13・ゲームの行方 2
「先生、ゲーム覚えてる?」
「え?」
亜子は軽く首をかしげながら暁の顔を見た。
とても年上とは思えない、なんとも愛らしい仕草をする亜子。
本人は無意識だったが、クセみたいなもののようだった。
「俺の名前。今度会ったとき覚えてなかったらバツゲームってヤツ」
にやり、と笑う暁。
・・・しまった!!!!
全く思い出せない亜子は、
先ほどまでの、あの涙は一瞬で引っ込んだ。
隣のヒロに助けを求めるように顔を向けるが
「えぇ?!俺??!!んな、無茶振り!!」
ヒロは至極当然のリアクションで。
ど、どどどど、どうしよう!!!
わたし、先生ぶっておきながら
生徒の名前すら覚えていないなんて!!!
自分の頬を両手で押さえ、
文字通り右往左往する亜子。
慌てふためく亜子を見て。
暁と悠斗はしごく楽しそうに笑っていた。
「やっぱり覚えてないかぁ」
「恵太のことだけは覚えてるのにねぇ~」
悠斗まで一緒になって亜子をからかう。
その言葉の真意は、本人だけが気付いていなかったけれど。
暁と悠斗は顔を見合わせて、なにやら意味深に笑い合うと
亜子に言った。
「亜子ちゃん、俺らのこと、学校に言うなら言ってくれて構わないよ」
「え?」
先ほどとは、ちがう条件に亜子は視線を暁に戻す。
「事実だから、仕方ない。その代わり、恵太の無実だけは信じてあげて。
それから、今すぐ恵太追っかけて」
「わたし・・・」
戸惑う亜子。
どうしよう・・・。
恵太の名前が出た途端、うるさく騒ぎ出した心臓。
「仲直りしてやって。恵太も先生に冷たくして後悔してると思うから」
悠斗にも優しく促されると、ますます鼓動が早くなった。
「今なら追いつけると思うから。駅に向かってるはず」
「・・・亜子ちゃん、今行かないと、後悔すると思うよ?」
そうだ・・・。
傷つけたこと、ちゃんと謝ろう。
ちゃんと、顔を見て、ごめんねって言おう。
そう思った途端、荷物を取ると、
亜子は走り出した。