魅鬼と剛鬼
山奥にある廃村。ここに魅鬼と剛鬼は身を潜めていた。
「はぁ、つまんない」
魅鬼は机に腰掛け、足をバタバタさせながらそう呟いた。
「そうは言っても、真詩呂ちゃんの顔が連日、テレビで報道されているから下手に動けないだろ」
「真詩呂ちゃんって言うな。それよりも、剛鬼の登場の仕方が悪かったんだよ。もっと別の方法は無かったの?」
魅鬼は不満そうに頬を膨らませた。
「…まぁ、隠密に入れたけど、インパクトが薄いと思ったから」
剛鬼がそう言うと魅鬼は凄い剣幕で怒鳴った。
「はぁ!? あんたが目立ちたいが為に私は今、こんなボロボロのすたれた村で身を潜めているわけ? ちょっと、考えれば分かることでしょ! 何? バカなの?」
「ま、まぁ、そんなに怒るなよ。血圧が上がるぞ」
「小学生に血圧がどうのこうの言っても意味ないでしょ!
あー、怒鳴ったら疲れた。アイス食べたいなぁ」
「はぁ、分かった。買ってくるよ。何が食べたい?」
剛鬼がそう言うと魅鬼は目を輝かせ「一番高いやつ!」と元気よくそう言った。
その言葉を聞いて剛鬼は再びため息をつき、財布の中身を確認した。そして、仕方なさそうに頷くと買い出しに出かけた。
二十分五、剛鬼は買い出しから戻って来た。
「遅いよ! アイス溶けてないよね?」
「多分、大丈夫だと思うけど」
剛鬼はそう言うと袋からアイスを取り出し、魅鬼に差し出した。それを受け取った魅鬼は礼を言ってアイスを口に運んだ。
「それで、これからどうするの?」
魅鬼はアイスを食べながら剛鬼に尋ねた。
「…そうだな、このままここに居ても無駄だし、そろそろ動こうと思っている」
「四季をぶっ殺す算段はあるの?」
「簡単さ。数で圧倒すればいい」
剛鬼がそう言うと魅鬼は不思議そうに首を傾げた。
「どういうこと?」
「だから、魅鬼の力を使ってこちらの駒を増やすんだよ」
「そんなことしたら、こっちの居場所がばれちゃうじゃん。
この前だって、気配の消し方をマスターしていたはずのお母さんが鬼だっていうことがバレていたみたいだし、それに十体そこらじゃこっちが死ぬよ」
「近場で増やし過ぎたから、四季に気付かれたんだ。今回は、遠征して、少しずつ集める。でも、時間をかけずに一気に集めたい」
「そんな無茶だよ」
「そんなことない。俺と魅鬼ならいけるさ」
「ご、剛鬼がそこまで言うなら…
それで、集めたらどうするの? もちろんただ『集めて戦います』ってわけじゃないでしょ?」
「それは集まってからのお楽しみさ。それを食べたら出発しよう。今のうちに旅行ってのも悪くないだろ?」
「これはまた急だね。
まぁ、何言っても無駄だってことは分かってる」
「物分かりが良くて助かるよ。丁度、食べ終わったみたいだし、出発しようか」
剛鬼はそう言うと魅鬼の手を取った。それから、二人の鬼増やしの旅は始まった。




