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飜譯匣

虎

作者: ウィリアム・ブレイク(原著) 着地した鶏(翻訳)
掲載日:2022/06/25

乕(とら)よ、虎(とら)よ。

夜の木叢(こむら)に燃え明(あ)がる。

汝(なんじ)を造り賜(たま)いしは

不滅の腕(うで)か、不死の眼(め)か。

実(げ)に脅威(おそ)ろしき均整美(シンメトリ)。


汝(なれ)の瞳(ひとみ)の燈火(ともしび)が

燃えて照らすは地の底か

果てなく高い天空(おほそら)か。

望んで止まぬ翼さえ

燃やし尽くてしまうのか。

誰(たれ)ぞ、猟(か)り獲(と)るその焔(ほのほ)。


如何に膂力(ちから)があろうとも

如何に武技(えもの)を得ようとも

汝(なれ)の心(こころ)の鎹(かすがい)を

捻(ね)じ切る者ぞ、あるものか。

汝(なんじ)の脈は打ち始め

実(げ)におそろしき腕(あし)と肢(あし)。


如何なる鎚(つち)があったのか

如何なる鎖があったのか。

汝(なれ)の脳髄(こころ)が生まれしは

如何なる鉱炉(ころ)か、鉄床(かなとこ)か。

死なる恐怖(おそれ)が掴み取る

実(げ)におそろしき威圧感。


星夜(ほしよ)は槍を投げ落とし

涙で濡らす天(あま)つ国(くに)。

己(おの)が造りし物を見て

主(あるじ)は笑っておられるか?

汝(なんじ)を造り賜(たま)いしは

子羊(ひつじ)を創りし主(ぬし)なのか?


虎(とら)よ、乕(とら)よ。

闇夜の森に明(あか)く燃ゆ。

汝(なんじ)を造り遊びしは、

不滅の腕(うで)か、不死の眼(め)か。

実(げ)に畏怖(おそ)ろしき均整美(シンメトリ)。


原著:「Songs of Experience」(1794) 所収「The Tyger」

原著者:William Blake (1757-1827)

(William Blakeの著作権保護期間が満了していることをここに書き添えておきます。)

翻訳者:着地した鶏

底本:「Songs of Innocence and of Experience」(Project Gutenberg) 所収「The Tyger」

初訳公開:2022年6月25日


【訳註もといメモ】

1. 「乕(とら)」という文字は虎のシンメトリックな縞模様を彷彿とさせるので良きですね。


2. 詩は詩人が訳すべきである(戒め)。誤訳誤謬誤爆の塊かもしれない。


3. 「thy fearful symmetry」を「人知を超えたシンメトリー」と訳出した某SFアニメの脚本家(円城塔?)は怪物だと思った。

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― 新着の感想 ―
私が翻訳において「怪物」だと思ったのは、 2行目の、 「In the forests of the night;」に、「night」という言葉があるので、 「夜」にかかる「枕詞」である「ぬばたまの」を…
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