剥離②
昼休みの中庭、生徒達の憩いの場であるはずのこの場所はここ数日俺と玉波先輩の貸切状態だった。
今日はそこに立花(立花)さんと伊東さん、さらにいつも2人と昼食を食べている女子2人を加えた6人となっている。
人数も人数なので、ベンチは使わず芝生の上に座っているがなんだかそれぞれの距離が微妙に離れていて仲良く食事。という雰囲気ではない。
「な、なぁ立花ちゃん。落ち着かないし…やっぱり教室に戻らない?」
中庭に着いて早々、伊東さんが立花さんに言った。
落ち着かないのも無理はない。
コの字型の校舎、その窓という窓から玉波先輩を見ようとする生徒達の視線が降り注いでいるのだから。
伊東さんの後ろで女子ふたりも首を縦に振っている。
「か……帰らないわ。それに伊東ちゃんも聖女様と話してみたいって言ってたでしょ?良い機会じゃない…。」
「そ、それはそうだけど…。」
(…玉波先輩と伊東さんが知り合いってわけじゃないのか…。)
「私は別に帰ってもらって構わないわよ。こんな公衆の面前だもの、無理して食べてる姿を見せられたらせっかくのお弁当が不味くなるわ。」
「…!じゃ、じゃあ俺も…。」
「家内君はダメよ。」
「えぇ…。」
どうやら玉波先輩は教室でああ言っていたものの、やはり立花さん達と一緒は嫌なようだ。
「それより家内君、今日も腕によりをかけて作ってきたの。早く食べましょ。」
玉波先輩は周りを気にせずお弁当を広げていく。
「ま、待った!」
「今度はなに?」
「も、もしかしてそのお弁当…2人で一緒に食べるの?」
立花さんの質問に、玉波先輩の口角が一瞬上がった。
「そうよ、これは私が家内君のために作ってあげたお弁当だもの。」
「……家内君、まじ?」
「…まじ。」
(こうなりゃヤケだ!流れに身を任せるしかない!)
「ちょ、ちょっとこち来て!」
「な、なんだよ!?」
立花さんに袖を引っ張られて先輩達から少し離れる。
『きゅ、急にどうしたんだ?』
『家内君、私のお弁当あげるから今日はあの先輩のお弁当は食べない方がいいわ。』
『はぁ?なんでだよ…。』
『良いから、これは助言よ!』
助言…ということは立花さんは俺のためにそう言ってくれているのか。
それならば、俺が玉波先輩の手作り弁当を食べることになにかデメリットがあるはずだが…そんなことあるか?
弁当食べるだけだぞ…。
何より玉波先輩がどんな反応をするか…。
「家内君。」
「ひっ…」
突如後ろから声をかけられた。
横で立花さんが小さく悲鳴をあげるのと同時に俺の腕を掴んだ。
「…の、野宮さん。」
「すみません、お邪魔でしたか?」
その視線は、立花さんに向いているように見える。
「い、いや…それにしてもなんでここに。」
「教室で皆さん騒いでいたので…私も見ていたんです。そしたら家内君達がお弁当を持って楽しそうにしていらっしゃったので。」
野宮さんはお弁当が入っていると思われる袋を胸元に持っていき、可愛らしく笑う。
「私も…お昼一緒に食べても良いですか?」




