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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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友達

 自宅を後にした楓は真っ直ぐ四季家には戻らず、少し寄り道をすることにした。どこへ寄り道をしたかと言うと、四郎園家から歩いて十分程のところにある浩太の家だ。

 どうして、浩太の家に寄ろうと思ったかと言うと、今日学校が終わり、帰ろうとした時に浩太が楓に「今日、家庭訪問だろ? 家庭訪問が終わったら俺ん家に来てよ。渡したいものがあるからさ」と言うので、物を渡すだけなら遅くならないかと思った楓は少しだけ寄り道をすることにしたのだ。

 少し歩き、浩太の家に着いた。呼び鈴を鳴らすが返答がない。いつもなら浩太の母が出てくるのだが、その気配がない。

 楓はもう一度呼び鈴を鳴らす。やはり返答はない。浩太さえ出てくる気配も無い。おかしいと思った楓はドアノブに手をかけ、扉を開けた。鍵はかかっていない。

 「…こんにちはー、楓です」

 家の中に誰かがいるような雰囲気ではない。それに、まだ外は明るいというのに、薄暗い雰囲気が家の中を包んでいた。

 「すみませーん! 浩太はいますかー?」

 今度は少し大き目の声で呼びかけると中から「来るな!!」と声が聞こえた。その声は浩太の声だった。

 楓は嫌な予感がした。きっと何か事件に巻き込まれたのでは?と思った。

 来るなと言われたが、楓は急いで家の中に入った。

 浩太の家のリビングに繋がる扉を勢いよく開けると、リビングの真ん中で座っている浩太の姿があった。そして浩太は腕の中に何かを抱えていた。

 「ど、どうしたの?」

 「…来るなって言っただろ」

 「で、でも」

 楓はゆっくりと浩太に近付く、浩太の側まで来ると、浩太の腕の中に何があったのか分かった。

 その腕の中に抱えていたものは辛うじて人と分かる物だった。楓はそれに気付いて視線を逸らすように辺りを見渡すと、所々に血が飛び散っていた。

 血の匂いと浩太の腕の中にあるものを見た楓は吐き気を催した。

 「だから、来るなって言っただろ」

 「…い、一体、何が…」

 「そんなのこっちが聞きたいよ。

 家に帰ってきたら、こうなっていた。母さんも妹も」

 浩太はそう言うとゆっくりと立ち上がり楓に近付いてきた。

 「なぁ、楓、俺はどうすればいい?」

 浩太は楓に手を伸ばす。その手が楓に触れようとした時、後ろから声がした。

 「そこまでです。

 動かないでください」

 聞き覚えのある声だった。楓が振り返ると、そこには美冬利を始め、四季家の姉妹の姿があった。

 「…どうしてここに?」

 「…四郎園さん、心して聞いてくださいね。

 今、四郎園さんの目の前にいる、川野瀬浩太さんはもう、四郎園さんの知っている川野瀬浩太さんじゃありません」

 「…い、意味が分からないよ」

 「だからー、楓君の目の前にいる浩太君は鬼になっているってことだよ~

 やーっと見つけたんだからね、君の知っていること全部話してもらうよ」

 頭の整理が追いつかない。浩太が鬼? どうして?

 嘘であってくれと思いながら楓は浩太の方を見た。

 「…く、くく、くくく、あはは、あははははは。

 流石、『あの方』の言う通り、四季家は俺が鬼だと嗅ぎ付けるのが早い。色々とカモフラージュまでしてもらっていたんだけどなぁ。

 もう少しで楓を喰えたんだけど、そう簡単にはいかないってわけかぁ」

 「ちょ、ちょっと、浩太、どうしちゃったのさ」

 「どうした?

 お前、何言ってんの? どうしたも、こうしたもないだろ。

 お前の知っている川野瀬浩太は鬼に喰われて死んだの。そして、今の俺がいるわけ」

 「じょ、冗談だよね…」

 「楓!! 何時までそんな寝惚けたこと言ってんだ!

 そいつは鬼だ。鬼になってしまったんだ。

 そうなってしまった以上は、お前の友達だとか関係ない。討ち果たさねばならない対象になってしまったんだ」

 千春が楓を一喝した。しかし、楓はまだこの状況が飲み込めないでいる。

 楓が呆然と立ち尽くしていると、千春たちよりも先に浩太が動いた。

 素早く動き、立っていた楓を掴むと窓を突き破って外に出た。千春たちは慌ててその後を追った。

 浩太を屋根から屋根へと素早く移り、千春たちを撒こうとしている。千春たちも全速力で追いかけているのにも関わらず、人ひとり抱えた浩太に追いつくことができない。

 「あいつ、一体何人の人を喰らったんだ。下級クラスの動きじゃないぞ」

 十分程、逃走劇を続けていると袋小路に追いつめられた浩太が足を止めた。

 「おい、いい加減諦めたらどうだ?

 こっちは鬼退治のエキスパート四人に対してお前は一人だ。勝ち目がないと思わないか?」

 「あぁ、そう思うよ」

 「じゃあ、とりあえず、その人質にしている奴を解放してもらおうか」

 千春がそう言うと浩太はあっさりと楓を解放した。楓は戸惑いながらも、千春たちの元に駆け寄った。

 「やけに素直だな。何かとっておきの秘策でもあるのか?」

 「いや、特にこれといった策はない。どうせ死ぬなら潔く、と思っただけさ。

 でも、俺を殺していいのか? お前たちが思っている通り、俺はここ最近の鬼が大量発生している件に絡んでいる。

 なんなら、その原因を知っている」

 「…取引がしたいわけか、まぁ、別に話したくないならそれでいい。私はお前を殺すだけだからな」

 「ちょ、ちょっと、待ってくださいよ! 千春さん、本当に浩太を殺すつもりですか!?」

 楓は慌てて二人の間に入った。

 「楓、私はさっきも言ったよな? 何時まで甘えているつもりなんだ?」

 「で、でも!」

 「どけ」

 千春はそう言って楓を突き飛ばすと、武鬼を取り出した。そして、そのまま浩太に切りかかった。

 「チッ、すばしっこいう奴だ。私の攻撃をその程度で済むなんざぁ、片手で数える程しかいねぇよ」

 浩太は切られた右肩を押さえている。その傷口からは血が垂れている。

 「まぁ、次で終わりだ」

 先程の攻撃を受け、もう避ける余裕のない浩太に千春は次の攻撃を仕掛けた。その一撃は完全に浩太を殺すための攻撃であったが、千春はその攻撃を寸の所で止めた。

 「…おい、楓、何のつもりだ」

 浩太の前に楓が立ち塞がっていた。それも鬼人になった状態で。

 「…お願いします。浩太を殺さないでください。僕の、僕の大切な友達なんです」

 「ふっ、お人好しもいいところだな。こんな俺を助けて、お前に何の得があるんだ。

 ここまで真っ直ぐな厚意を向けられたら俺も戦う気が失せる」

 浩太は薄ら笑みを浮かべながらそう言った。そして話を続けた。

 「お前らが知りたがっていることを教えてやるよ。

 俺は鬼にさせられたんだ。自らの意思で鬼になったわけじゃない」

 浩太がそう言うと千春が慌てた様子で浩太の胸倉を掴んだ。

 「おい、それはどういうことだ!」

 「どういうことって、そのまんまの意味だよ。

 俺はある日、男を二人引き連れた女に「あなた、素質がありそうね。ちょっと、お話しない?」と言われたんだ。

 もちろん、そんな話を聞くつもりはなく、帰ろうとしたんだけど、女が連れていた男に道を塞がれてさ。まぁ、選択肢は初めから無かったんだ。

 強制的に話を聞く嵌めになった俺あ女と男に連れられて人里離れた場所まで連れていかれた。

 正直、かなりビビったよ。殺されるんだって思った。でも、そうじゃなかった。

 どこだったか忘れたけど、連れていかれた場所で鬼の事を聞いた。冗談だと思ったけど、目の前で人が食われるところを見せつけられて嘘じゃないってことが分かった。

 それで、俺も次はああやって食われるんだって思ったら、女が折れに「私の言う事を聞けば君はきっと素晴らしい鬼になれるよ。聞くまでもないけど、どうする?」って言われたんだ。

 選択肢の無かった俺は鬼になると即答した。鬼になった俺はそいつの言う通り、自分の学校に通っている生徒を殺したり喰ったりしたよ」

 「では、最近学校で起こっていた連続行方不明事件の犯人は川野瀬さんだったのですね」

 美冬利に尋ねられると浩太はゆっくりと頷いた。

 「行方不明になっている方々は今どこにいますか?」

 「ふっ、そんなの聞かれなくても分かっていることだろ?

 希望を持つだけ無駄だよ。殺した二人以外は喰ったさ」

 「やはり、そうですか。

 では、もう一つ質問なのですが、殺した人たちの名前を入れ替えると「みとり ころす」となるのですが、それは偶然ですか? それとも狙ってやったことですか?」

 「さぁ? 俺は言われた通りやっただけだからな」

 「一体、誰に命令されたのですか? それにあなたを鬼にしたのは誰ですか?」

 美冬利が尋ねると浩太は諦めたように空を見上げた。

 「もう隠しようがないからなぁ。

 俺を鬼にした奴か。そいつの名前は―

 浩太が名前を口にしようとした時、美冬利の頬を何かが掠めた。その、何かは浩太の眉間に命中した。そして、その瞬間浩太の頭は跡形もなく消し飛んだ。

 「誰だ!!」

 千春はすぐに振り返った。一瞬、人影の様なものが映り、どこかに消えた。千春は夏樹と秋穂に「行くぞ!」と言うと三人は一目散に人影を追いかけていった。

 残された楓は力ない足取りで頭の無い浩太の死体に近付き自分の体に抱き寄せ、声をあげる事無く泣いた。美冬利はそれを静かに見つめる。

 「…ねぇ、美冬利さん」

 「はい、なんでしょう」

 「どうして、浩太は死んじゃったの?」

 「…川野瀬さんは鬼になってしまったからです」

 「どうして、鬼になったから殺されなくちゃいけないの?」

 「鬼は人を食べます。それだけではなう、常人では有り得ない程の力を得ます。

 …前にも説明したと思いますが」

 「分かっているよ、そんなことぐらい。

 じゃあ、どうして僕は鬼になったのに殺されないの?

 僕も化け物なのに、どうして、同じ化け物の僕は生かされているの? いっそのこと殺してくれれば楽になれるのに」

 美冬利は驚いた表情を見せたが、すぐいつものように無表情とも取れる顔に戻った。そして、少し間があった後、優しく微笑み浩太を抱えたままの楓を抱きしめた。

 「…そんな悲しいことを言わないでください。

 四郎園さんが死んだら私は嫌です。

 …私はお母さんが目の前で殺されてから、氷鬼に復讐だけを目的に生きてきました。氷鬼を倒せるならこの命を捧げてもいいと思っていました。でも、実際に戦ってみると力の差は歴然で、とても敵うものではありませんでした。「あぁ、このまま死んでしまうんだ」と思った時、とても怖くなったのを覚えています。

 そんな絶望の中、助けてくれたのは四郎園さんでした。どうしようも無い闇の中に一筋の光が差したのです。

 その一筋の光はとても大きな光に変わりました。私に諦めちゃいけないって教えてくれたのは四郎園さんが諦めちゃ駄目です。あの時みたいにカッコよくて強くいてください。私のヒーローでいてください」

 美冬利の声は段々と震えていった。楓を抱きしめる力も少しずつ強くなっていった。楓はその腕の中で小さく呟いた。

 「…僕、強くなるよ。死んだ浩太の為にも、美冬利さんや千春さんたちを守る為にも。誰にも負けないように強くなる」

 楓がそう言うと美冬利は「はい、お願いしますね」と返事をした。

 しばらくすると、美冬利は楓から離れた。それを見計らったかのように姉達が戻ってきた。

 「お前ら、大丈夫だったか?」

 「こちらは特に問題ありませんでした。

 千春姉さんの方はどうだったのですか?」

 「逃げられたよ。

 …とにかく、ここの後片付けをしないとな。いつ人が来てもおかしくはないからな。

 秋穂、回収屋電話を頼めるか?」

 「はーい」

 秋穂は返事をすると、回収屋に電話をかけた。二、三言話すと電話を切った。そして、それから五分も経たないうちに深く帽子を被った女性が現れた。回収屋だ。

 「お疲れ様です。駒走です。

 おや? あなたが噂に聞く、鬼人の四郎園さんですか?」

 「えっ、そうですが…

 すみません、どちら様でしょうか?」

 「あぁ、すみません、申し遅れました。私は駒走回収の駒走と申します。

 あなたたちが倒した鬼の回収、処分を承っております。迅速、丁寧がモットーなので、ご要望の際はご贔屓に」

 駒走はそう言うと頭を下げた。楓もそれにつられて頭を下げる。

 「駒走は前に楓が倒した、万引き高校生がいただろ? その鬼の回収をしてもらったよ」

 「そうだったんですね。すみません、ご迷惑をおかけしました」

 「いえいえ、迷惑だなんて。私たちはこれが仕事ですので。

 あっ、千春さん、それで思い出したのですが、結局あの男の胴体は見つかりませんでしたよ」

 「あぁ、それはそっちからの報告書で確認したよ」

 「あれ、そうでしたっけ? じゃあ、それが四鬼絡みだってことも報告してました?」

 「いや、それは初耳だ。詳しく聞かせてくれ」

 「いいですよ。

 まぁ、そんなに有益な情報ではないんですけど、あの胴体を回収したのは四鬼である風鬼がしていたみたいです。

 そして、その回収した胴体を他の鬼に見せて、四郎園さんが鬼人であることが分かったみたいですよ」

 「それで四鬼がうちに攻めてきたという訳か。

 …それにしても、いつも思うんだけど、そんな情報をどこで仕入れてくるんだ?」

 「それは企業秘密です」

 「じゃあ、もう一つ聞くけど、この鬼の大量発生には誰が絡んでいると思う?」

 「それは今、調査中です。

 今のところは『強制的に鬼にできる』という事だけした分かっていません。

 …その『強制的に鬼にできる』ということをできるのは現時点では鬼兵隊の鬼比良隊長だけなのですが…」

 「…まぁ、薄々思ってはいたけど、そこんとこは本人に聞いてみないと分からないことだからなぁ。

 よし、夏樹、みんなを連れて先に帰ってくれ」

 「えっ、千春姉さんはどうするのさ」

 「今から鬼比良の所に行ってくる」

 「一人で?」

 「もちろん」

 夏樹は何か言いかけたが、千春の顔を見て、自分が言おうとしたことが無駄だという事を察した。

 「…分かった。

 晩ご飯冷めちゃうから早く帰ってきてよ」

 千春は頷くと、どこかに消えた。残された夏樹たちは、駒走と二、三言話し別れた。

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