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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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鬼比良

 同日、午後七時三十四分、千春は一時間程かけ、四季家から約八十キロ離れた鬼兵隊の本部がある山へと訪れた。

 「ここからが面倒くさいんだよなぁ」

 千春はそう言って山の麓から上を見上げた。標高は大体三百メートル程で道もそこまで険しくはない。だが、その道中に嫌と言うほどの罠が張り巡らされているのだ。

 どういう仕組みになっているのかは不明だが、特殊なセンサーが張り巡らされていて、鬼兵隊に登録されている者、或いは鬼比良に招待された者以外がこの山に立ち入れば問答無用で様々な罠が発動するようになっている。

 千春は一つため息をつき、山へと足を踏み入れた。


―――

――


 「鬼比良様、客人が参りました」

 鬼兵隊の一人が鬼比良にそう言うと、鬼比良は自分の爪を綺麗にしながら興味なさそうに「あらそう」と呟いた。

 「どうしますか?」

 「…あなたは一々、私から指示を出さないと動けないのかしら?

 せっかくいらしたお客様を帰らすつもり?」

 「す、すみません! すぐお連れします!」

 隊員はそう言うとどこかに消えた。

 「…まぁ、招いた覚えはないんだけどね」

 それから五分程して鬼比良の前に千春が現れた。

 「一体、何の用?

 あぁ、あなたは外れて頂戴」

 鬼比良がそう言うと隊員は頭を下げてどこかに消えた。

 二人っきりになると千春は鬼比良に詰め寄った。

 「一体、何の用だぁ? しらばっくれるんじゃないよ、詩織ちゃん」

 「本当に何のことか分からないわ」

 「最近、雑魚の鬼が突然大量発生していてな、今日、その事件に絡んでいる鬼が『強制的に鬼にされた』と言ったんだ。

 そんなこと出来るのはお前のとこだけだろ」

 「…あぁ、そのことね。

 残念だけど、その件について、鬼兵隊は一切関係ないわ」

 「その証拠はあんのか?」

 「えぇ、もちろんよ。

 ただ、そのまま情報をあげるのは癪に障るからあなたも何か一つ有益な情報を私にくれるかしら」

 「…お前の情報次第ってとこかな」

 「…はぁ、呆れる。まぁ、いいわ。先に話してあげましょう。

 強制的に鬼に変えているのは私たちではなく『魅鬼』という鬼よ。魅了するの魅に鬼と書いて魅鬼。

 ランクは上位に食い込んでくる。性別不明、年齢不明、生息場所不明。何せ、最近見つかった鬼だからそれぐらいしか情報が無いわ。ただ唯一分かっていることは人を強制的に鬼に変えられるという事だけ。例え、どんな善人でもね」

 「なるほどね。そりゃ、大層な鬼様だ。

 それで、お前らがやっていない証拠っていうのはどこにあるんだ?」

 「…あくまでも私たちがやっているとでも言いたいのね。

 そんなの少し考えれば分かることじゃない。私たちは強制的に鬼に出来ても、一日に何体も作れないわ。精々、フルで頑張って一日に二体が限界。

 それに作るにしても、伺い書、報告書等の書類を毎回提出しないといけないのよ。そんな暇があるように見える?」

 鬼比良の問いに千春は黙ったままだった。

 「…まぁ、これが私の持っている情報の全てよ。

 今度はあなたの番。一体、どんな情報を教えてくださるのかしら?」

 「逆にどんな情報が欲しい? なんでも答えてやるよ」

 「強気ね。

 まぁ、そうね…。ぶっちゃけると、別にあなたから欲しい情報はないわ。私たちは独自のルートを持っているもの。

 …そうね、強いて言うならば、そちらで飼育している鬼人のことかしらね」

 「飼育なんて人聞きの悪い表現の仕方をするじゃないか」

 「あら? 強ち、間違いではないでしょう?

 どうせ、用済みになったら殺すくせに」

 「そんなことするかよ」

 「歴史に学べば殺して来たじゃない。使えなくなった途端、あっさりと」

 「少ない歴史を教科書にすんな。例外もあるんだよ。

 機嫌がいいうちに楓のことについて聞いていた方がいいぞ」

 「うーん、そうね~

 彼の女性の好みかしら?」

 「お前、ふざけてんのか?」

 「私は至って真面目よ?」

 「それを知ってお前に何の得がある?」

 「その質問には答えられないわ」

 「…そうかい。

 残念だけど、私は恋愛に疎いからあいつの女性の好みはよく分からない。

 ただ、うちの美冬利のことは好いているんじゃないかな?」

 「どうして?」

 「あいつは美冬利をストーカーして鬼になったからな」

 千春がそう言うと鬼比良は腹を抱えて笑った。

 「ぷっ、あはは、あはははは。

 何それ、超笑えるんですけど。四鬼を倒せるかもしれない鬼札が犯罪者予備軍?

 私たち専用の週刊誌があれば特ダネのネタだわ。

 確かに、魅鬼の情報と同等の価値があるわ」

 「そうかい、お気に召されたみたいでよかった。

 じゃあ、用事も済んだことだし、私は帰るわ」

 「あらそう、帰りはお気をつけて」

 「ちゃんとセンサー切っとけよ」

 千春はそう言うと鬼比良の元を後にした。

 一人になった鬼比良は一つため息をついた。

 「…流石、四季家といったところね。あの罠の数を無傷で突破出来る人間は後にも先にも、きっと四季家だけだわ」

 鬼比良はそう呟くと、また自分の爪を綺麗にし始めた。

 

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