表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒミツ(修正版)  作者: 爪楊枝
1部 6章 揺り籠
90/240

epilogue


「なにが……。」


身体が重い。


……頭…いや、身体全体を強く打ったのか手も足も…首すら動かない。


「冷てえな。」


辛うじて目は見えるが、目に映るのは鉄骨だけ。


雨粒が顔全体にかかってひどく不快だ。



「おはよう。」



時間が止まったように、風も…雨の音すら聞こえなくなり鈴を転がしたような心地よい声が聞こえた。


「あぁ……やっぱり…お前が俺の死神か。」


先ほど見た女とは明らかに違う。


異様なほど美しく、そして黒い闇が俺の側に立っている。


「貴方が勝手に死ぬんだから、私は死神でもなんでもないわ。」

「……そうか…。」

「そうよ。」


あの頃と変わらない、クソ生意気で癪に触る喋り方だ。


「どうだ?…俺はまだお前にとって恩人か?」

「ええ、私の弟を無事に取り上げてくれた恩人よ。でも……」

「うぐっ……。」


腹部に鈍い痛み…どうやら足で踏まれているようだ。


「ハル君を殺そうとしたことは絶対赦さないわ。」


何度も何度も腹部に痛みが走る。


「ハ、ハハハ!ざまあみろ…お前を怒らせただけでもこれまで生きてきた甲斐がある。」

「……。」


どうせ、俺が何を言ったって過去に起きたことはもう立証できない。


真っ当な方法での復習なんてできっこない。


ならば腹いせに、この死神に対して唾を吐いたって良いはずだ。


「……なぁ…聞きそびれてたんだがお前…家内をどうするつもりなんだ…。」

「……。」

「お前が関わる限り…あいつに幸せなんてお「黙れ。」


死神の顔に感情は無いが、その声には明らかに怒りが垣間見える。


「お前が…お前らが私とハル君のことに口出しするな。」

「……何があったか知らない…が…まあ、せいぜい足掻いて…」


最初は末端、手や足だった。

次第に感覚がなくなってゆく。


「もっと…ガキらしく…しろ…。」


息をすることすら億劫で、瞼が重たい。



「誰に何を言われなくたって……私が………幸せに……



最後に聞こえたのはそんな…愛憎に塗れた声だった。





次回本編更新は26日からです。


次回から2部1章「魔女」です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ