日常 part2
そんなことを誓っていると始業のベルが鳴る。芹夏と私は席に戻り、駄弁りながら担任を待っていると、鐘が鳴った5分後ぐらいだろうか、担任が少し慌てたような、それに困惑しているような表情を混同させながら入室し、朝礼を始めようとしていた。
日直が号令を言った後に、担任は
「おはようございます。えっと、今朝急なことで先生もびっくりしたんだけど、えっと、転校生が私のクラスにも来ます。」
クラスがざわめく。それに「にも」って言ったか?他のクラスにも転校生が来てるっていうことか。そりゃ職員室も朝からせわしなくもなるもんだ。
「皆さん、静かにしてくださいね。えっと、先生も今日出勤して初めて聞いたからとってもびっくりしたんだけど、えっと、仲良くしてあげてくださいね。先生も今朝会ったんだけど、雰囲気の良い女の子でした。きっと馴染めるんじゃないかな。」
性別が判明し、再びクラスがざわめく。デシベルが大きかったのはクラスの男子諸君だった気がするがな。
担任が次の言葉を紡ぐ
「えっと、実はもう、ドアの向こうに転校生の方がいらっしゃいます。今、呼びますね。」
と、ドアを開けて廊下で転校生と何かを話し始めていた。廊下にいるので、話の会話内容も聞こえなかったのだが、どんな面構えをしている転校生なのかもわからなかった。少し話し込んでいたようであったので、私の右斜め前に座っている芹夏がこちらを私を見て、「ちょっと珍しいね」とわざわざ振り向いて一言だけ言ってきた。
それはまあ、転校生は珍しいであろうなあ。今、私たち高校2年生だし。しかも今は十一月初頭だし。極め付けはこの学校に複数人転校生が来ているということが担任の言葉から分かった。珍しくないわけがないのだ。その証拠に今クラスは突然の転校生の登場でかなり騒がしい。大方、男たちの会話は可愛いとか可愛くないとかそんな感じであるかもしれないが。
担任と転校生の話が終わったのか、転校生が担任と一緒にクラスに入ってきた。
転校生の風貌を一言で表すのなら、美しかった。これほどショートカットが似合う女もそうそういないであろう。顔を見てみると、目は鋭く、何かをこう達観していそうで心ここにあらずというような雰囲気であった。タッパは結構あり、背が高い男子と同じぐらいある。これは男子からは高嶺の花とか言われるやつだなあきっと。
担任は若いので転校生の対応は初めてで少し緊張しているのか、少しおどおどしながら
「えっと、じゃあ自己紹介をお願いします。名前と出身地と一言なんか言ってくれたら大丈夫よ」
というと、転校生は黒板に小さく名前を書いた後、多分小さすぎて後ろの席の人は見えていないが、
「前崎です。前崎園江です。出身は中部地方です。よろしくお願いします。」
園江?・・・その名前どこかで聞いたことあるな。そんなにいる名前ではないから忘れないとは思うのだが・・・ はて、いくら思い出そうとしても思い出せない。よく若者が喉に手を当てて、「ここまで出かかってるんだよ」とか言うが、それすらもない。ただ聞いたことがあるだけである。それ以上の情報が何もない。どこであった園江なのか、それとも有名人の園江なのか、一切合切見当がつかない。まあ、ここまで考えてもおも出せないのなら、小学生で一年だけ同じクラスだったとかそんなんであろう。少し、深く考えすぎたな。
「えっと、急なことだったので、席を用意できてません。一限目までには用意できると思います。すぐ朝礼を終わらせますので、終わったら前崎さんは私についてきてください。すぐ済みますから。」
と担任が言うと、前崎園江は何も言わずただ頷いた。
朝礼が終わると芹夏が右斜め前の席から私の席の前まで、歩いてきて
「すんごく格好いい人だったね。格好いいと言うか美しいっていうのかな。中部地方から来たって言ってたよね。何県なんだろうね。きっと表参道とか歩いてたら、読者モデルにならないか、っていろんな誘いが来ると思うなあ。」
読者モデルになれるかどうかは知らんが芹夏がそう言うのも納得ができる。少し彼女は女としての魅力がありすぎるのかもしれない。妖艶というベクトルでの魅力ではなく、お淑やかで清楚な方であるというベクトルだ。屋敷を所有してるお偉いさんが前崎園江を見たらメイドにしてもおかしくない容貌をしていた。
クラスに新しい人物が参入するということで、芹夏は新しいおもちゃを欲しがるような子供の目をして
「友達になれるといいね!早紀ちゃんも協力してよね?」
・・・そんな顔をして頼まれたら否定語を使いたくなくなるもんだよ人間っていう生物は。
不定期更新です。初投稿です。