登校
美冬利と楓は朝食を済ませ、二人で学校に向かっていた。その道中、不意に楓が口を開いた。
「ねぇ、美冬利さん。どうしたら、僕は強くなれるかな」
「…そうですね。やっぱり、守りたいものがあれば強くなれるのではないでしょうか? 今、四季家で一番強いのは千春姉さんです。うちはお母さんはいませんし、お父さんも世界を飛び回っているので、家にいません。なので、千春姉さんが家を守らないといけなくなったわけです。
今からする話は千春姉さんには内緒ですよ?」
美冬利はそう言って楓の顔を覗き込んだ。
「実は千春姉さんって昔は泣き虫だったんです」
「え、そうなの?」
「そうですよ。
小さい頃から四季家の長女として、お父さんとお母さんに厳しく教えられていたのですが、しょっちゅう逃げ出したり、投げ出していたりしたそうです。そんな千春姉さんを変える出来事があって、まだ私がお母さんのお腹の中にいた時なのですが、その日、お父さんは鬼退治に行っていて家にはお母さんと千春姉さん、夏樹姉さんしかいませんでした。
その時に体調を崩したお母さんが倒れてました。それを見た千春姉さんは何も出来ずにただ茫然とそれを見て泣くことしかできなかったそうです。
幸い、その日たまたま早く帰って来たお父さんが急いで病院に連れ行ったので大事にはなりませんでした。
その出来事があってから千春姉さんは変わって「私がみんなを守る」と口癖のように言っていたそうです。きっと、何も出来ない自分に腹が立ったのでしょう。それから、千春姉さんの泣き虫は治って今、四郎園さんが知っている千春姉さんになりました。
だから、人は変われるのです。悲しみを乗り越えれば強くなれます。今すぐ、なんて無理ですが、一歩ずつ、少しずつ私と一緒に乗り越えていきませんか? 私も姉さんたちや四郎園さんを守れるぐらい強くなりたいです」
美冬利はそう言うと楓の顔を見てニコリと笑った。楓はその笑顔を見て力強く頷いた。
「さっ、もうすぐ学校に着きますよ。今日は真面目に授業を受けてくださいね」
「いや、ちゃんと受けてるから!」




