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ヒミツ(修正版)  作者: 爪楊枝
1部 4章 鏡
60/240

扉⑦


「早かったね。」

「……。」


時刻は16時30分頃。


先輩と別れた後、わざわざ家に帰るのも面倒だった俺は適当に時間を潰してからまことに指定された公園へとやってきた。


ドーム型の遊具にはドラマなんかでよく見る黄色いテープが巻かれている。


そして、ここに俺を呼び出した張本人はその上に登って本を読んでいたらしい。


「お前…keep outって文字が読めないのか?」

「別に人が死んだわけでもないんだし、この遊具自体に危険はないんだから気にしないでもいいでしょ?」

「……。」


そういうことではないのだが、これ以上この話を続けても仕方がないので黙っておく。


「よいしょっと!」


まことは手に持っていた本を鞄に入れて、遊具から飛び降りた。

ヒラヒラと舞うスカートの裾に視線が向かおうとするのを理性で抑える。


「……見たいなら見せてあげるよ?」

「な、なに言ったんだ!?」

「まあいいや、それじゃあ行こうか。」


あっけらかんとしたまことは、そのままスタスタと歩き始める。


「なあ、どこ行くんだ?」

「気になる?」

「そりゃあ気になるだろ。」

「じゃあ着いてからのお楽しみだね。」

「……。」


こいつ…。


「それにしても君は命知らずだね。」

「…?なにが。」

「一度家に帰ってから来ればよかったのに、きっとお姉さんが心配してるよ。」

「確かに…でももう高2だしちょっと帰りが遅くなることくらい普通にあるだろ。」

「…そうだね、もう高校生だ。あと少しで立派な大人…。」


まことの表情は見えないが、その声は先程までと違い真剣さを感じた。


それからしばらくまことの後について歩いていると、あるアパートの前で彼女が足を止めた。


「ここだよ。」

「……ここって………お前の部屋があるアパートだよな?」


目の前にある2階建てのアパートは確かについ先日見た覚えのある形だった。


「覚えててくれて嬉しいよ。夏休みの間いつでも遊びにきてね、歓迎するよ。」

「…考えとくよ。」


前は確か部屋の中を見たら監禁するとか言ってなかっただろうか…。


「それで、目的地は結局お前の部屋なのか?」

「ううん、その隣の部屋だよ。」


階段を登って、まことの部屋を通り過ぎて通路を進む。


「ここだよ。」


そう言いながら、まことはポケットから取り出した鍵を使って、ドアのロックを解除した。


「え?ちょっと待て。ここもお前の部屋なのか?」

「…?違うけど。」

「じ、じゃあその鍵は!?」

「合鍵だよ、この時のために作っておいたんだ。」

「作っておいたんだって…そ、それじゃあここは誰の部屋なんだよ…。」


夕陽に照らされた廊下、まことの顔上半分を屋根の影が隠している。


彼女の言動。


その全てが俺の脳みそに警告を鳴らす。


「入ればわかるよ。……大丈夫、部屋の住人はしばらく帰ってこない。」

「で、でも不法侵入とかになるんじゃ…。」

「バレなきゃ大丈夫だよ。私も君も…黙っていれば問題ない。」

「……ここには一体、何があるんだ。」


俺の声が震えている。

無理もない、誰だって悪さをする前はこうなるものだ。


頭に響くうるさい鼓動も、自分の意思とは無関係に早まる呼吸も…全ては恐怖心からだ。


まことが部屋のドアをゆっくり開く。

ギィと音をたてながら、先日見たまことの部屋の玄関と同じような光景が現れる。


ローファーが2足…下駄箱にかけられた傘も二つあるところを見ると一人暮らしではなさそうだ。


玄関の奥は…薄暗くてよく見えない。


「ハル君。」


部屋の中に意識が集中していた俺を、まことの声が呼び戻した。


「ここには真実しんじつがあるんだよ。」

「真実?」

「そう、その真実は野宮ののみやさんや立花たちばなちゃんを巡る一連の事件…いや、君が思い出すべき記憶にすら関係するものだ。」

「……!」

()()が動き出した以上、藤本ふじもとも私もそう好き勝手できない。だから…」



「君が自分で真実にたどり着くんだ。」




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