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ヒミツ(修正版)  作者: 爪楊枝
1部 6章 揺り籠
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白薔薇③


玉波たまなみ先輩、お待たせしました!」

「良いのよ、私が急に来てしまったんだし。」


玄関先で待っていた先輩が、こちらに振り返って笑顔を見せる。


「それより、さっきのお姉さんのことなんだけど…」

「あ、姉がどうかしました?」

「前に会った妹…さんは…」

「あー…実は…」


俺はまことのことを玉波先輩について説明する。

といっても俺自体まことのことを全て知っているわけじゃないから所々かいつまんで、最近知り合った後輩で俺を度々からかっているとだけ説明した。


「ふーん。」


先輩は怪訝そうな顔でこちらを見ているがそれ以上この話を広げる気はないようだ。


「ところで、玉波先輩どうやってうちまで…俺、住所とか教えましたっけ?」

「そっ…それは…。」


おや?

なぜか先輩が目を逸らした。


「…学校に電話して先生に教えてもらったの。」


なるほど、つまり特権を行使したわけか。


(それにしても住所まで教えるってすげえな。)


数人の生徒に絶対的な特権が認められている話、すっかり忘れていたが玉波先輩はそのうちの1人だった。


「そ、そうなんですね…。えっと、じゃあずっとここで喋ってるのもなんですし…どっかいきますか?」


話題転換としてはやや苦し紛れだったが、俺の提案に玉波先輩は表情を明るくしてくれる。


「そ、そうね!じゃあ…はい!」


先輩は笑顔でこちらに左手を差し出して動きを止めている。


「……?えっと…この手は?」

「決まってるでしょ?手を繋ぐのよ。」


決まっているなら仕方が…ないか?


「……。」


俺は玉波先輩の手を握ろうとして、何を思ったのかふと自宅の2階の窓。


俺の部屋の窓を見た。


(ひっ!?)


思緒姉ちゃんがジッとこちらを見下ろしている。


「どうしたの?」

「な、なんでもないです!さぁ、行きましょう!」

「きゃっ!?」


首を傾げる先輩の手をとって、俺は逃げるよう自宅前を後にした。


俺は先輩の手を引いて歩き続けていたが、家から離れて十分ほど経ったあたりで玉波先輩がストップをかけた。


「ちょ、ちょっと家内!止まって!」

「あ、すみません…。」

「もう…それより、今日は行きたい場所があるの。」

「行きたい場所?」

「そ。だから私について来て。」

「…分かりました。」


玉波先輩は肩に下げていた少し大きめのトートバッグから麦わら帽子を取り出すと、それを目深に被ってまた俺の手を握る。


「さぁ、行くわよ。」


先輩に手を引かれ電車に乗り、川を渡って隣町の商業施設が立ち並ぶ地域にやってきた。


それにしても…いや、薄々気づいてはいたけれど…。


駅に着くなりあらかじめ買った切符が2人分出てきた時点で、先輩は少なくとも2日前には今日出かける準備をしていたことになる。


…もしくは切符を買った当日だろうか。


「ちょ、ちょっと待ってね!ええっと…北口…北口…。」

「……。」


(偶にはこんな日もアリだな。)


スマホを片手に地図アプリと格闘する先輩を眺めながら、俺は今日の行動は全て先輩に任せてしまおうと考えて、朝まで常に頭の隅にあったあれやこれやに対するモヤモヤを追っ払った。



白薔薇④を20時ごろに投稿します。

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