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四季さん家の鬼退治  作者: ぞのすけ
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学校生活

 楓と美冬利は教室へと向かっていた。すると、教室の前に浩太が立っていた。

 「おい、楓。昨日何してたんだよ。遊び行くって言ったからずっと待っていたんだぞ。

 家に電話しても、まだ帰ってきていないって言うしさ」

 浩太にそう言われた楓は、しまったという顔をした。浩太は相当怒っているようだ。まぁ、怒るのも無理はない。非は完全に楓にあるのだ。

 楓が謝罪の言葉を口にしようとすると、それよりも先に美冬利が口を開いた。

 「昨日は申し訳ありません。実は色々事情がありまして、昨日四郎園さんは私と一緒にいました。

 遊ぶ約束をしていらしたのですね。先約があったことは全く知りませんでした。

 ですが、今度は一切、四郎園さんを遊びに誘うようなことはしないでもらうと助かります」

 美冬利がそう言うと浩太は驚いた表情を見せた。

 「え、えっと、もしかして、君達付き合ってるの?」

 浩太の声は少し震えている。

 確かに、昨日の出来事を知らずに今の言葉を聞けば、彼女が彼氏を独占したいように聞こえる。しかし、美冬利が今言った言葉にそんな意味合いは一切含まれてはいない。

 美冬利は浩太の質問に不思議そうに首を傾げた後に質問に答えた。

 「付き合っている?

 まさか、そんなこと有り得ませんよ」

 美冬利は表情を変えることなくそう答えた。楓は美冬利の後ろで、ただ苦笑いを浮かべることしか出来なかった。

 そんな話をしていると朝のホームルームの開始を告げるチャイムが鳴った。三人を始め、教室の外に出ていた生徒達は一斉に自分の教室へと戻っていった。

 鬼となった楓の初めての学校生活は特に変わったことはなくいつものように進んでいった。たった一つのことを除いては。

 「…あ、あのー、美冬利さん?

 ここ男子トイレですけど…」

 五限目を終えて、休み時間にトイレに入った楓は普段、男子トイレで見かけることのない光景に諦めながらも言葉に出した。

 「えぇ、知っていますよ。今日でもう三回目ですから。

 私だって、こんなところに入りたくありません」

 美冬利はこちらに一瞥(いちべつ)もくれることなく答えた。

 「それだったら入り口で待てない?

 僕も出るものも出なくなっちゃうんだけど」

 「なるほど、そういう選択肢もありますね。

 では、なぜ一回目で言ってくれなかったのですか?」

 楓は呆れてため息をつき美冬利の質問に答えた。

 「いや、だってトイレにまで入って来るとは誰も思わないよ! 流石に二回目でそうするかなって思ったけど普通に付いてくるしさ!

 それに、トイレだけじゃなくて移動教室に行くときも本当に付きっきりだし。もう、クラスのみんなに付き合っているって噂されまくりだよ!」

 「それぐらいの噂など、死ぬことと比べればどうってことありません。

 私が目を離した隙に鬼が暴走してクラスどころか学校中に沢山の死体が転がるより四郎園さんのだけの死体が転がる方がマシですからね。

 あれ? もう用は足し終えたのですか?」

 「そんな話を聞かされて出るものが出る人を逆に見てみたいよ」

 楓はそう言うと男子トイレを後にした。美冬利はその後に続いてトイレを出た。すると、たまたまトイレの前にいた先生に声をかけられた。今まで出会わなかったことの方がラッキーなのだけれども。

 「おい、お前ら二人でトイレから出てきて何をしているんだ?」

 楓は血の気がサーっと引いていくのが自分で分かった。声をかけてきた先生は生徒指導の先生でとても怖いと有名な先生だった。先生もきっと男二人で出てくれば声をかけることなどしなかっただろうが、男子トイレから男と女が出てきたことが声かけの対象になったのだろう。まぁ、言わずもがななのだが。

 楓はこの不利な状況をどうやって言い逃れをしようかと考えていると、またもや美冬利が先に口を開いた。

 「私が四郎園さんの用を足すところを監視していました」

 「はぁ? 言っている意味が全然分からん。

 おい、四郎園。お前も黙っていないで説明しろ」

終わった。その時楓はそう思った。

 元々、目立つ方ではなかったし、友達も多い方ではなかった。それでも、学校生活はそれなりに充実していたと思っていた。

 しかし、今この瞬間に全て終わった。

 これからは、女の子に用を足すところを監視させていた変態というレッテルを貼られて残りの学校生活を過ごしていくのだろう。

 いくら、弁解したところで信じてくれる人も擁護(ようご)してくれる人もいないだろう。何故なら、トイレにいたのは楓と美冬利のみで、その二人が出てくるところを先生に見られた。それに加え、先生に注意されているのを見て野次馬がわんさかと集まってきている。

 楓は必死に考えた。考えすぎて口の中が渇いていく。すると、急に視界が揺らいだ。徐々に目の前が真っ暗になっていく。とうとうその感覚に耐え切れなくなった楓は倒れた。

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