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ヒミツ(修正版)  作者: 爪楊枝
1部 1章 私とアナタ
5/240

prologue



「ハル君、やっぱり外は危険よ。お姉ちゃんと一緒に家にいましょう。」

「不審者捕まったって言ったろ?大丈夫だよ。」


金曜日の事件後すぐ、不審者逮捕の連絡が学校から各生徒に通達され、月曜日は午前中のみの短縮授業となりそれ以降は通常通りに戻るとのことだった。


傷害事件ということもあり全国ニュースでも取り上げられていたが、結局犯人の情報、認否、目的などはほとんど分かっていない。


唯一判明したことといえば女の名前が岩木いわき智子ともこということくらいだ。


「ちょっと邪魔邪魔、どいてよ二人とも」


思緒しお姉ちゃんと玄関で押し問答していると、真実まなみが間をかき分けて靴を履く。


「あれ、真実まだいたのか?部活は?」

「今日は朝無し、全校集会あるしお兄ちゃんも急いだ方がいいよ」

「あぁ、まあそりゃそうか」


てきぱきと準備を終えて真実は玄関を開ける。


「思緒姉行ってきます」

「行ってらっしゃい」


「俺には?」


返事はなく、ガチャンと玄関は閉じられた。


「あいつ…」


家の中での会話はちらほらとあるが、やはり面と向かって挨拶とかはしてくれない。

大事な一人娘が反抗期を迎え、一緒にパンツを洗わないでとか言われる父親の気持ちが今は少しわかる気がした。


「お兄ちゃん!」


数分とたたず、再び開かれた玄関から真実が顔を覗かせる。


「お、やっぱり行ってきますって言ってくれるのか?」

「そんなんじゃない、外で待ってるよ」


そう言って真実はまた玄関を閉めた。


「外で待ってる?」

「真実も仲直りしたいのかしら」

「さぁ…まあとにかく行ってくるよ」

「気をつけてね、寄り道せず帰ってきてね、悪い人について行ってはダメよ」

「…分かってるよ」


このままでは埒があかないので心配が止まらない思緒姉ちゃんを放って俺も家を出た。




「え?」


そういえば、真実は誰が外で待ってるかなんて言っていなかった。

真実が待っているとばかり思っていた俺は、玄関先に立っている女子生徒を見て思わず声を上げた。


「お、おはようございます…」


野宮ののみや莉音りおん、金曜日の事件の被害者であり同学年の男子なら知らない奴はいない。


「……おはよう」


腰あたりまで伸びた艶のある黒髪はハーフアップというのだろうか、後頭部で編み込まれており。髪の隙間から覗く耳は真っ赤に染まって視線はキョロキョロと動いている。


「一緒に学校に行きましょう」


アニメとかなら、きっと汗が可愛らしいSEと共に飛んでいることだろう。



その誘いは俺の学校生活を一変させるに足るものだった。




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