会議 前
会議当日。正装に身を包んだ三人は、とあるビルの一室へと足を踏み入れた。そこには既に十数名が着席しており会議の時間を待っていた。
会議室内の視線が一気に三人に集まった。見慣れない夏樹と楓の姿に周囲は少し騒然とした。
「うぅ、緊張で手汗が」
囁くように楓が呟く。
「おっ、奇遇だな。私も同じだ」
千春はそう言うと笑った。
夏樹はと言うと今にも倒れそうなぐらい真っ青な顔をしている。過度の寝不足と緊張のせいだろう。楓が「大丈夫ですか?」と声をかけた。
「お姉ちゃんのこと心配してくれるの!?」
夏樹はまるで息を吹き返したように元気を取り戻した。千春はそんな夏樹を見てため息をついた。
「まず会長に挨拶からだ」
千春はそう言って上座の方に座っている初老の人物に向かって歩き出した。夏樹と楓もそれに続く。
「おはようございます。朽網会長」
「おぉ、四季か。遅かったじゃないか」
「少し準備に手間取りまして」
「はっはっはっ、そうか、そうか。それで後ろの二人は?」
「私の妹の夏樹と、鬼人の四郎園楓です」
千春がそう言うと朽網の目付きが少し鋭くなった。
「ほう、君が噂の鬼人で雷鬼を討伐したという。写真で見た通り優しそうな顔つきをしているが、雷鬼を倒す度胸の強さ。人は見かけによらないとはこのことだな」
朽網はそう言って楓をじっくりと観察した。楓は蛇に睨まれた蛙のように動けなかった。
「さて、そろそろ会議が始まる時間だ。席に着きなさい」
朽網にそう言われたので夏樹と楓は自己紹介する間もなく指定された席についた。
皆が揃ったのを確認すると朽網は一つ咳払いをして、進行役に始めるように促した。
それから、会議は何時も通り鬼の討伐数の報告や警戒すべき鬼の情報交換など、滞りなく進んで行った。
「さて、次ですが、雷鬼討伐についての報告を四季家からお願いします」
進行役がそう言うと千春は返事をして立ち上がった。
「えー、四季家代表の四季千春です。まず、雷鬼討伐報告の前に一つよろしいでしょうか。
私、四季千春は本日を持ちまして、四季家代表を降ります。今度は四季夏樹が代表として会議等に参加致します。誠に勝手ではございますが、どうぞよろしくお願いします。
雷鬼討伐報告前に夏樹から一言だけ挨拶を」
千春はそう言うと夏樹にマイクを渡した。
「今、紹介に預かりました四季夏樹でございます。不慣れな点等ございますが、ご指導賜れたらと思っています。どうぞよろしくお願いします」
夏樹はそう言って頭を下げると千春にマイクを返した。
「さて、本題に移らせていただきます。雷鬼討伐の件ですが、お手元にある書類に目を通していただけたら分かると思いますが、鬼人である四郎園楓によって雷鬼を討伐しております。
恥ずかしい話ではありますが、四季家の人間では雷鬼に全く以って歯が立ちませんでした。また、書類が間に合わなかったので提出していませんが、先日風鬼とも接触しております。その際はうちの妹である美冬利が殺される寸前のところでした。それを退けたのも鬼人である四郎園の功績です。
このことから現在四鬼を改め、三鬼に対抗できる手段は鬼人である四郎園楓だけです。これらを考慮していただければ四郎園の処分を見送りでいいのではないでしょうか?」
千春がそう言うと今まで黙って聞いていた楓は「え?」と声を漏らした。
処分? 確かにそう聞こえた。
「なんじゃ、お前鬼人には何も伝えておらんのか」
楓は千春の顔を見た。千春は真っ直ぐ朽網の顔を見つめている。その表情は険しい顔をしていた。




