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11・苛立ち 2

4月になり、桜も散った春めいた気候とは言っても

夜風はまだまだ冷たかった。


一本大通りへ出ると金曜日の夜の飲食店街は、どこも賑わっていて。

明るく華やいだ空気にあふれていた。


恵太はタートルネックを少し伸ばし、

冷たい風から少しでも体を守ろうとした。

賑やかな空気から、少しでも自分を隠したかったからかもしれない。

今の自分には、とても不釣合いで、

とても不愉快に思えていたから。



店から出たあと。



自分の言動が、自分で信じられなかった。


何であんな気持ちになったんだろう。

あんなことしたんだろう。


適当に放って置けばよかったのに。


雛沢先生も雛沢先生だ。


親しげに男を呼び捨てにし、

お酒の入った、あんな無防備な顔で笑って見せて。

まるで自分たちなんて、目にないかのように子ども扱いして・・・。



そこまで考えて、恵太ははっとした。



何だ?今の。

何で雛沢先生が男と一緒でイライラしてんだ?


別に大の大人だ。

彼氏がいようと不思議ではないし、

その人を呼び捨てにしても問題はない。


お酒に酔うことだって、先生の勝手だ。



何で、俺が・・・。




「あー、もう!!」



一人イライラしている自分に嫌になる。

短く整っている髪をくしゃくしゃっとしながら

頭を掻いた。


歩くスピードを速めようとした時・・・。


「・・・さやま、くん、待ってっ」


後ろから、自分の名前を呼ばれたような気がした。

立ち止まって後ろを振り返ると―――――。


「!!??」

「っ、たぁ・・・・」


恵太にダイブしてきた、亜子が、

ぶつけた鼻を押さえながら、顔を上げた。


「先生?」

「ご、ごめんねっ、ひ、久しぶりに全力で走ったら・・・はぁ・・・。

はぁ・・・、あ、足・・・はぁはぁ・・・絡まっちゃって、こ、転ぶかと、おもっ・・・思った・・・」


息を切らせて、肩を上下させながら

恥ずかしそうに笑う亜子を見て、

恵太も思わず笑顔になる。


「ふっ・・・。足、速いんだ」

「ち、ちがっ・・・、いさ、はぁはぁ・・・諌山、くんが速いか、ら・・・。

ひっ、必死だったんだよ・・・」


顔を下に向け、上がった息沈めようとしている亜子を見ていたら、

さっきまでのイライラしていた気持ちが

嘘のように今は穏やかになっていた。

 

「どうしたの?そんなに急いで」

「・・・あ、あのね・・・」

「うん?」


ようやく息が整ったかのように見えた亜子の肩が、

先ほどとは違って、かすかに震えているようだった。


「・・・先生?」




「諌山君、ごめんね」




目にいっぱいの涙を溜めた亜子が、

顔を上げながら、そう言った。





久しぶりの更新となってしまいました。もし見てくださっている方がいましたら、ごめんなさい。

これからもチビチビ書いていきますのでよろしくお願いいたします。

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