ。恵太、機嫌悪っ。亜子ちゃんと喧嘩でもしたぁ?』


今一番聞きたくない名前に、カチン、ときた。


「用事ないなら、切る。じゃあな」

『ちょ、ちょっと待てって!!ジョーダンジョーダン!!!切るなよ』

「・・・じゃぁ、何」

『やー、一応恵太の耳に入れておいたほうがいいかと思って』

「・・・だから、何だよ」

『亜子ちゃん、金曜日の夜から熱が下がらないらしくてさ~。今日も学校休んだんだよね~。

亜子ちゃん一人暮らしだろ?ちゃんと病院行ったのかねぇ。メシ、喰えてないかもねぇ?』


今一番聞きたくなかったはずの名前の、今一番聞きたいメールのない理由が判明した。

まだ何か話している暁の電話を失礼なぐらいの勢いで切り、恵太は外へ飛び出していた。


またもや暁に助けてもらいました。困ったときの暁くん。

ナイス、暁。飄々としていて男前。

結構お気に入りな人物です。暁、気苦労が耐えないだろうなぁ・・・。

こんな風に、事も無げに苦労できちゃう、大きな人間に憧れます。


亜子、倒れました。どこまでダメダメなんだ(苦笑)。

亜子、これから頑張ります(はずです)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ