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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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出会い

 体育館へと到着すると、そこには既に何百人もの生徒が自分達の学年、クラスの場所で体育座りをして待機をしていた。楓もそれに(なら)い、自分のクラスの場所に座った。体育館の中は雑談をしているせいでかなりざわついていたがチャイムが鳴ると同時にその声は徐々に静かになっていった。全体が静かになったところで進行役の先生がマイクを使って話し始めた。そこから生徒指導の先生や校長先生の長い話が始まった。

 こういうのは何度やっても慣れない。正直、面倒だと思った。話の内容を覚えている生徒は二十人いるのだろうかと毎回思う。そんなことを考えているといつの間にか始業式は終わり進行役の先生が全校生徒に自分の教室に戻るように促した。

 何もしていないのに既に疲れた楓は教室に戻ると机に突っ伏した。ふぅ、と一息つくと、ふと隣に座っていた少女が視界に入った。その少女は窓際で本を読んでいた女の子だった。出席番号順に座りなおしたので、少女は楓の隣に移っていたようだ。その少女は楓の視線に気付き楓の方を見た。楓は慌てて視線を外した。すると丁度その時、浩太が話しかけてきた。

 「始業式お疲れ! いつも思うけどさ、校長の話長いよな! あんな長い文章いつ考えてるんだよって思うわ」

 「もしかしたら、一年前から考えているんじゃない?」

 楓がそう言うと浩太は大笑いした。

 「校長のことだから有り得るな。

 そう言えば、今日何か用事ある? 無いならさ、学校終わったら遊び行こうぜ!」

 「多分、何も無かったと思う」

 「よっしゃ! じゃあ俺ん家集合ね!」

 「分かった。じゃあまた放課後ね」

 楓がそう言うと浩太は「おう」と返事をして自分の席に戻った。浩太が席に戻ってから程なくして吉岡先生と御領先生が教室へと入って来た。

 「全員そろったか? いいかお前ら、生徒指導の先生が言っていたように三年生としての自覚を持って一年間過ごすようにしろよ。特に受験も控えているわけだから問題行動を(つつし)むように」

 吉岡先生がそう言うと生徒たちは頷いた。

 「それじゃあ、お待ちかねの自己紹介をしてもらおうか。出席番号一番の阿部から始めて男子が終わったら女子の出席番号一番からという流れで頼む。

 それじゃあ、阿部よろしく」

 吉岡先生がそう言うと阿部と呼ばれた生徒は返事をして立ち上がり自己紹介を始めた。

 「阿部 信二です。柔道部です。一年間よろしくお願いします」

 阿部はそう言って席に着いた。するとあちらこちらから拍手が聞こえてきた。そこから淡々と自己紹介は進んでいき、とうとう楓の番になった。

 「四郎園(しろうその) (かえで)です。一年間よろしくお願いします」

 楓は当たり障りのない挨拶をして席に着いた。それから、滞りもなく進み、楓の隣に座っている少女の番になった。少女は静かに立ち上がると自己紹介を始めた。

 「四季(しき) 美冬利(みとり)です。趣味は読書です。家の関係で学校に来られない日が多いですが一年間よろしくお願いします」

 か細い声で四季と名取った少女はペコリと頭をさげると席に着いた。少女の名前を知ることができた楓の頭の中はいつの間にか美冬利のことで頭が一杯になっていた。それからの話は一切頭に入ってくることはなく、いつの間にか下校の時間となっていた。

 ホームルームで吉岡先生が明日以ってくる物等の説明や注意事項を話した。帰りの号令がかかると各々は帰る支度を始めた。何人かの女子生徒は美冬利の机の周りを囲み、遊びに行かないかと誘うが美冬利は用事があるからと断りを入れ、そのまま教室を後にした。楓はその後を追うようにして教室を出た。

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