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困惑星人  作者: 満月 烏
発見
2/7

発見 part2

 ん?講堂の裏の森林の方向に見えるあの光は何だ?物凄く眩しかったわけではないが木々の間から光が漏れているのが見えた。黄色が眩く光っている、みたいな感じの色だった気がする。しかし、色、と言う尺度でこの光を表すのは不適切である。「神々しい」と言う言葉で表すのが一番適切で、客観的にもあっていると思う。


 私はその光に誘われるように歩いて行った。まるで、そこに誰かいて「来なさい」と囁いているかのように。そこに歩くということは私の意思は関係なかった。その光を見たら、それはもうそこに行くのは必然であり、逆らうことは何か重罪になるとさえ思えた。


 そんな一心不乱にとぼとぼ歩いている友紀が私の異変に気付き

「どこに行くの姉っちゃ。何か面白いものでも見つけたの?・・・姉っちゃ?聞こえてる?」

 と私を呼びかける。

 勿論聞こえてる。しかし、なぜか私はそんな姉妹の会話よりもこの光の光源に行くことが大事だと感じた。だから、友紀の方はちらりとも見ずに光源に向かって直線に、まるで目的地が予め分かっているかのような動きをしながら歩いていた。


「姉っちゃ。そっちに何かあったの?なんか教えてよ?ねえってば!」

 そっちに何かあったの?じゃないよ。そこから不自然に光が漏れ出しているじゃないか。それを見る為に今向かってるんだよ。分かるでしょ?

 と言うことは口には出さずにひたすら一心不乱に歩く。まるで妹がいないもののように。妹はいないものとして扱われているのに必死に私に付いてきていろんな言葉を私にかけてきた。しかし、光源へ向かう最中に一度も友紀を見ることはなかったし返事をすることもなかった。私は光源の元を探す為どんどん森の中に入っていく。何分経ったかは覚えていないがそんなに遠い距離ではなかった。光源に近づくにつれ、当たり前だがどんどん眩しくなってくる。しかし私は一切目を閉じずに光源へ向かっていく。そして光源の最終部分に近づいたことが自分でも分かった。そして完全に光源の中へ入った時、


 見えた!


 これが光の正体か!と5秒間ぐらい、いやもっと少なかったのかもしれない、私は至福の悦に浸っていた。まるで本物の神でも見ていたかのような気分であった。その正体を見た後には、私は他人とは違う、みたいな感情に陥っていたと思う。しかし、


「あれ?私今何してたんだっけ?なんか光を見たことは覚えているんだけど。・・・あれ友紀どうしたの?こんなところで何してるの?」


 友紀が両眼を大きく見開き


「どうしたのじゃないよ!いきなり無言になってとぼとぼ歩き始めるんだから、なんかに取り憑かれたのかと思ったよ。私が話しかけても一切無視。ちょっと姉っちゃひどくない?で、そっちになんかあったの?」


 と言った。私は目をしかめて


「ちょっと失礼じゃない?確かにボーッとしてどっかに歩いていたとは思うけど、流石に友紀が話しかけたら気付くでしょ。友紀にしては冗談を言うなんて珍しいじゃない。友紀の伝記を書く時にはこのことを書くようにメモしておくわ。」


「え?」

「え?」

 私たち姉妹は素っ頓狂な声をあげる。お互い言っていることが全く違ったからだ。私は確かに光が見えたと思って、ボーッとしながら森の方へ歩いていたのは事実だけれど、友紀が話しかけてきたなんてそれはあまりにも分かりやすい嘘である。まさか、友紀もこういうことを言う成長の仕方をしたのだと思って一瞬納得していたが、


「ちょっと姉っちゃ。おかしいよ。あ、そうか。きっと長旅で疲れたんだね。姉っちゃはこう言うこと言わない人だからちょっとおかしいと思ったけど、きっと疲れちゃったんだよ。早くお昼ご飯食べて帰ろうね。」


 と、いけしゃあしゃあと言ってきた。


 こんな言い方だとまるで私がおかしい人みたいではないか。それより驚いたことはこの友紀の迫真の顔と発言の内容を鑑みるに、嘘はついていないと私が確信したことであった。まあ、長い付き合いだから嘘も本当も大体分かってしまうのだ。


 かと言って私も嘘をついてるわけではない。友紀が話しかけてきたら私も気付くし、流石に無視なんてことはしないさ。友紀は私が疲れていると思ってこの胡乱な会話内容の解答を結論付けてしまったみたいだが私は納得していない。何かおかしいなと思っていると母親が、森の外から大きな声で


「早紀〜、友紀〜、行く場所決めたわ。ここから車で20分ぐらいにいい感じに食べられる場所があるみたい。多分、広い公園かな。そこならきっとベンチもあるし、なくてもレジャーシート引いて食べれるわよ。一応近くに有名なチェーン店があるみたいだけど、折角お父さんがお弁当を作ってくれたのだもの。食べなきゃお父さんに悪いわよね。それじゃあ、森でお遊びはやめてさっさと車に戻るのよ。」


 と言ってきた。


 友紀は元気よく返事をして母親の元に向かったが、私はきっと怪訝な表情を浮かべながらゆっくりと歩いて親の元に戻って行ったであろう。


 その後、その日は近くの母親の言っていた場所のかなり広い公園で昼食を食べ終わった後、家路に着き無事帰宅。流石に家族全員長旅で疲れたようで夕飯を済ませたら全員22時には各自の部屋の消灯を消していた。

不定期更新です。初投稿です。

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