回想 其の四
双子が生まれてから六年が過ぎようとしていた。
「おい永久。ぼんやりするなよ。
獲物に逃げられるぞ」
「そんなこと言っても、私は刹那と違って素早く動けないんだからどうしようもないよ」
永久と呼ばれたおかっぱ髪の女の子は、次から次へと木を伝って素早く移動していく男の子、刹那に文句を言った。
「本当に刹那には鬼の血が混じっているのか?
全然力も無いし、角も見当たらない。
挙句の果てには追い詰めた獲物にも逃げられたし」
刹那は木から降りてきて文句を言うと、後ろから軽く頭を叩かれた。
「こら、刹那。永久の事を悪く言うんじゃない。
刹那と違って永久にしか出来ないこともあるんだぞ」
「いてっ。
なんだ、お父さんか。
そうは言ってもさ、獲物には逃げられちゃ、今日のご飯もそこら辺に生えている草だけになるじゃん。
俺、そんなんじゃ腹が満たされないよ。肉を喰いたい。
ねぇ、里に下りてもいいでしょ?」
「ダメだ。何度言ったら分かるんだ。
お前たちは鬼と人間の間に生まれた子供だ。
人間には関わってはいけない。それは守らねばならぬ決まりだ。よいな?」
双子の父、鬼である屍鬼はそう言うと刹那は渋々返事をした。それを見た屍鬼はニコリと笑い、「では、帰ろうか」と言って双子の手を取った。
家に戻ると雪がご飯の支度をしていた。
「あら、戻ったんですね」
「あぁ、すまないが今日も肉は取れなかった」
「いいんですよ。
私は家族みんなでご飯が食べられるだけで幸せですから」
「お母さん、もうこの山には獲物になる動物は残ってないよ。
俺達だけじゃなくて里の人も動物を狩っているから、数が少なくなってきているんだ」
「それなら、しばらくは肉を食べることは我慢して山菜を食べなきゃね」
「そうじゃないよ!
別の山に移動しようよ! それなら、動物がたくさんいるはずだから肉を食べれるよ!」
刹那がそう言うと雪は少し寂しそうな顔をした。
「それは出来ないの」
「どうして!」
「それが私たちに課せられた罰だから。
あなた達に背負わせてしまうのは酷だけど、仕方ないことなの」
「意味が分からないよ!」
「そのうち分かるはずよ」
「もういい!!」
刹那はそう言うと家を飛び出した。
「ちょ、ちょっと刹那!」
「私が行く」
屍鬼はそう言うと刹那の後を追った。
雪は深いため息をついた。
「お母さん、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫よ。
いい、永久。あなたは優しい子だから、お兄ちゃんが悪いことをしそうになったら止めてあげてね」
雪がそう言うと永久はゆっくりと頷いた。




