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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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剛鬼

 少し前、三人が策を練っている時。

「いいか、上位クラスの鬼だ。向こうもきっとこちらに気付いているに違いない。

 まず、家の中に入る方法なのだが、秋穂が家のインターホンを押して、女の子のハンカチを拾ったという」

「えー! 嫌だよ! 私がピンポン押すの嫌なの知ってるじゃん!」

「文句はちゃんと最後まで聞いてから言ってくれ。

 続けるぞ。それでインターホンを押したら母親が出るはずだ。秋穂がハンカチを見せれば母親は「お礼がしたいから中に入ってください」と言うはずだ。最初は断るが次にそう言ってきた時には中に入る。

 中に入ってしまえばこちらのもんだ。ハンカチを返すと言っているのだから、女の子は確実に私たちの目の前に現れる。その時点でまず、女の子の安全を確保。両親を拘束。その後、両親、それが不可能な場合は女の子を別の場所に移動させる。これは女の子の前で両親を退治して、心の傷を負わせない為だ。

 おおまかだが作戦は以上だ。何か質問はあるか?」

 千春がそう言うと秋穂が手を挙げた。

「私、ピンポン押すの嫌なんだけど。それに拾っても無いハンカチをどうするの?」

「わがままを言うな。女の子が死んだらどうするんだ。まぁ、ハンカチは今やっている女の子向けアニメのハンカチを用意しよう。それで充分だと思う。

 夏樹は何かあるか?」

「その作戦通りいけばいいけど、もし玄関先で襲われたらどうする? それに玄関先だけでなくとも、女の子がいるリビングとか」

「その時は止むを得ない。その場で退治しよう」

 千春がそう言うと二人は頷いた。

「…よし、他に何も無さそうだな。

 秋穂はハンカチを買いに行ってくれ。夏樹はこの家の間取りが分かる物か何かを貰ってきてくれ。事は一刻を争う。出来るだけ早く頼む」

「「了解」」

 二人はそう言って各々目的の場所へ向かった。

 約十分後に秋穂、そして、それから二十分後に夏樹が戻って来た。夏樹が持ってきた間取りが乗った紙を確認して、女の子救出への作戦を詰めた。

 そして、今に至るという訳だ。

 三人が少女宅に足を踏み入れるとそれを確認した母親はドアの鍵を閉めた。三人は同じタイミングで振り返る。

「どうされました?」

「いえ、鍵を閉められたので」

「あぁ、最近、何かと物騒ですから」

 母親はそう言うと不敵な笑みを浮かべた。

 それから、母親にリビングへと案内され、お茶を出された。リビングには父親の姿もある。

真詩呂(ましろ)ー! 下りてきなさーい!」

 母親が娘を呼ぶと「はーい!」と声が聞こえ階段を下りてくる足音が聞こえてきた。そして、リビングの扉が開けられると可愛らしい女の子が姿を見せた。

「あっ! 今日会ったお姉ちゃんだ!」

 真詩呂と呼ばれた女の子はそう言って秋穂を指差した。秋穂はニコリと笑って手を振った。

「コラ! 人様に指を指さないの!」

 母親が叱ると真詩呂は肩を落とし「はーい」と覇気のない返事をした。そして、真詩呂は秋穂に「お姉ちゃんは何しに来たの?」と尋ねてきた。そう言われた秋穂はポケットからハンカチを取り出し、真詩呂の前に差し出した。

「はい、これ。落としたでしょ?」

 秋穂がそう言うと真詩呂は目を輝かせてハンカチを受け取った。

「お姉ちゃんありがとう! これ真詩呂のお気に入りのやつなんだ!」

「よかった~ 間違っていたらどうしようかと思ったよ」

 秋穂はそう言って胸を撫で下ろした。すると、真詩呂は不敵な笑みを浮かべた。

「ご用事はこれだけ?」

「ん? どういうことかな?」

 秋穂がそう言うと真詩呂の目つきが鋭くなった。

「気付いていないとでも?

 家の周りをウロウロしている時から殺気ダダ漏れだよ?」

「…もしかして、お前も…」

 千春はそう言って武鬼を取り出そうとしたが動けなかった。何故なら、いつの間にか真詩呂の母親が千春の背中に包丁を突き付けていたのだ。

「いつの間に」

「ずっとここにいましたよ」

「あんたも鬼なのか?」

「えぇ、そうですよ。もう気付いているかもしれませんが、娘も夫もそうです」

「どうして娘も鬼にしたんだ?」

 夏樹がそう言うと真詩呂がその質問に答えた。

「それは違うよ。私が最初鬼になったの。

 うふふ、知っているよ。今まで十三歳以下の鬼は見つかったことないんでしょ?」

「どうして、そのことを知っている」

「簡単なことだよ。そっちに裏切者がいるんだ。そいつが私に有益な情報をくれるの。まぁ、私も情報を渡しているから、ギブアンドテイクの関係だよ」

 真詩呂はニコニコしながら質問に答えた。

「じゃあ、お前が魅鬼で間違いないということか」

「そう。私が魅鬼。どんな人間でも鬼にできるの。もちろんお姉ちゃんたちも例外じゃないんだよ。でも、しない。だって、言う事聞かなさそうだもん」

「それはありがたいな。じゃあ、もう一つ質問するけど、どうしてお前は鬼になったんだ?」

「皆に私のことを見てほしかったの。

 今はこうしてお父さんもお母さんも家にいるけど、私が鬼になる前はそうじゃなかった。お父さんもお母さんも仕事ばっかりで私のことなんて、一切見向きもしてくれなかった。注意を引くためにどれだけ悪いことをしても、全くの無関心。そしたら、いつの間にか私は鬼になっていた。そして魅鬼の力を手に入れたの」

「その力で自分の両親を鬼にして、関心を引いたというわけか」

「そう、その通り。だから今はとても幸せ。例え、人間として生きれなくとも」

「まぁ、理解できなくもない。

 ならば、どうして何の関係もない人を鬼にしたんだ」

「食事の為。お姉ちゃんたちも知っているでしょ? 鬼は人間を喰うって。そして、喰えば喰うほど力が増していくのを。

 ただの人間を喰うだけじゃ、効率が悪いんだ。人間を喰った鬼を喰う方が力の増し方が違うの」

「鬼は鬼を喰わないはずだが」

「ダメだよ。自分の物差しで鬼を測っちゃ。確かに鬼は鬼を喰わない。それは人間で言う所のカニバリズムに通ずるからね」

「ずいぶんと難しい言葉を知っているな」

「お父さんとお母さんが構ってくれなかったときにたくさん本を読んだからね。

 私はもう、既に七百に相当する数の人間を食べたのと同等の力を持っているよ。

 ていうか、もうお喋りは済んだ? そろそろ殺したいんだけど」

「奇遇だな。私もお前をぶっ殺したいと思っているよ」

 千春がそう言うと背中に突き付けられている包丁に少し力が込められた。

「お姉ちゃん、口悪いね。最初に殺しちゃおうかなー」

 真詩呂改め魅鬼がそう言うと指をパチンと鳴らした。それを合図に母親が包丁を千春に突き刺した。しかし、その包丁は空を切った。そして、母親の首が宙を舞った。

「嘘…、お母さんが死んじゃった。お母さんも結構喰ったのに、こうもあっさり殺されちゃうなんて」

「やっぱ、鬼は自分の親が死んでも淡々としてやがるな。これっぽっちも動揺しちゃいねぇ」

「そんなことないよ。少しだけ悲しいもん」

 魅鬼はそう言いながら自分の爪を見ている。

「少しだけっていう態度でもないね。短期決戦でいこう」

 夏樹がそう言うと魅鬼は笑い出した。

「ぷっ、あははは、それは無理だよ。

 お父さんも倒していないし、私にはまだ手駒がいっぱいあるもん」

 魅鬼はそう言って手を叩いた。すると、至る所から、魅鬼が強制的に鬼にした鬼が姿を現した。

「これはみんな私のボディーガードだよ。みんな中位クラス以上の鬼。そして、私のお父さんは上位クラス。まだ、私みたいに特殊な力を持っていないけどそれなりに強いよ」

「はっ、それがどうした。ここにいる私らは、その中位と上位を幾度となく倒してきた鬼退治のスペシャリストだ。

 裏切者とやらに聞かなかったのか? 四季家には気を付けろと。

 たかが、この程度の数で威張るんじゃねぇよ。後、二百体ぐらい連れてきてから同じセリフを吐きやがれ」

「あー、ほんと可愛くなーい。もうやっちゃっていいよ」

 魅鬼がそう言うと鬼達は姉妹に襲い掛かった。狭い家の中で乱闘が繰り広げられる。

 テレビやテーブルといった家具は無残に破壊され、そこら中に鬼の血が飛び散っている。十五はいた鬼はいつの間にか魅鬼ともう一体だけになった。

「だから言ったろ? 数が足りないって」

「うざっ。

 でも、まぁ、ここまでやるとは思わなかった。…仕方ない。奥の手を使うか」

 魅鬼はそう言って息を大きく吸い込んだ。

「来い!!! 剛鬼!!!」

 魅鬼がそう叫び数秒後、空から屋根を突き破り轟音と共に一体の鬼がやって来た。見た目は凄く華奢な男であった。しかし、見た目で判断してはいけない。こいつが会議で度々名前が挙がる怪力の鬼、剛鬼だ。

 剛鬼が現れた現場は辺りが更地になる程、恐ろしい力を持っている。四鬼のように風や炎を操るといった特殊能力はないが、純粋なパワーだけなら四鬼を上回ると言われている。

 剛鬼はふらりと立ち上がり姉妹を見た。

「今更出てきても所詮は鬼。私の速度にはついてこれまい」

 千春はそう言って刀を振った。並みの鬼ならば細切れになっている程の速度だ。しかし、剛鬼は涼しい顔をして立っている。

「う、嘘でしょ…、まさか、千春姉さんの攻撃を全て避けたというの…?」

 秋穂は声を震わせながら言った。

「どうしたの? さっきまでの余裕が全然ないけど大丈夫?」

「まだ本気を出していないだけだ。次は全力でいく」

 千春がそう言うと剛鬼は呆れともとれるため息をついた。

「これじゃあ、まるでどちらが鬼なのかも分からないな」

 剛鬼がそう言うとそれが千春の怒りの琴線に触れたようで千春は勢いよく剛鬼に突っ込んだ。

「はぁはぁはぁ、これでその減らず口も叩けなくなっただろ」

 千春は息を切らしながらそう言って剛鬼を見た。その剛鬼は脇腹を押さえ立っていた。その脇腹は血で少し滲んでいた。

「…全部避けるのは無理だったか。流石、四季だ」

「嘘だろ…、掠り傷だけなのかよ」

 千春はそう言って片膝をついた。先程の連撃で疲労が襲ってきたのだ。

「よっわー

 これなら、剛鬼を呼ばなくても私だけで勝てたなー

 さて、暇つぶしになったし、トドメを刺しちゃお」

 魅鬼はそう言って立ち上がり、姉妹に近付いた。夏樹、秋穂も反撃をする気力は無い。絶体絶命かと思ったその時、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。きっと剛鬼が落ちてきた時の音を聞いた近隣の住人が通報したのだろう。

 サイレンの音を聞いた魅鬼は舌打ちをした。

 「チッ、いいところで邪魔が入った。

 お姉ちゃんたち。今回は見逃してあげる。次はボコボコにして殺すから。

 剛鬼、行きましょ」

 魅鬼はそう言って生き残った一体の鬼と剛鬼を連れてどこかに消えた。何とか一命を取り留めた姉妹は大きく息を吐きその場に倒れ込んだ。

 「…まだまだ修行が足りねぇな」

 「そうだね。もうダメかと思った」

 「いつの間にか自分達が最強だと勘違いしていたね」

 三人はそう言うと押し黙った。そして、少し間があった後、何かを思い出したかのように飛び起きた。

「「「やばい!! 警察が来る!!」」」

 三人はそう言って慌ただしくその場を去った。

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