31.戦力
俺のステータスが書かれたコピー用紙を見た三人が、揃って奇異な声を上げる。
「「「いやいやいやいや」」」
「な…何だよ皆して…。」
気圧された俺に、矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
「ちょちょ…ちょっと待って下さい先輩!何ですか【LV201】って!?桁が違うでしょ!?」
「本当だよ…何三桁って?…今日のダンジョンでは手を抜いてたってコト?」
「人聞きが悪いですよ…同行者が居るのに俺ツエーするのは趣味じゃないってダケで…どっちかと言えば、縛りプレイ的な?」
「「「舐めプ乙!」」」
舐めプとか…失礼な人達だな!
レベルは俺が努力した結果だぞ?
「ヒヒ…【HP1160】!?【力】782!?…っていうかEXスキル幾つ持ってるんですか!!…いえ、それよりも何ですこのアルティメットスキル【百鬼夜行】って!?完全初見の単語なんですけど!?」
「EXスキルは現状…53個あるな。アルティメットスキルはEXスキルが50個超えたら出たぞ?」
「【百鬼夜行】なのに50個で出るんですか?なんか中途半端…って53個!?一人で!?…先輩、こんな事言うのもアレですが馬鹿なんじゃないですか?」
「その数ってコトは…夢野君、平日もARダンジョン潜ってたね?休日とかはダンジョンのハシゴとかしてたんじゃない?」
「…いや、無茶はしてないですよ?…ただ俺、やり込むタチなんで…。」
俺がそう言うと、三人は無言で視線を交わす。
そして再び俺に視線を戻すと、深いため息を吐いた。
…なんだよ、その残念な物を見るような眼は。
「フヒ…夢野さんのステータス見ちゃったら、ゲーマーを自称するのが恥ずかしくなっちゃいましたよ私…。」
「…正直自分でもやりすぎたかなとは思ってる…。ステータス書き出してて、あまりの長さに途中で全部書き出すの諦めたからな。」
「…ちなみに【百鬼夜行】ってどんなスキルなんですか?」
「…EXスキルの元になったダンジョンボスが総出撃する、らしい。」
「フルバーストじゃないですかー何なのこの人ーっ!!」
「夢野さん、ぬらりひょんか何かですか?」
「…もう全部夢野君一人でいいんじゃないかな?」
酷い言われようだな…だから見せたくなかったんだよ、ステータス。
…自分でも途中から「あ、やりすぎかも」って思ってたからな。
…ちなみに、スキル等についてはこんな感じ。
〔所持スキル〕
◇【長巻術】
◆【唐竹割】
◆【疾風突き】
◆【大外刈】
◇【平常心】
〔所持魔術〕
◆【火魔術】┬フレアアロー:消費MP2
├フレアブレス:消費MP5
├爆炎球:消費MP10
├絢爛豪火:消費MP20
├ドラゴニックブレス:消費MP50
└☆ゲヘナの火:消費MP100
どうだ、こっちは思ったよりもマトモだろう!
スキルは【長巻術】をベースに長巻の技をいくつか。
【火魔術】は順当に伸ばしていったら最上級魔術まで覚えたけど…フィンガー〇レアボムズは覚えなかったな。
まぁ【爆炎球】を同時に五発出せば、限りなくそれっぽくはなるんだけど。
…山里さんの【水魔法】と見比べると、全体的に消費MPがちょっと多いんだな、【火魔術】。
【魔法】より【魔術】の方が燃費が悪いんだろうか?
実際、近接戦闘用の武器スキル一本と遠距離攻撃用の魔法系スキルが一種有れば、そこそこなんとかなっちゃうんだよな。
ダンジョンボスを倒せばEXスキルも拾えるしな。
閑話休題。
ステータス公開を終えた俺達は、【転移術】と【念話】のスキルを取得する事にした。
残りTPの関係上【転移術】は俺と山里さんが、【念話】は四人全員が。
そして会議室から出ると、会社の皆を集めて話をした。
「…という訳で、ご家族と合流したい人は俺と山里さんのスキルで送り届けることが出来ます。」
「本当か!?」
「それは有難い…連絡は取れているんだけど、やはり心配だったんでね。」
「…会社に家族も連れてきたら、流石に迷惑ですか?」
おずおずと挙手して言う女性社員に、黙って見守っていた社長が答える。
「…いや、この緊急事態だ。落ち着くまで避難先として利用してくれて構わない。食料は夢野君達が提供してくれた物があるので、簡易寝具だけは用意してきてくれると助かる。」
…ウチの社長、結構懐が広いよな?
地域の人が鬼に襲われていた時も、率先して社内に避難させてたみたいだし。
普段はあまり絡む機会が無かったんで、正直ここまで実直な人だとは思ってなかったわ。
「俺は…すいません、近所に住む親戚も心配なので、家に戻ります。」
「ウチの両親は避難所に逃げ込んだらしいが…傍に居てやりたい。」
この状況下だ…やはり、そういう人も居るよな。
俺と山里さんは頷き合うと、話を続ける。
「帰宅する方はこちらに集まって下さい。俺と山里さんで順番にお送りします。」
「夢野君、その前に…少しですが食料と、コレを持って行って下さい。」
そう言って山里さんが机に置いたのは…モンスターのドロップアイテム?
「これらはダンジョンのモンスターが落としたアイテムです。強力な魔法の力や、傷を癒す薬…接近戦用の武器も有ります。多少なりともステータスを強化した皆さんなら、これらのアイテムを有効活用できるでしょう。」
「魔法のアイテム…。」
「…うん、家族は俺が守らなくちゃ。有難く使わせてもらうよ。」
「会社に残る方々にも、何かあった時の為に配布します。皆さんこちらにどうぞ。」
山里さんと大島が長机にドロップアイテムを並べだしたので、俺もストレージ内でだぶついているアイテム類を放出することにした。
ごそっと取り出したドロップアイテムを並べて、簡単な説明を交えて配っていく。
…ふと、大島の手にしているドロップアイテムを見て…何か嫌な予感がした。
大島はそれを女性社員に手渡すと、使用方法の説明を始めた。
「これは【吹雪の宝珠】…手に持って魔力を流すと、敵に吹雪を浴びせて攻撃できるんです。…ちなみに別名チン──」
「言わせねぇよこのセクハラ野郎!!」
俺は両の拳で大島のこめかみを挟み込むと、そのまま力を込めてグリグリと押しつけた。
「ギャァァァァァァッ!!!わ、割れるっ!!頭蓋骨が割れるっ!!!」
大島の、断末魔じみた叫び声がフロア中に響き渡る。
…ハァ、ちょっと力を込めた程度だってのにコイツは…。
「…ったく、大袈裟だなぁ。」
「ゆ、夢野先輩の場合は、悪ふざけでも人が死ぬんスよっ!!【力】が161もあると、本当の意味でパワーハラスメントっすよ!?」
…そうだった、人間辞めてたんだったわ俺。




