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ヒミツ(修正版)  作者: 爪楊枝
1部 5章 螺旋
62/240

prologue


「…………。」


私達の住む町から川を隔てて隣り合う隣町。

そこにある市立病院の個室に私の姉は入院している。


…姉といっても…便宜上…血縁関係もなければ多分、仲良くもない。


3年前のあの日、私の両親は姉の父親に殺された。

私は怖くてすぐにクローゼットに隠れたからそれからのことは詳しく知らないけど、全てが終わって…凄惨な現場には姉だけが立っていたらしい。


しばらくは警察や児童施設のお世話になって、最終的には私の父の兄夫婦に引き取られることになった。


なぜか、姉も一緒に。


もう一度言うけど…血縁関係なんてない。


でもなぜか私たちは姉妹として私の父の弟夫婦の養子になった。


私と姉は小さな頃から一緒だった。

家族ぐるみの付き合いというやつだ。


私の両親と姉の両親は仲が良く、物心ついた頃には姉と一緒に遊んで…姉と同じ服を着て…。


どこに行くのも一緒で。


きっと…ずっとずっと一緒にいて、喧嘩したり仲直りしながら大きくなっていくんだと子供ながらに思っていた。


でも…今はそんな姉が堪らなく憎い。


いつ頃からか、両親の喧嘩が絶えなくなった頃。

夜中にひとりで父はこんなことを言っていた。


『あの子が生まれなければこんなことにはならなかった…。』


あの頃はまだその言葉の意味を知ることができなかったけど、今は違う。

少しネットで調べれば過去のことを……殺人事件のことなんてすぐに調べることができる。


姉は父と姉の母の間に生まれた子だ。


姉がいたから私の両親は死んで……姉の両親も死んだんだ。


姉が…………


野宮ののみや莉音りおんが私の両親を…………殺した。


「……ん……。」


衣擦れの音と共に、姉がベッドから起き上がる。

その首元には包帯が巻かれている。


「……寝てなよ。着替え持ってきただけだから。」

「……ぁあ……が…。」


私を見て何か訴えかけようとしているみたいだけど私には分からない。


姉は声を失った。


医者は心因性の失声症でじきに治ると言っていたけど私からしてみればこのままの方がいい。

毎日姉の…父と母の敵声を聞くのは正直嫌だった。


「……けぃ……い。」

「……。」


姉が右の手のひらを、左の人差し指でなぞるようなジェスチャーをしている。

多分……スマホが欲しいという訴えだ。


「ごめん忘れた、次来る時に持ってくるよ。」


私の返答に、姉は心底残念そうな顔をする。

その顔を見て、私はさらに苛つきが大きくなる。


姉は家内いえうち君に連絡することができないことを残念がっているんだ。

この一週間、姉はこの病室からほとんど出ていない。


犯人が捕まっていないこともあって家族以外でここに立ち入れるのは医者か警察くらいだ。


……私はクズだ。


正直に言えば、父と母のことなんてもう…どうだっていいとすら思っている。


……どれだけ二人のことを考えてももう…戻ってくることはないんだから。


…でも、彼は違う。




私は姉が大嫌いだ。




そしてこの感情は、単なる嫉妬心に他ならない。



22時頃にもう1話投稿します。

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