四季家にて
同日、午後十時三十五分。千春が鬼比良のところから戻った。
リビングに入ると、皆まだ起きていた。そこには父の姿もある。
「父さん、帰ってきてたのか」
「あぁ、すまないな。急用が出来たから楓の事を任せてしまったな」
「いや、別にいいよ。
それにしても腹が減った。なんかあるか?」
「何かあるかって言うより、みんな千春姉さんのこと待っていたから、今からご飯だよ~」
秋穂はそう言いながら立ち上がり食卓の方へと向かった。それに続くように夏樹、美冬利、楓もご飯の準備をするため食卓の方へ向かった。秀春と千春もそれに続いた。
少し遅めの晩御飯。皆、黙々とご飯を口に運ぶ。暫く沈黙が続くと、ふいに秀春が口を開いた。
「明日は、お前ら何の予定もないか?」
「えっ、私はないけど、急にどうしたの?」
「私も、今のところは~」
「私もないですね」
「私は鬼次第」
姉妹はそれぞれ、そう答えた。
「いや、実は大事な話があるんだ。
明日は鬼が出ても行かないようにすること。
これは父さんからの命令だ」
「そんな、命令を下してまでもしなきゃいけない大事な話しって?」
「『奥の間』に行こうと思っている」
奥の間という言葉が出た時、明らかに食卓の雰囲気が変わった。
「あの、奥の間と言うのは…」
一人、置いてけぼりを食らっている楓が尋ねた。
「奥の間、というのは四季家に代々受け継がれているもので、そこには四季家の成り立ちについての書物があると聞いています。
勝手に入ることが出来ず、入室する際は必ず、家の長の許可が必要なのです。今はお父さんからの許可が必要となるわけです」
楓の質問に美冬利が淡々と答えた。
「へぇ、そんな部屋があるんだ」
「はい、そして、その部屋に足を踏み入れるということは長が引退するということを意味します」
「えっ」
楓は秀春を見た。秀春は微笑んでいる。
「まぁ、引退と言うかなんと言うか、って感じなんだけど。
俺はこの家にいることが少ないだろ? それに最近、娘達を見ていたら、もうこの家を任せても大丈夫かなって思えるようになっただけさ。
楓も明日、奥の間に来るか?」
「ちょ、父さん! 楓君は部外者だよ?
奥の間に関することは門外不出でしょ!?」
秋穂は慌てたような口調で父に詰め寄った。
「楓も家族みたいなもんだろ?
それに奥の間に入って聞いた話は、絶対に外で話せないようになっているんだ。
まぁ、聞くも聞かないも楓次第だよ。
楓はどうする?」
「…聞いてみたいです」
「よし、決まりだな。
明日、学校が終わったら真っ直ぐ帰って来いよ」
秀春はそう言うと食卓を後にした。




