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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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魅鬼

 浩太の死により、学校内の行方不明者は出なくなった。しかし、依然として強制的に鬼に変えられる事件は後を絶たない。

 定例会議では一刻でも早く魅鬼を見つけるようにと指示が出ただけで具体的な解決策が挙げられた訳では無い。

 それから、約一ヵ月経ち、梅雨時期に入ろうとしている頃、事態は動いていった。

 秋穂は学校からの帰り道、道に迷っている女の子と出会った。話を聞くと小学三年生だという事が分かった。

 放っておけない性格の秋穂は少女を交番まで連れて行こうとした時、少女の母親と出会った。秋穂は少女を連れて母親の元に行くと、母親から鬼の気配がした。その時は何も言わず少女と別れた。そして、すぐ千春、夏樹に連絡を取ると姉達と一緒に親子を尾行し、少女の家を特定した。

 どうやって突入しようかと策を練っていると、年齢層がバラバラな男女数人が少女宅に入っていく姿を確認した。どう見ても兄妹や親戚の類には見えない。

 しばらく様子を見ると中からさっき中に入っていった数人の男女が出てきた。そのどれも目が血走っている。

 その感じから三人は思った。ここに魅鬼がいると。現に、先程の男女は散らばった後に鬼の力を解放している。千春は急いで美冬利と楓に連絡をした。美冬利たちに散らばった鬼を任せると三人は少女の家を見た。

 多分、魅鬼は少女の母親だろう。まだ確信はないが、秋穂の話だと母親から感じた鬼の力は並大抵の力ではないとのことだ。それに今まで十三歳以下の鬼は確認されたことはない。

 今のままでは少女が危ないが、下手に突っ込めば魅鬼を刺激しかねない。三人は話し合った結果、このまま固まっていては他の鬼が現れた時に柔軟な対応ができない為、交代で家を見張り、隙が出来た時に母親を倒すと言う結論に至った。

 千春と秋穂はその場を後にして、美冬利たちの支援に向かった。夏樹は残り、少女宅を見張った。

 一人になってから一時間程経った頃、今度はスーツ姿の男が一人現れた。

 玄関を開けた時の少女の様子を見ると、この子の父親なのだろう。少女は笑顔で父親に飛びついた。父親は少女を抱きかかえながら家に入っていった。

 ここだけ見れば仲睦まじい家族の姿が映されているのだが、実際はそうではない。夏樹はあの父親も鬼になっていると確信した。隠そうともしない鬼の気配。夏樹に気付けと言わんばかりだった。

 夏樹は急いで千春と秋穂に連絡を入れた。二人はすぐに駆け付けた。

 「このままでは、あの女の子が危ない。作戦を考えて突入するべきだと思う」

 「あぁ、そうした方がいいな」

 「でもさ、どうやって中に入るの? 家の間取りは? 敵の数は?」

 「そうなんだよぁ。周りに仲間がいるかもしれないし、家の中に潜んでいる可能性も充分有り得る」

 三人が頭を悩ませていると秋穂が口を開いた。

 「じゃあ、美冬利ちゃんと楓君も呼ぶ?」

 「…いや、やめておこう。美冬利はともかく、楓に上位クラスはまだ任せられない。足手まといになる可能性が高い」

 「了解。じゃあ、次の問題はどうやって中に入るかだよね~」

 「その点は心配するな。私に考えがある」

 千春はそう言うと妹たちに説明を始めた。


――

 「えぇ…、それで上手くいくの?」

 説明を聞いた秋穂はあまり乗り気ではない。夏樹はというと作戦を深く理解していないみたいで「別にそれでいいんじゃない」と軽い感じでそう言った。

 「夏樹姉さんは自分がしないから、そう簡単に言うけどさ~」

 「まぁ、そう作戦通りにいかないって」

 秋穂はブツブツ言いながら少女宅のインターホンを押した。少しの沈黙の後、母親とおぼしき人物が出た。

 『はーい、どちら様ですかー?』

 「あ、あの、今日、そちらの娘さんが迷子になっている時に助けたものですが!」

 『あー! その節はありがとうございました!

 それで何か御用ですか?』

 「い、いえ、大した用事ではないのですけど、その時、ハンカチを拾いまして、多分なんですけど、娘さんがハンカチを落としたのじゃないかなと思って」

 秋穂はそう言ってインターホンに付いているカメラにハンカチを持ってきた。

 『あー、多分それうちの娘のやつかもしれないです!

 本当、何から何まですみません。今、出てきますね!』

 母親はそう言ってインターホンを切った。

 秋穂はふぅと大きなため息をついた。そして、後ろに目をやると千春と夏樹が腹を抱えて笑っていた。

 「もう、だからピンポン押すの嫌だって言ったじゃん!」

 「お前の人見知り見ていると、相変わらず笑えるわ。ずっと、インターホン越しでわたわたしていたの見て、声を出さずに笑うの大変だったんだぞ」

 「サイテー。

 ていうか、人見知りじゃなくて、電話とかピンポン越しに知らない人と喋るのが苦手なだけだし」

 「てか、ピンポンってなんだよ。インターホンだろ」

 「べ、別にどっちでもいいでしょ! 意味が伝わればいいの!」

 姉妹でそんなやり取りをしていると家のドアが開く音がした。

 「すみません、お待たせしました。

 え、あ、あのー」

 母親は秋穂の後ろにいる二人が気になっている様子だった。

 「あー、すみません。こいつの姉で四季千春と申します。こいつは私の妹の夏樹です。

 最近、何かと物騒ですから、こいつ一人だけでいかせるのも、と思いまして」

 千春がそう言うと夏樹は頭を下げた。

 「あー、そうなんですね! 素敵なお姉さん達ですね」

 母親がそう言うと秋穂は軽く首を傾げた。

 「まぁ、立ち話もなんですから、どうぞ上がってください」

 「いや、ハンカチを届けるだけなので、お構いなく」

 千春がそう断ると母親は「せめて、お茶一杯だけでも」と言うので三人は厚意に甘えることにした。

 しかし、これは千春の作戦の一つであった。

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