鬼兵隊
四季家と同時刻、某所。
ここは鬼兵隊の本部がある場所である。建物は山の上に建っている巨大な寺造りの建物だ。
その中に飛び切り不機嫌そうな顔をした女がいた。そう、それは鬼兵隊隊長、鬼比良だ。その側には副隊長の祁答院が顔を青くしながら話しかけていた。
「隊長、流石に会長に対して、あの態度はマズイですよ。
隊長が帰った後、こっぴどく叱られたのは私なんですよ?」
「だからどうしたの? 慰めてほしいの? 叱られただけでしょ? 別にいいじゃない。死んだわけじゃあるまいし。
朽網さん、昔は恐ろしかったのよ。キレさせたら病院送りは当たり前。
私のお父様が現役の頃、調子に乗った新人が一番勢いがあった頃の朽網さんに絡んだらしいの」
鬼比良はそう言って祁答院を見た。
「…それで、その人はどうなったんですか?」
「死んだわ。いえ、殺されたと言った方が正しいわね」
鬼比良は抑揚のない声でそう呟いた。
「そ、それは本当なんですか?」
「えぇ、本当よ。
朽網さんの全盛期は、あの忌々しき四季家より討伐数が多かったの。やり方はあまり褒められたものではなかったみたいだけど。
その姿はまさしく『鬼』、まるでどちらが退治する側か分からないぐらいだったみたいよ」
「…なんという相手を怒らせたんですか! 私、死んでいたかもしれないんですよ!?」
「大丈夫よ。
朽網さんは、優しい人よ。それに、あんなの全然『怒った』の内に入らないわ」
「そうなんですね…
そ、それと、隊長、もう一つ聞きたいことがあるのですが、どうして四季家とあんなに仲が悪いのですか?
七代前までは仲が良かったみたいですが」
「祁答院、世の中には知らなくていいことがあるの。
明日も副隊長として生きていたでしょ?」
鬼比良はそう言ってにこやかに笑ってはいるが、それはただの作り笑いであることに祁答院は気付いているが決して口には出さなかった。「これ以上、その話はするな」という鬼比良の警告ということだ。
「まぁ、そんなくだらないことはどうでもいいわ。
新しい人材は見つかった?」
ここでいう人材とは新たに洗脳して鬼に変える人間のことを指す。祁答院は最初の頃、このやり方に疑問を抱いていたりしたのだが、最近は何も感じなくなってきた。
「えぇ、ここ最近の中で一番いいと思う人材です」
「それはとても楽しみね。
じゃあ、明日にでも会いに行きましょう。」
鬼比良はそう言うと椅子から立ち上がり、部屋を後にした。祁答院はその姿を見送ると、深いため息をつき、自室へと戻った。




