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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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会議 後

 朽網はため息をついた。

「はぁ。まぁ、言いにくい気持ちも分かるが、それを知っているのと知らないのでは心構えが全く違うものになるだろうが」

「あ、あの、話が見えてこないのですが」

 楓は思わず口を挟んだ。

「この会議は、お前さんの処分について話し合う場なのだよ。本来ならば君は鬼として討伐の対象になっている。しかし、人類の救世主になるかもしれないという意見で延命しているのだ」

「ですから、雷鬼を倒したことによって人類の助けになることが分かったではないですか。風鬼を退けたことも事実ですし、更に強力な氷鬼にも敵うかもしれません」

 千春は怒気の籠った声でそう言う。

「確かに、雷鬼を倒したことは紛れも無い功績だ。人類の安寧に一歩近づいただろう。だが、私は恐ろしいのだよ」

 朽網はそう言うと手元にあったお茶を一口飲んだ。そして、話を続ける。

「酷なことを言うことを許してくれとは言わない。はっきりと言わせてもらえば四郎園君は我々人間から見れば立派な化物だ。人ならぬ怪力を持ち、人間なんぞ雑巾を絞るかのように捻り潰せる。それが、人と同じ様に学校に通い、学び、遊ぶ。昨日まで安全だった生活が君の気分次第で地獄へと簡単に塗り替えれる。君は自分の持っている力の強さを認識しているのかい?」

 朽網は楓の目を真っ直ぐと見据えて尋ねた。

「僕はそんなことしません!」

「人間であるうちはそうかもしれないが、鬼に全身を蝕まれても同じことを言えるのか? 報告書を見れば君が鬼になった日は暴走して千春君の腕を折ったそうじゃないか。

 一見、人が良さそうな優しい少年に見えても心の奥底までは分からない。もしかしたら、今にでも鬼人になって襲い掛かってきてしまうのではと思っているところだ」

「そ、そんな…

 で、でも今は力のコントロールもできますし、暴走なんてしません」

 楓がそう言うと朽網は再びため息をついた。

「それが恐ろしいのだよ。自分の持つ力の大きさを理解し、それを制御できる。何の凶器も所持していない君の身体こそが最大の凶器なのだよ。それにまだ発展途中。今ここで処分してしまわねば、君は国だって獲れる。

 私とて未来のある中学生に処分を下すことを考えると胸が痛むのだ。これは私だけの判断ではない。国がそう決めたことだ」

 朽網はそう言うと手元にある書類に目を落とす。

「胸が痛むのであれば今まで通り、保護観察を継続でいいのではないでしょうか? その為の四季だったはずですが」

「何度も言わせるな。これは国家の命令だ。もう既に処分は決まっているのだ。四郎園楓の身体を拘束。その後、御神楽式封術で封印だ」

 御神楽式。その昔、討伐することの難しい鬼を封じる為に用いられた封印術の一つである。力の強い鬼は討伐後に怨念を残し、災厄をもたらすことが多く。討伐ではなく封印がよく用いられた。

 方法は対象を術式の書かれた円形の中心に拘束し、その周囲を数人の術者が呪詛を唱えながら神楽を舞うように廻り対象を封じ込めるのだ。

 朽網は立ち上がると楓に近付いた。

「朽網さん。反抗するようで悪いけどさ、この子はもう、うちの家族なんだ。弟が連れていかれるんなら、私も抵抗させてもらいます」

 千春はそう言って、持ってきた荷物から木刀を取り出し、構えた。

「武鬼を出さずに私を倒すというか。確かに私も全盛期と比べて体力、膂力は衰えたが、木刀で倒されるほど弱くなってはいないぞ」

 朽網はそう言って木刀を掴んだ。千春はそれを振り払おうとしたが、ピクリとも動かない。

 力の差を見せた朽網は千春の横を通り過ぎ、楓の目の前までやってきた。180cmを超える長身に加え、体格も良い。中学生に威圧感を与えるのは充分過ぎるものだった。

 朽網は楓を捕らえようと手を伸ばしたその時、会議室の扉が開いた。

「会議中失礼致します。駒走回収の駒走です」

 朽網を含め、会議室内にいた一同は一斉に駒走を見る。

「何故、回収屋なんぞがここに」

「たった今、許可が下りまして、四郎園楓に関する権利は我々の手に移りました」

 駒走の発言に朽網は眉を顰める。

「何をそんなバカげたことを。何故、回収屋の手に渡らなければならないのだ」

「ちゃんと総理大臣から許可書を貰っていますから。それに回収屋としてではなく、国家公務員としての許可です。

 後、お言葉ですが、何をそんなに四郎園を処分することに焦っているのですか? 朽網会長は四郎園がいると何か不都合でもあるのですか?」

「何が言いたい」

 朽網がそう言うと駒走は焦ったように笑みを浮かべた。

「いやいやいや、これと言って深い意味はないですし、別に朽網会長の事をそう思っているわけでもないのですが、裏切り者と言いますか、鬼と通じている者がいるそうで」

「私を疑っているのか?」

 朽網は明らかに怒っていた。無理も無い。駒走はそう思っているわけではないと言ったが、あからさまに「貴方は裏切り者ですよね?」と尋ねているのと変わりはない発言だ。

「ですから、そう思っているわけではないと言いましたよ。ただ、鬼と通じている者がいるということは事実みたいですし、会長の耳にも入っているはずですよね。

 もう暫く経つのに一向に裏切り者の尻尾は掴めない。昔の朽網さんならこんなこと有り得ない。昔、若い者が鬼と通じていると知った時、次の日には内通者を突き止めてそいつを殺したのに」

「私も歳を取るにつれ、丸くなった。昔のように非情で冷徹ではないのだよ。鬼と通じている者は現在調査中だ。そう報告してあるはずだが」

 朽網がそう言うと駒走は笑みを浮かべた。

「是非、いい報告を待っていますね。さて、四郎園をこちらに渡してください」

 朽網は少し考える仕草を見せた。

「納得いかないが、許可書があるのならば仕方あるまい。それではこれを以って会議を終了する。解散」

 朽網はそう言って苦虫を噛み潰したような顔をしながら足早に会議室を出た。それを皮切りに他の会議参加者も会議室を後にしていった。そして、会議室には四季家と駒走だけになった。

 

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