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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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 「四郎園さん、起きてください。学校に行きますよ」

 特訓から帰って来た次の日、楓は毎度の如く、美冬利に起こされ学校に向かう準備を始めた。

 朝食を取る為、食卓へと足を運んだのだが、そこには誰の姿もない。食器も美冬利と楓の分しか出ていない。いつもならば朝食は皆で食べるので食器も人数分並んでいるはずなのだが。

 「美冬利さん、他の皆は?」

 「まだ、寝ています。

 昨日も晩御飯を食べて少ししたら、鬼退治に出かけて、先程帰ってきました。

 多分、後一時間ぐらいしたら、起きてきてまた鬼退治に出かけるのではないでしょうか」

 「そ、そうなんだ。

 美冬利さんは行かないの?」

 「私も行きたいのはやまやまなのですが、私まで鬼退治に行きますと、家のことが疎かになってしまします。

 だから、私はサポートという形で参戦しています」

 「そうなんだ。

 …あ、あのさ、やっぱり、昨日のこと怒ってる?」

 「…どうしてそう思うのですか?」

 「い、いや、なんだか微妙に距離を感じて…」

 「じゃあ、逆に聞きますけど、怒っていないと思いますか?

 そりゃ、怒りますよね。普通の人なら、ノックぐらいすると思いますが。

 まぁ、一ヵ月、川で体を洗っていたということを考えると温かいお風呂に入りたい気持ちも分かりますよ。それでも、この四季家は女性が多いのですよ。そこは考慮するべきだと思うのですが。

 それに普通ならば、すぐに目を背けたり、扉を閉じたりするのが当たり前だと思うのですが、四郎園さんは何故、三秒程こちらを見つめていたのでしょうか? 特訓の疲れで脳の処理速度が追いついていなかったから? それとも、ただ純粋に私の体が見たかったからなのでしょうか? まぁ、後者はないと思います。もし、後者ならば、私は今すぐにでも四郎園さんの眉間を私の武鬼で撃ち抜きます。

 とにかく、警察に通報しなかっただけでも有り難いと思ってください」

 美冬利は顔色一つ変えることなく、早口で捲し立てた。楓は返す言葉も見つからず、「すみません」と小さく謝り、朝食を口にした。

 気まずい朝食を終え、家を出ようとした時、夏樹が起きてきた。

 「あ、夏樹さん、おはようございます」

 「ふぁあ~、おはよー

 何かと物騒だから気を付けてねー」

 夏樹はそう言うと眠そうな顔をしながら食卓の方へと消えていった。

 「四郎園さん、そろそろ出ますよ」

 「う、うん」


―――

――


 一ヵ月ぶりの学校は特に変わった様子はない。と言いたいところだったのだが、何だか、何処も彼処も噂話をしている。

 それは、誰と誰が付き合っているだとか、隣町で新しい店がオープンするだとかの話ではなく、次は誰が消えるだとか、誰が死ぬと言った冗談でも言うようなことじゃない話ばかりだった。

 「美冬利さん、これって一体?」

 「そう言えば話していなかったですね。

 ここ一ヵ月の間で、うちの学校の生徒、六人が行方不明、もしくは死体で発見されています」

 「…え?」

 「他人事ではないですよ。

 四郎園さん、あなたは今、その犯人ではないかと噂されています」

 「…どうして?」

 「それは、四郎園さんが特訓のために学校を休み始めてから事件が起こったので、皆は四郎園さんの事を疑っています。

 根も葉もない噂話なので、馬鹿げているとしか言いようがありませんが、私たちには守秘義務が課せられていますので、四郎園さんのアリバイを証明することが出来ませんし、圧倒的な数の前では確かな正義も悪になります。

 時間が解決してくれると思いますので、しばらくは我慢しましょう」

 美冬利はそう言うと先に教室へと入っていった。楓も美冬利の後に続き教室に入る。すると、教室中の視線が楓に注がれた。少し間があった後、皆一斉に噂話に戻った。

 「ほらー、やっぱり言った通りでしょ? 絶対、四郎園が怪しいと思っていたんだって」「えー、でも、そんなことしそうなタイプじゃないけどねぇ」「人は見かけによらないって言うじゃない」

 「うわ、やっぱ、隣のクラスの奴が言ってた通りだったんじゃね?」「何が?」「いや、あの連続行方不明事件には四郎園と四季が絡んでいるってやつ」「あぁ、いきなり四季が『四郎園さんは一ヵ月休みます』とか言っていたやつだっけ?」「そうそう、それで四郎園が事件を起こして、それを四季が揉み消したとかいうやつ」「でも、四季にそんな力あるはずないだろ」「いや、そうとも言い切れないぞ。前に二人が一緒に男子トイレから出てきたらしんだけど、あの生徒指導の先生から何もお咎め無しだったみたいだぜ」「嘘!? それはやべぇな。俺、段々怖くなってきた。もしかしたら、明日消されるかもしれない」

 美冬利の言った通りであった。根も葉もない噂がクラス中に広まっている。この様子だときっと学年中、いや、学校中に広まっているだろう。

 楓は横目でチラッと美冬利を見た。美冬利はクラスカーストの上位に属している女の子グループに囲まれていた。

 「ねぇ、四季さん。隣のクラスの美咲ちゃん。あなたが誘拐したんじゃないの?」

 取り巻きの女の子達が「そうだそうだ」と囃し立てる。

 「私は知りませんけど」

 「恍けたって無駄よ! 美咲ちゃんを返してよ! 私の大切な友達なのよ!」

 「ですから、私は何も知りません。一体、私に何のメリットがあって隣のクラスの美咲さんを誘拐しなくてはいけないのでしょうか?

 それに、私は美咲さんの事を、余り存じていません。顔も曖昧です」

 「はぁ? あなた、私のこと馬鹿にしているわけ!?

 まぁ、いいわ。あなたに聞いても埒が明かないわ。実行犯の彼に聞いてみるから」

 女の子はそう言うと美冬利の席を離れ、取り巻きの大軍を引き連れて楓の席にやってきた。

 「あなた、美咲ちゃんをどこに隠したの!?」

 「し、知りません」

 「恍けないで!」

 「と、恍けてなんかいません! 本当に知らないんです。事件が起きていることも今日学校に来てから知ったので」

 「そう、あくまでもしらを切るつもりなのね。

 それじゃ、質問を変えましょう。あなた、一ヵ月も学校を休んで何をしていたの?」

 「そ、それは…」

 楓は言葉を濁した。

 「答えられないの?もしかして、何か疚しいことでも隠しているの?」

 「い、いや、そう言う訳じゃないんだけど…」

 「言いたいことがあるならはっきり言いなさい!」

 女の子はそう言って楓の机をバンッと強く叩いた。楓は下を向いたまま黙っているとチャイムが鳴った。それとほぼ同時に担任の先生が教室に入って来た。

 「ほらー、みんな席につけー

 おっ、四郎園は今日から復帰か、ちゃんと勉強していたか?」

 先生がそう言うと、女の子は舌打ちして自分の席に戻っていった。チャイムに助けられた楓はホッと胸を撫で下ろした。

 

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