二人
部屋を出た楓は黙って鬼比良の後をついていた。長い廊下をひたすら歩き、突き当りを右に曲がってすぐ左手側にあった扉を開けた。扉を開けると部屋などは無く、下に降りる階段が現れた。
楓はそれをどこかで見たことある光景だなとか呑気なことを考え、階段を降りていく鬼比良に続いた。
それから無言のまま階段を降りると扉が現れた。その扉を開けると大きく開けた所に、牢屋があった。鬼比良はその牢の鉄格子を開けると「さぁ、中に入って」と言った。
「え? この中にですか?」
「えぇ、今は説明している時間が惜しいから察してもらえると助かるわ」
訳が分からなかったがここは素直に従った方が良さそうな気がした楓は何も言わずに牢屋に入った。
鬼比良はそれを確認すると鉄格子を閉め、鍵を掛けた。そして、空に文字を書いているような仕草を見せた。
「何をしているんですか?」
「ちょっと、静かにして。今、呪文字かいているから」
呪文字という聞きなれない単語に楓は首を傾げた。
「なんですかそれは」
楓の問いかけに鬼比良は何も答えなかった。かなり集中しているようだった。
「…これでよし。しばらくここで大人しくしといて」
「え? 訓練は?」
「そんなものないわよ。閉じ込められた時点で気付きなさい。貴方は少し人を疑うことを覚えた方がいいわよ。私と千春が仲良さそうに見えるからと言って信頼できる相手だと思わないことね」
鬼比良はそう言うと楓を残して牢屋を後にした。
なんだか分からないが一刻も早くここから出た方が良さそうな気がした楓は鬼人になり、鉄格子を壊そうと試みたが、壊れる気配がない。何の変哲もないただの鉄なのだが、問題はそこでは無かった。牢の中にいると力がどんどん抜けていく感覚に襲われた。あっという間に鬼人を維持することが難しくなり、鬼人化が解けた。額から滝のような汗を流し、その場に膝をついた。
「はぁはぁ、凄く疲れる。なんだこれ」
為す術がない楓は大人しく待つことにした。
何もすることがなくなると睡魔が急に襲ってきた。楓は最初こそ抗っていたものの、いつの間にか眠りについてしまった。




