応接室にて
千春達が訪ねてくる少し前。鬼比良は応接室にて来客の対応をしていた。
「一体、何の御用ですか? 朽網会長」
朽網は質問に答える前に目の前に出されたお茶を啜った。
「うむ、いいお茶だな。さて、要件だったな。単刀直入に言うが、四季と四郎園は訪ねてきてはおらんか?」
大方予想していた通りの返答だったが思わず間の抜けた声が出る。
「はい? 四季と四郎園ですか? 訪ねてきていませんが」
隠すつもりなど無く本当にいないものはいないので正直に答えたが、何せ声が上ずってしまったので勘ぐった朽網は納得しなかった。
「本当だろうな? 調べても構わんか?」
「いくら会長と言えど、急に訪ねてきて屋敷の中を探し回るのは遠慮していただきたいですね。プライバシーもありますので」
鬼比良はきっぱりと断りを入れたが朽網は諦めが悪かった。
「なら君が一緒について回ればいい」
「何故、そこまでして私の屋敷を探し回りたいのですか? 探しているのなら直接連絡を取ればいい話ではないのでしょうか。それに私共が彼女らを匿う理由がありません。
それと、お言葉ですが、先刻の会議の時から会長は鬼人に対し異常なまでの執着を見せていますが何かあるのですか?」
鬼比良がそう言うと朽網は呆れとも諦めとも取れるようなため息を小さく吐いた。
「彼は危険なのだよ。力が弱いうちに消さねばやがて人類の敵になる。取り返しのつかないことになる。…と言うのは建前だ。どうだ鬼比良よ、取引をしないか?」
急に雰囲気の変わった朽網に鬼比良は生唾を飲み込んだ。
「取引?」
鬼比良は怪訝な表情を浮かべる。
「実はな、とんでもない力を手に入れたのだ。どれだけ己と向き合って鍛錬しようとも超えられなかった壁をあっさりと超えてしまうような極限の力を。
どうだ、お前も一枚噛まないか?」
「力? 一体なんですか?」
鬼比良が尋ねると朽網はニヤリと気色の悪い嫌な笑みを浮かべた。
「鬼だよ。やはり老いには勝てん。日に日に衰えていく自分の体に嫌気がさしていたのだ。しかし、鬼の力は素晴らしい。若い頃の力が、いや、それ以上のものが溢れてくる。お前が鬼人を差し出せば力を分け与えてやってもいい」
朽網は目を輝かせてそう言った。鬼比良は視界がどんどんぼやけていくのが分かった。薄々分かっていたつもりだが、実際目の前に起こったと思うとかなり来るものがある。
鬼比良が何かを言おうと口を開いた時、扉をノックする音が聞こえた。
「…どうぞ」
鬼比良がそう言うと扉が開く。そこには門番が立っていた。
「どうしたの?」
鬼比良がそう尋ねると門番は朽網を少し見た後、鬼比良に「少しよろしいでしょうか?」と言った。
何かを察した鬼比良は会長に一言断って部屋を出た。
「一体どうしたの?」
「実は四季と名乗るものが朽網会長の件で鬼比良様に話があると訪ねてきているのですが」
なんとタイミングの悪い話だろう。追い返すことも考えたが千春なら絶対に帰らないだろうと思った鬼比良は門番に「私が行く」と言った。そして、部屋に戻ると朽網に「すみません、少しの間席を外しますのでお待ちください」と言って千春達の元へと向かった。




