回想 其の二
「…ここは」
「目が覚めましたか?」
屍鬼はゆっくりと体を起こした。痛む体を押さえる。
「無理をしてはいけません。傷も塞がっていないですし」
屍鬼は声のする方へ顔を向けた。そこには優しく微笑む女性の姿があった。
「お前は?」
「この家に住んでいます、雪と申します。
山菜取りをしていたら、偶然倒れているのを見かけましたのでここに連れて帰りました」
雪と名乗った女性はそう言って頭を下げた。
「お前、私が鬼だと分かっていて助けたのか?」
「助けるのに鬼も人も関係ありません
困った時はお互い様です」
「…そうか。変わった奴だな。
この家はお前一人で住んでいるのか?」
「そうです。
以前は父と住んでいたのですが、…殺されました」
「…それは、鬼にやられたのか?」
屍鬼が尋ねると雪は小さく頷いた。
「なら、何故私を助けた。
お前の仇である鬼を」
屍鬼がそう言うと雪は首を横に振った。
「あなたは私の仇の鬼ではありません。
私の父を殺したのは角が二本の鬼でした。
あなたは一本ではありませんか。それに私はこの目で父を殺した鬼を見ました。
さっきも申し上げた通り、困った時はお互い様です。これは尊敬する父の教えなのです。
その教えを守る為なら、相手が鬼だろうと人間だろうと関係ありません」
雪のその毅然とした態度に屍鬼は気圧された。
「そうか。それなら仕方あるまい。
ならば、お言葉に甘えて、傷が癒えるまでここに居ても良いか?」
屍鬼がそう言うと雪は優しく微笑んで頷いた




