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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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回想 其の七

 山を越え、刹那と永久は以前住んでいた山に到着した。普通の人ならば三時間以上かかる道のりも混血の双子は三十分程度で着いた。

 里の様子を見た二人は驚いた。

 「な、なんだよこれ」

 刹那の目に映ったのは暴れまわる人々。以前覗いた時の様なのどかな雰囲気はなく、里には危険な雰囲気が漂っていた。

 「こ、これ全部、鬼の仕業だと言うのか?」

 「分からない。けど、そうなんじゃないかな?」

 二人は生唾を飲み込んだ。すると、二人の後ろから声がした。

 「あれ、お前たちはこの前の」

 双子は振り返る。すると、そこに立っていたのは以前、一緒に遊んだ里の子供だった。

 「この前、また遊ぼうなって言ったのに約束破ったよな。

 楽しみにしていたのに! なんでそんなことをするんだよ!」

 男の子はそう言うと刹那に詰め寄り、首を絞めた。

 「く、苦しい…

 離せ、よ…」

 刹那はその手を引き剥がそうとしたが、力が強くとても引き剥がせるようなものでは無かった。

 「おい、手を離せ!」

 永久はそう言って男の子を蹴飛ばした。倒れた男の子はその拍子に刹那から手を放した。

 「いってぇな!何すんだよ!

 …クソッ、お前から喰ってやる」

 そう言った男の子の目は血走っていた。それに恐怖を覚えた双子はその場から逃げるように去った。

 「くそ! なんだよ! あいつは!」

 「分からないよ。でもお母さんが言っていた通りなのかも」

 「俺らと接触したからああなったって言うのか?」

 「そうじゃないとあれは説明できないでしょ!

 …とても子供の力じゃない。お父さんが言っていたでしょ? 私たちは鬼の血が入っているから力が強いけど他の人はそうじゃないって。きっとあれはもう鬼になったんだよ」

 「じゃあ、どうするんだよ。殺すのか?

 俺、人を殺したくなんかないよ」

 「…やらないと。

 私たちが里に下りたからそうなったんだ」

 永久はそう呟いた。

 「とりあえず、家に帰ろう。お母さんも心配していると思うから」

 「…そうだな」

 双子はそう言って家路を急いだ。惨劇になっていることも知らずに。

 家に戻った双子は自分達の目を疑った。何故なら、母親が見るも無残な姿に変わり果てていたからだ。四肢は捥がれ、腹からは臓器が飛び出していた。その姿に耐え切れなかった双子は胃の中の物を戻した。

 「な、なんだよこれ…

 誰がこんなこと…」

 「俺だよ」

 家の中から声がした。双子は中を見る。すると、そこには里にいた男の子の姿があった。

 「お、お前、なんでここに…」

 「そんな足の速さで逃げ切れるとでも思ったの?

 この力はいいよなぁ。喰えば喰うほど力が湧いてくる。まぁ、この女は喰う気にならなかったけどな。最後の最後までお前らの名前を叫んでいて、うざかったよ。

 さぁて、次はお前らの番だ。どんな死に方をしたい?

 首を引き千切るのもいいなぁ。後ろから串刺しってのも面白い

 十、数えてやるからその間に決めろ」

 男の子はそう言うと数を数え始めた。刹那は怒りに震える。

 「ふざけるな! 母さんがお前に何をした! 何もしてないだろ!

 ぶっ殺してやる!」

 刹那はそう言うと置いてあった刀を手に取った。そして、男の子目掛け、刀を振り下ろした。しかし、その刀は男の子に当たると二つに折れた。

 「な、に…」

 「そんな鈍ら刀で俺は切れないよ。

 まぁ、そんなに死に急ぐなよ」

 「くそっ、くそ!

 役に立たねぇ刀がっ! こんなんじゃ、父さんや母さんの仇なんて取れないじゃねぇか!」

 「もう、十を数え終わったぞ。

 さて、さっき俺のことを蹴った女の方から殺してやるか。お前はそこで自分の非力さを嘆きながら家族が死んでいく様を眺めていろ」

 男の子はそう言うと永久の首を掴んだ。徐々にその指に力を込めていく。段々と永久の顔が赤らんでいく。

 「…させるかよ。家族は俺が守るんだ。お前なんか、お前なんか! 殺してやる!」

 刹那はそう宇井と男の子との距離を詰めた。

 「今更なにができ…、な、んだ…?」

 男の子は永久から手を離し、自分の腹部へと視線を落とした。そこには背中から貫通しているであろう刀が飛び出ていた。

 「お、お前、この、刀は…」

 「これは俺の、俺らの恨みの形だ。

 死ね!」

 刹那はそう言うと突き刺した刀を抜き、切り付け殺した。

 「はぁ、はぁ、と、とうとうやっちまった」

 「…刹那、大丈夫?」

 「大丈夫。永久は?」

 「私も大丈夫。

 その刀は? 折れたんじゃないの?」

 「折れた刀はあっち。この刀はいつの間にか手に握られていたんだ。どうにかしないとって思っていたらいつの間にか」

 二人がそんな話をしていると、不意に三人組の男が現れた。

 「お見事でした」

 「誰だ!」

 「まぁ、そんなに構えないでください。

 私は天の使いのものです」

 「…かあさんが言っていた奴らか?」

 「えぇ、そうです。明日伺う予定でしたが、その必要はありませんでしたね。

 見事、自分の心を具現化して武鬼を取り出して見せましたね」

 「心を取り出す? 武鬼? 何を言っているの?」

 「今、現時点で鬼に対抗できる唯一の手段、それが武鬼です。

 それは貴方達、鬼との混血の人にしか取り出すことは出来ません。その武鬼を使い、鬼を退治してください。

 これはお願いではなく、命令であり、義務であります」

 「どうしてもしなくちゃいけないの?」

 「えぇ、そうです。貴方達の両親は侵してはいけない禁忌を侵してしまったのです。これは罰でありますから、貴方達はその罰を受けなければなりません。

 この罪はしっかりと記録していますので、しっかりと受け継ぎ、その血を絶やすことなく子孫にも背負わせるようにしてください」

 男はそう言うと刹那と永久に質問させる間も与えることなく残りの二人を連れて去っていった。

 それから、双子は言われた通り使命を全うし、自らの子供にその罪を引き継いだ。

 平安時代後期になると、氏、今で言う苗字を名乗れるようになり、自らの苗字を父である屍鬼から取り、四季と名乗った。


―――

――


 「とまぁ、だいぶ端折ったが、これが俺ら四季家に伝わる伝承だ」

 秀春がそう言うと、皆、信じられないと言った表情を浮かべた。

 「な、なぁ、父さん。その話、なんかの作り話とかじゃないよな」

 「そう思いたい気持ちは分かるが、これは嘘じゃない。これはれっきとした事実だ。

 どうしても信じられないというのなら、この奥は書庫になっている。そこには更に事細かに四季家の始まりが綴られている本や巻物が並んでいるから見ればいい」

 「…つまり、私たちは鬼の末裔で、自分達の生み出した鬼を退治しているってことになるわけ?」

 「あぁ、そうだな。

 まぁ、今の俺達には鬼の種を植え付ける程の血の濃さはない。この調子でいけば後、二百年後には鬼の存在はなくなっているんじゃないかな?」

 「お父さんはこの話を聞いた時、どう思ったのさ」

 「お前たちと同じ反応だったよ。

 信じられなかった。憎むべき対象である鬼が、まさか自分の先祖が起こしたことだったなんて思いもしなかったさ。

 それから一週間ぐらいは飯も喉を通らなかったよ」

 「このことは公表すべき事柄なのではないのですか?」

 「そう思っているのだが、この部屋を出ると、このことに関しては喋れなくなる。それにこの部屋には屍鬼の血を引く人間以外は入れない」

 秀春がそう言うと姉妹は一斉に楓を見た。

 「…それなら、四郎園さんは?」

 「そう、そこだよな。

 なんで楓がここに入れたのか、気になるだろ

 最近、父さん調べ物をしていただろ? ちょっと強引な手を使って楓の家系図を辿っていたんだ。

 さっき、話した中に双子が出てきただろ? 刹那と永久。四郎園は永久の方の血を受け継いでいる家系だ。

 俺らは刹那の方の家系。話の最後方であったように武鬼を取り出したのは刹那だけ。鬼の血を濃く受け継いだからな。角も刹那には生えていたけど永久には生えていないし。

 永久の方は人間の方を濃く受け継いだから武鬼を取り出すまではいかなかった」

 「じゃあ、どうして、刹那の家系と永久の家系で別れたのさ」

 「それは紆余曲折あるわけさ。

 今、話す事ではない。大事なのは俺ら四季家が何をしでかしたか、という事だけだ。

 これ以上俺らの先祖が侵した禁忌によって関係のない人の被害を増やすわけにはいかない。

 それが俺らに出来る最大の罪滅ぼしなのさ。

 よし、話はここまで。後は部屋に戻っていいぞ。俺は引継ぎが終わったから、ここの鍵は千春に託すからな」

 秀春はそう言うと部屋を出た。残された皆はその場から動けずにいた。


 

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