剥離④
放課後、俺は玉波先輩に呼ばれて部室に来ていた。
ちなみに野宮さんは課題の提出とノートの書き写しが大変だとかで今も自分の教室だ。
「さて家内説明してもらいましょうか。」
「えっと…何を?」
ソファーに座った俺を、仁王立ちで玉波先輩が見下ろす。
今日ここに呼ばれて聞かれることなんて一つしかなかった。
「決まってるわ!あの二人についてよ!せ、先週までいなかったじゃない!」
「いや、二人とも体調崩してて休んでて…。」
「どうしてそれを先に言わないの!?一緒に昼食をとってる子がいるなら先に言ってよ!」
「え?いやいや!いつもはあの二人と一緒に弁当とか食ってないですよ!?」
「なっ…そ、それじゃああの子達は今日たまたま一緒に?」
「たまたま…かどうかはちょっと分からないですけど…多分。」
少なくとも、俺は教室で立花さん達と昼食を共にする勇気はない…なかった。
野宮さんも昼休みに来ることはなかったから、今日は本当に特殊な日だったのだ。
「……分かった、納得してあげるわ。」
玉波先輩はそう言うが、まだまだ怒りがおさまらない様子だ。
「それじゃあ、幼馴染ってなによ!あんな可愛い子が幼馴染だなんて聞いてないわ!」
「そりゃ言ってないですし!というかそもそも幼馴染かどうかもよく分からないんですよ!」
「…な、なによそれ。」
「………実は…。」
一瞬、話してしまうか迷ったが俺はことの経緯を正直に先輩に話した。
二人とは小学校の頃出会っていたこと、そこでなにやら約束をしてしまったらしいが俺は覚えていなかったこと。そして、彼女達には確執があること。
「…ていうことでして…。」
「…随分都合のいい話ね。」
俺だってそんなことは分かっている。
「すみません…。」
「何を謝ってるの?私が言ってるのは家内のことじゃないわ。」
「え?」
「随分と、その二人にとって都合のいい話じゃない?」
玉波先輩は俺の肩に両手を置き続ける。
「家内、貴方騙されてない?」
「い、いやでも…」
「記憶が曖昧なんでしょ?それじゃあ彼女達の言うことなんか信用できないじゃない。」
「……それは…。」
確かに、先輩の言うことももっともだ。
そもそも俺がみた夢と彼女達の話が偶然一致しただけ、ただそれだけなのに俺は野宮さんと立花さん、どちらとも小学生の頃に出会っていたはずだと思い込んでいた。
少し話すようになって知った気になっていたが、俺は彼女達と初めて会ってから一歩も進んではいない。
知らないままだ。
そもそも、なぜ俺はあの頃のことを思い出せないのか……。
…………トラウマとはなんだ?
頭が割れるように痛い。
「家内。」
玉波先輩の声が頭に響く。
「私は貴方を見つけたわ。」
22時ごろにもう1話投稿します。




