合宿 六
日が傾き、夕日が海へと沈んで行きそうな砂浜。とても美しい景色は何時までも見たくなる様なものだった。その景色を可愛が眺めていると、特訓を終え、泥や切り傷まみれの千春たちが戻って来た。
「マジでもう無理。腕上がんねぇ」
千春はそう言って砂浜に倒れ込んだ。他の皆も同じように疲弊している。
「…お疲れ様」
「ん? あぁ、可愛か。何してんの?」
千春は肩で息をしながら可愛に尋ねた。
「ここの景色あ綺麗だなって思ってみていただけ。
むさ苦しい奴が帰って来たから台無しだよ」
「あ? 喧嘩売ってんのか?」
とても疲弊しているとは思えない威圧感を千春は放った。
「ウソウソ、冗談だよ。ていうか、どれぐらい登ったの? 距離を考えたら二回ぐらい?」
「多分、六往復ぐらいかな」
「へぇ、六往復ね。って、往復!? 往復って登った後、山道を降りてこずに、そのまま崖を下ってきたってこと!?」
「当たり前だ。往復ってそういう意味だろ。
あー、もう歩く気力が湧かねぇ。おぶってくれ」
とても冗談を言っているようには見えない。少し可哀想に思えた可愛は仕方なしといった様子で腰を落とした。
「ほら、早く」
可愛がそうしていると千春は何事も無かったかのように立ち上がった。
「いや、やっぱいいわ。自分で歩く」
「はぁ? 人がせっかく助けてやろうと思っているのに」
「可愛に借りを作りたくねぇなって思っただけだ。
あ、話変わるけど、明日の朝イチで帰るから忘れ物すんなよ」
「あれ? 一週間ぐらい滞在するんじゃなかったの?」
「そのつもりだったんだけど、気が変わった。なーんか嫌な予感がするというか。いや、ただ帰りたくなっただけだな」
千春はそう言うと立ち上がりゆっくりと歩きだした。可愛は首を傾げ、少し考える仕草を見せると千春に続いた。
皆がテントの場所まで戻ると鬼比良と駒走が夕食の準備をしていた。皆に夕食が行き渡ったのを確認すると千春は可愛に話したように明日帰ることを伝えた。四季家の皆は何か引っかかる様だったが、特に質問することもなく、それを了承した。
それから何事も無く夜を過ごした皆は眠りについた。




