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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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合宿 一

 駒走と共に歩くことおよそ十分。少し開けた場所に出た。そこにはテントを準備している秋穂、美冬利、そして鬼比良の姿があった。

「あー、しんど。こんなことさせられるのを分かっていたなら祁答院に夏休みなんかあげないでこっちに来させればよかったわ」

 鬼比良は額に滲む汗を拭いながらブツブツと小言を言っている。その後ろで鬼比良とは対照的に秋穂と美冬利はテキパキと行動していた。

「おや、鬼比良隊長もいらしていたんですね」

 駒走がそう言うと鬼比良はこちらに視線をむけた。不思議そうな表情を浮かべている。

「なんで駒走さんがいるわけ? ここは仲良しクラブの会場なの?

 ていうか、超疲れた。四郎園も体調が戻ったんならテント張り手伝いなさいよ」

 鬼比良の鋭い眼光に睨まれた楓は背筋を伸ばすとテント張りを手伝った。

「ふぅ、やっぱり私は自分で動くより、人を使う方が向いているわね。

 ほら、テキパキ動く!」

 鬼比良は近くに会った岩に腰掛けて楓に指示を出した。そして、いつの間にか横に立っていた駒走に話しかける。

「で、駒さんは何しに来たんです? 仕事は休んで大丈夫なんですか?」

「千春さんに誘われたので来たんですよ。仕事は四季家が鬼退治をしなければ無いも等しいですから。

 ぶっちゃけると私がここまで休みなしで働いているのは四季家のせいですからね。久々の休みを四季家の皆さんと過ごすのもどうかと思いますが、何もすることがありませんからね。

 まぁ、それなりに楽しみにしていたのも事実なので。今回は遠慮なく羽を伸ばそうかなと思っています」

 駒走がそう言うと鬼比良は不満そうに口を尖らせた。

「すみませんね。うちの業績が悪くて」

「いえ、そういうつもりで言ったわけではありませんよ。鬼兵隊を担当しているのは別の班ですから。私が関わるのはほんのちょっとしかありません。その班は今も休みなく鬼兵隊の回収班として働いていますよ。

 それに鬼兵隊は隊の数が多いですからね。その分骨も折れます」

 二人がそんな話をしていると奥の方から大量の魚を入れた網を抱えた千春と夏樹が現れた。

「おー、駒さんじゃん。今さっき着いたんだ。

 ていうか、その隣の人は?」

 千春は鬼比良とは別に駒走の横に立っていた人物を目を細めながら見つめた。

「あ、そう言えば紹介が遅れましたね。ほら、自己紹介してください」

 駒走がそう促すと隣に立っていたショートボブの髪型に、無人島には似合わないタイトな黒のズボンに白のワイシャツを着た人物はペコリと頭を下げると自己紹介を始めた。

「初めまして。私、警視庁特殊犯罪課、一課の可愛 真奈美(えの まなみ)と申します。駒走さんの直属の部下になります。不慣れな点などあると思いますが、どうぞよろしくお願いします」

 隣に立っていた人物が可愛と名乗ると千春と夏樹は何か心当たりがあるような仕草を見せた。

「あのさ、もしかして可愛って剣道部の可愛だろ?」

「はい、そうですが……って! げっ! 千春かよ!」

 可愛はマジマジと千春の顔を見た後、露骨に嫌そうな顔をした。

「お二人は知り合いですか?」

「二人はって言うより、鬼比良も知っていると思うけど。剣道部の可愛ちゃん」

 千春にそう言われた鬼平は少し思い出すような仕草を見せた。そして、手を叩いた。

「あー、あの体育の時に千春に負けてボロ泣きした子?」

 鬼比良がそう言うと可愛は慌てふためいた様子で二人の間に入った。

「ちょ、ちょ、ちょっと、その話はやめよっか? 恥ずかしいから!」

「私はその話を知りませんから少し気になりますね。可愛君、話してくれますか?」

 駒走はニコニコしながら可愛にそう言った。

「え、い、いや、それはちょっと…」

「これは業務に関わる必要なことですよ」

「こ、これってパワハラに該当するのではないですか?」

「はははっ、それを言われてはお終いですね。じゃあ、千春さん何があったのか教えてくれます?」

 駒走がそう言うと鬼比良は何かを察したように可愛を押さえた。

「こいつと小、中学校同じなんですよね。それで中学の体育で選択授業があって、私は剣道を選択したんです。まぁ、可愛は剣道部なんで、もちろん剣道を選択していて。

 ある日の授業で試合形式の授業があって、私が可愛のことをボッコボコにしたんですよ。そしたらもう体育館中に響き渡る声で泣き喚きましてね。その後先生にみっちり怒られましたよ」

 千春がそう言うと可愛は顔を真っ赤にしながら口をパクパクとさせている。

「ちょっと! なんで言うのよ! この馬鹿!」

「ふふふっ、堅物かと思っていたのですが、そんな微笑ましい過去があったんですね。因みに一回負けただけで、なんでそんなに号泣したんですか?」

「可愛は小さい頃から剣道をしていたようで、同世代には一回も負けたことがないんですよ。全国でも優勝していますし、それが悔しかったんだと思いますよ」

「可愛君、そうなんですか?」

 駒走が尋ねると可愛は小さく頷いた。

「本当に悔しくて、滅茶苦茶泣きました。お陰で地元には帰れないので同窓会とか成人式も行けてないです…

 ていうか、千春と詩織が鬼退治をしているなんて思わなかったよ。私もこの部署につくまで鬼なんて信じられなかったし」

「まぁ、言えるようなことじゃないからね。

 ところで可愛さんはどうやってこの仕事についたの?」

「私は高校卒業してから警察に入って、交番勤務をしていたんだけど、急に辞令がきて駒走さんの部署に配属になったわけ」

「あぁ、それは私がスカウトしました」

「えっ!? そうなんですか? てっきり私、普通に勤務態度と成績が良かったからここに配属になったのかと」

「自分で言うのはどうかと思いますが。まぁ、勤務態度云々は置いといて、人手不足になったので適当に履歴書をぶん投げて手に取った一枚が可愛君だったので、決めました」

「はははっ、さすが駒さん。やることが破天荒だわ。まぁ、久しぶりの再会だし、飯でも食って話そうぜ。

 おーい! 昼飯にするぞー!」

 千春はそう言って昼食の準備を始めた。可愛はその場で改めて皆の前で自己紹介をして、皆と打ち解けた。

 無人島初日はそれから何事もなく終わりを告げた。

可愛ちゃんのところをちょっと書き足しました。

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