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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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合宿 四

 テントを張ってあるところまで戻るとそこには鬼比良、美冬利、楓の姿があった。

「あ、可愛ちゃん見つかったんだ」

 鬼比良は頬杖を突きながら興味がなさそうな様子でそう言った。

「こいつ、洞窟の中にいやがってさ、しかも、昨日の夜に私が冷やしておいたビールをこっそり持っていたらしくて、その洞窟の中でビール飲んで泣いていたからな」

 千春がそう言うと可愛は罰が悪そうに下を向いている。

「…この度は皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまい本当に申し訳ございませんでした。今後、このような事が無いように努めて参ります」

 可愛は少し不貞腐れた様子で平謝りすると頭を下げた。

「まぁ、何はともあれ見つかって良かったです。さぁ、お昼ご飯にしましょう。可愛さんを探すついでにイノシシが居たので仕留めてきました。さっき血抜きが終わったので後は調理するだけです」

「おぉー、美冬利ちゃんは偉いね~

 秋穂お姉ちゃんがヨシヨシしてあげる」

 秋穂はそう言って美冬利の頭を撫でようとした。しかし、それをすぐ察した美冬利はすぐさま後ろに跳ね、秋穂と距離を取った。

 そんな二人のやり取りを余所に驚いた表情というより畏怖の表情を浮かべている可愛は美冬利に話しかけた。

「ど、どうやってイノシシを仕留めたの? 道具も何もないのに。ていうか、無人島にイノシシなんているの?

「イノシシは泳げますよ。無人島なんかは人の手が加えられないので餌が結構豊富にあったりするんです。だから本島から泳いでここまで渡ってくるのも珍しくはないんです。

 仕留めたのは私の武鬼を使いましたので簡単でしたよ」

 美冬利が得意げな顔でそう言うと可愛は眉をひそめた。

「武器? そんなことを警察官の前で堂々と言うなんて正直驚きです。早く出しなさい。銃刀法違反で現行犯逮捕するから」

 可愛はそう言って両手を前に差し出した。美冬利は少し笑みを浮かべて可愛に弓を差し出した。それを受け取った可愛は戸惑った表情を見せた。

「はい、確かに受け取りまし、えっ? こんなに大きな弓、どこから取り出したの?」

「私の中から出しましたよ。それは私であって、私ではないものです。粉々になるまで壊されてしまえばもう二度と出せないでしょうけど、そんな簡単に壊れる程、やわな強度じゃないですので乱暴に扱ってもらって構いませんよ。どうぞ気の済むまで調べてください」

 美冬利が嬉々な表情を浮かべている所を見ると、どこか新鮮な気持ちになるなと楓は思った。

 可愛は美冬利から受け取った弓の弦を引いてみたりしたが、弦はピクリとも動かない。

「ちょっと、これ固すぎじゃない? こんなの鋼と一緒だよ。こんなの引ける人いる?」

「それは私にしか引けません。千春姉さんも私のお父さんにも引けません。自分の武鬼は自分にしか扱えないのです」

 美冬利はそう言って可愛に武鬼と鬼について説明した。

「…こういう時の美冬利ちゃんって一番輝いているよね。私、ちょっと引いちゃうかな」

 秋穂は苦笑を浮かべながら楓に話しかけた。

「まぁ、僕も多少はそう思いますけど、この仕事に誇りを持っているように見えるので少し羨ましです」

「誇りかぁ、私達四季家は生まれた時から鬼退治が当たり前だったからそういうことを思ったことはないかも。そう思えば私も美冬利ちゃんのことが羨ましく見えるかな。

 …でも、可愛さんの顔を見ると前言撤回したくなるよね」

 楓が可愛の方へ視線を戻すと可愛は心底迷惑そうに美冬利の話を聞いている。美冬利はそれを意に介さず饒舌に鬼の説明を続けている。

 それから小一時間程、美冬利の熱弁が続き、ようやく解放された可愛はしんどそうな顔でその場に倒れ込んだ。

「やっと終わった。これだから座学は嫌いなんだ」

「本当にちゃんと理解出来ましたか? これは命に関わることなので、肝に銘じておいてください」

「分かってるって。

 でも、こうやって改めて聞くと実感が湧かないというか、突拍子過ぎて理解が追いついて来ない話しなんだよね」

 可愛はそう言ってため息をついた。

「その気持ち分かります。僕も最初はそうでした」

「そうだよね。ところで、君は四郎園君だったよね。君はなんで四季家にいるの? この前までただの一般人だったわけでしょ? 話を聞く限りでは大変なことに巻き込まれているようだけど、それは君が望んだことなの?」

 可愛にそう言われた楓は返答に困った。確かに自分は今の状況をすんなりと受け入れてここに居る訳だが、それは果たして己が自ら望んだことだったのだろうか。

 その返答に困っていると千春がパンと手を叩いた。

「話はそこまでだ。美冬利のながーい話の間に飯の支度は終わったぞ。

 私は馬鹿の操作で腹が減ったんだ。せっかく美冬利が立派なイノシシを取ってきてくれたんだ。無人島では獣肉はとても貴重な食糧だからな。馬鹿の質問に答えている程、時間に余裕はない」

「待って、黙って聞いていたけど、馬鹿って私の事じゃないでしょうね」

「お前以外に誰がいるんだよ」

 千春がそう言うと、二人は睨み合うようにお互いの顔を見た。するとその間に鬼比良が入る。

「はい、言い争いはそこまでにしましょうね。中学生も見ていることだし教育に悪いわよ」

 鬼比良が仲裁すると二人は睨み合ったまま距離を取った。

「はぁ、全く。もう子供じゃないんだからみっともない真似しないでよね。同級生として恥ずかしいから」

 それから皆で美冬利が仕留めたイノシシを食べ、日が落ちるまで各々で鍛錬をして、その日は眠りについた。

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