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困惑星人  作者: 満月 烏
日常
7/7

日常 part5

なぜか鍵が閉まっていない扉を開け、屋上に行ってみるとそこには手紙で呼び出した前崎園江本人と、初めて顔を見る背の高い男の二人が居た。180cmはあるだろうか。この男は猫背であるので、少し身長を推測するのが難しいが、背骨を全部引っ張り上げたら190cm近くになるかもしれない。

前崎園江はそんな男を一切見ずに私の方を向き話しかけてきた。


「早紀さん。姉の方の近藤早紀さんで間違い無いでしょうか?」


初めてこいつの声を聞いた気がする。


「そうだけど、手紙どうしたの?なんか周りに聞かれちゃいけない話でもあるの?校舎の案内でもして欲しいの?」

「いえ、そのようなことは必要ありません。事前に大体は地図で覚えていますので。それで急で悪いのですが、少し頼みたい事があるのです。」


こんなに喋るやつだったとは驚きだ。機械音声みたいな声色を変えればもう立派な女子高生だ。しかし、地図で覚えてきたとは一体どういう事なのだろう。


「何?私でいいなら協力してあげるよ。」

「それは依頼を受けてくださる、という事で間違い無いですか?」


面倒くさいやつだ。


「うん、そうだよ。何をすればいいの?」

「実は、」


と、そこまで前崎園江が言いかけるともう一人の男がおどおどした口調で割り込んできた。


「そ、園江、やっぱりやめようよ。こんなの悪いよ。じ、自分たちで解決できる問題だと僕は思うんだ。」


そんなことを背の高い男が言うと、感情を声色に顕にして男の方を向き、前崎園江が答えた。表情はちっとも変わっていなかった。

「私たちの中でそんなこと思っているのはあなただけよ、和弘(かずひろ)。昨日からあなたには何度もこのことに対しての重要性を伝えてきたつもりだけれど、もうあなたに理解してもらうのは諦めたわ。いい?私たちはあの方の命によってここに訪れたのよ。その意味が分かってるんでしょうね。分かってないとは言わせないわよ。」


この女は身内に対してはこんな喋り方をするのか。というか、話している内容が全く分からない。何を話しているんだ、こいつらは。

和弘と呼ぶらしい男は観念した表情で


「わ、分かったよ。分かったから、そんなに怒らないでよ。君に従うから何もしないでよ。」

「別に私に従えなんて言った覚えはないけれど。まあでも、それで言うことを聞いてくれるならそれでいいわ。あなた腕だけはいいんだから、お願いよ。」


どうやら彼らの会話は終わったらしく、前崎園江は私の方を向き直して声色を元の機械音声みたいな感情のないロボットみたいな音声に戻して話した。


「申し訳ございません。時間を無駄に浪費させただけの私たちの会話をお見逃しください。」

「う、うん。別にそれはいいんだけど、何の話をしてたの?多分私じゃ園江ちゃん達の役に立てないと思うから、今日はこの辺でお暇す」


ここまで言いかけて、面倒くさい奴らからさっさと離れようと思った時、前崎園江は話を閉ざし、私に話しかけてきた。


「お待ちください。どうしても私たちはあなたの助力が必要なのです。お願いというのも簡単なことなのです。ただ私たちのもとへ来るだけでいいのです。それだけで早紀さんは価値がありますから。どうか。」

「あのさ。来るだけって言ったってさっきから話聞いてたけど貴方達、実は変な人なんでしょ。私ね、友達はいないけどそういう人達とつるんで悪目立ちするのは嫌なの。分かったらさっさとどっか行って。」


私の本心であった。あまりこういう言い方はしたくないのだが。なんかこいつらしつこそうだし、いた仕方ないだろう。胡乱な人物とつるんであたかも奇異なものを見る目を他人にされるのは性に合わんのだ。多分日本人のサガってやつだ。


前崎園江は食い下がると思っていたが、案外結果というのは聞かないと分からないもので


「...了解しました。」


との存外好返答が返ってきた。これを利用しない手はない。


「そっかそっか、物分かりが良くて助かるよ。じゃあ私はこれでお暇す」


と、ここまで言いかけた時、またもや前崎園江はまたもや私の台詞を妨げた。もはや故意的に妨げているのではないかとすら感じられる。


「了解しましたのは、早紀さんが私たちについてくる意思を示さなかったことです。少々手荒な真似にはなりますが、ご容赦を。」


前崎園江はそんなことを言い放った。手荒な真似って何のことだ。大体手荒な真似と言ってもお前は何の動きもしないじゃないか。そこの妙に背が高い和弘とかいう男も何かするようには見えない、と思ったその刹那だった。


何かのタネがあるかは知らないが、目叩きをした瞬間で背の高い男がその場から姿を消した。多分高速で移動したのではないかと思う。そうでなければ、今頃日本で屈指のマジシャンになって生計を立てているに違いない。


そしてその男の居場所を私に分からせたのは、鈍痛が後頭部に響いた後のことであった。私は数秒間その痛みに耐えた後、耐えていたのかももはや覚えていないが、気を失った。


不定期更新です。初投稿です。

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