奥の間
次の日、楓は学校に行く前にニュースをやっているのが目に入った。ニュースの内容はうちの学校であった連続行方不明事件についてだった。
『えー、最近、話題になっていた山谷地区での連続行方不明事件についてですが、犯人が見つかりました。
犯人は三十代男性で、事件について全て関与を認めているとのことです。動機など詳しいことは調査中とのことで――』
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「ねぇ、美冬利さん、今朝やってたニュースで連続行方不明事件の犯人が捕まったって言ってたけど、犯人は浩太だよね。あれってどういうことなの?」
学校に向かう道中、楓は美冬利に尋ねた。
「あれは、わざと罪を被るようになっている人なのです」
「訳が分からない」
「本来、鬼に関することは、一般の人に知られないようにしなくてはなりません。事が大きくなる前に鬼を処理するのが私たちの仕事です。
ですが、どうしても、今回みたいに被害者が多数出てしまい、世間に知られてしまうことがあります。
今回の場合は犯人の特定に至ってないので鬼の存在は知られていませんよね? そういった時に、あの人達がわざと捕まることで鬼の存在が世間に知られることがないというわけです」
美冬利は淡々とした口調で説明した。
「その人達可哀想じゃないの? 無実の罪で捕まっているわけでしょ?」
「大丈夫ですよ。取り調べも、鬼に精通している警察の方が対応します。裁判も普段通り、六人殺したなら、六人殺した分の判決が言い渡されますが、その刑が執行されることはありません。
ただ、世間からは言われない罪で非難はされますが、それはそういう仕事なので仕方ないとしか言いようがありません」
「…そうなんだ。
なんだが、何とも言えない気持ちになるね」
「まぁ、そうですね」
そんな話をしながら二人は学校へ到着した。偽物の容疑者が逮捕されたこともあり、学校は少しだけ前の様な雰囲気に戻っていた。
それから、何事も無く本日の学校生活を終え、二人は四季家に戻った。既に他の姉妹は家に戻っており、皆、待ちくたびれた様子だった。
「姉さん達は早かったんですね」
「大学生はある意味自由だからな」
「千春姉さん、そんなことばっか言ってると留年するよ。ちゃんと授業受けてる?」
「な、夏樹も人のこと言えないだろ!」
「まぁまぁ、言い争いは後にしようよ。今日は奥の間に行くんでしょ?」
「分かってるよ。
ほら、行くぞ」
「あの、秀春さんは?」
「ん? 父さんか?
父さんは先に奥の間に行ってるよ」
千春はそう言うと歩き出した。皆それに付いていく。
だだっ広い家の中を五分程歩き、地下室に続く入り口までやって来た。初めて入る地下通路は上とは空気が違った。何か纏わりつくような重苦しい空気が漂っていた。
「子供の頃は、ここに近付くだけでも嫌だったよな」
千春は笑いながらそう言った。
「確かに。まぁ、今でもあまりいい気はしないけど。
「本当だよ~
早く用事を済ませて部屋に戻りたい」
姉妹達はそんな愚痴を溢しながら一本道の地下を進んでいく。薄暗い地下に足を踏み入れてから二分。とうとう扉が見えてきた。そこには秀春の姿もある。
「おー、遅かったな」
「お父さんが早すぎます」
「そうか? まぁ、とりあえず中に入ろうか」
秀春はそう言うと扉を開けた。
姉妹と楓は秀春に続くように中に足を踏み入れた。中は少し豪華に装飾された倉庫みたいな作りになっている。
数多くの棚があり、その棚には古い巻物や本が所狭しと置かれている。しかし、秀春はその巻物や本にはふれず、どんどん奥にすすんでいく。すると、一際頑丈そうな扉が現れた。秀春はその扉の前に立つと、何か呪文のようなことを呟いた。少しして、扉が開く音がした。
その扉を開けると、中は岩を切り抜いて作ったドーム状の形をした広場みたいになっていた。その中央に岩で出来た台のようなものがある。その台の上に一本だけ古い巻物が置かれていた。
「これが、代々四季家に伝わる巻物だ。
ここに書かれていることは紛れもない事実だ。覚悟して聞くように」
秀春はそう言うと巻物を広げて読み始めた。姉妹と楓は適当な場所に腰掛け耳を傾けた。




