サキュバスがやたらと筋肉で誘惑してくる
「ぬん!ふん!」
「…」
俺の目の前でやたらと筋肉質な女がポーズを披露している
「サイドチェストォ!」
「…仕上がってるよぉ」
適当に相槌を打てば満足して帰るだろうか
「…反応が薄いわね」
「反応に困りますからね」
少し食い気味に答えてしまった
というかいい加減目の前の女が何者なのか気になる
「なにか用でしょうか。ここコンビニの駐車場なので迷惑になると思うんですが」
「え?見てわからないの?」
「分かりませんよ」
そう。ここはコンビニの前で僕は深夜に食料を買いに来たところなのだ。とはいえここまで酔った女はみたことがない
「なら答えてあげるわ!誘惑しているのよ!さぁ!ひれ伏しなさい!」
厄介な酒飲みに絡まれたらしい。さっさと無視して帰ってしまおう
「なに帰ろうとしてるのよ!私はサキュバスよ!見て興奮しないわけ?」
「サキュバスなんているはずないでしょう。」
「今あなたの目の前にいるじゃない」
警察を呼んだ方が良さそうだ
「自分の名前はわかりますか」
「名前なんて無いわ」
「…住所は」
「魔界よ」
なにを言っているのかさっぱり分からない
「本当に興奮しないの?人間の男は強い女性が好きだって聞いたから徹底的に鍛え上げて来たのに。ほら見なさいよこの肉体美!」
「恐らくあなたが聞いた強い女性と言うのは内面的な話で肉体的なことではないと思いますよ。というか強い女性が好みの人もあまり聞きませんし」
「そんな…」
女が膝から崩れ落ちた
「あの血の滲むような努力は全部無駄だったって言うの…?」
「そうとは思いませんが…」
本気でショックだった様子の女を咄嗟にフォローする
「もう一度内面を鍛え直して来るわ…」
「は、はぁ」
そして女はとぼとぼと帰って行った。その背中から漂う哀愁にどこか色気を感じてしまった僕はおかしいのだろうか。マッチョが性癖ということはないのだが
「サキュバス…ね」
あの女が言ったことは本当だったのかもしれない
とはいえ…
「帰ろう」
そんなのいるはずもない。きっと僕も深夜テンションでおかしくなっていたのだろう。そう思い込んでその日は家に帰ったのだった
尚作者も深夜テンションで作った模様