3.微々たる変化の日々
翌朝。
いつも通りに会社へ出社すると、後輩の大島が声をかけてきた。
「あ、夢野先輩おはようございます!」
「おう、おはよう!」
俺が返事をすると、なんだか少し意外そうな表情…なんだ、どうした?
「…夢野先輩、なんか今日は調子良さそうですね。いつもだったら朝はもっとテンション低い感じなのに。」
「…そうか?」
言われてみれば、今朝はなんだか体調が良い気がする。
…朝の目覚めもスッキリだったな。
「…あ~、もしかしたら昨日から軽いトレーニング始めたからかな?ダイ…トレーニング用のスマホアプリ使い始めたんだ。」
「おお、流石夢野先輩!有言実行の男っスね!」
そんな雑談をしているうちに朝礼の時間になって、そのまま仕事が始まった。
…なんだろう、気のせいかもしれないけれど…調子が良いな。
いつもだったらパソコンに向かって二~三時間もすればダルさと眠気がやってくるんだけど、今日はそんなことも無く仕事も順調だ。
おかげで昨日から頭を悩まされていたデザイン仕事もサクッと終了。
残業も覚悟していたんだけど…定時には仕事が片付いてしまった。
「悪いけど大島、お先に上がるわ。」
「え、あの案件終わったんスか?流石夢野先輩、お疲れ様っス!」
いつもだったら残業仲間だったハズの俺が定時帰宅する事に、大島は驚いていた。
いやぁ、今日は色々と順調だったな。
…これも、トレーニングを始めた影響か?
…いやいや、まさか。たった一日トレーニングしただけで、そんな大きな変化があるワケ無い。
あるとすればアレだ、「プラシーボ効果」ってヤツ?
俺はトレーニングを始めたぞ!だから健康!頭もスッキリ!…って、どんだけ単純なんだよ俺。
…まぁ、あの程度のトレーニングで仕事が順調になるんだったら、儲けもんだけどな。
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帰宅後。
買って来た弁当で夕食を済ませた俺は、食休みを挟んでからスマホアプリ「Different Dimension Training」…「DDT」を起動する。
『こんばんわ、夢野さん。トレーニングメニューを選んでください。』
≪トレーニングメニュー LV.1≫
■クソ雑魚スライム野郎コース
初心者の方におすすめするコースです。
・腹筋10回×3セット
・腕立て伏せ10回×3セット
・スクワット20回×2セット
(効果:体重-・力+・体力+)
さて…今日も引き続き「クソ雑魚スライム野郎コース」に挑戦だ。
…この名前だけはどうにかしてくれないかなぁ…?
『「クソ雑魚スライム野郎コース」が選択されました。所定の位置に端末を配置してください。』
腹の上にスマホを置いて…っと。
『配置を確認しました…On your mark(位置について)…』
(ドンガッチッカ♪ドンガッチッカ♪)
例の異常に陽気なBGMが流れ始め、俺は両手を頭の後ろに回し合図を待つ。
『…Get set!(用意!)Go!!』
「…ほっ!!」
『Amazing!!(凄い!!)』
「ほっ!!」
『Way to go!!(やるじゃんっ!!)』
「ほっ!!」
『Perfect!!(完璧っ!!)』
よしよし、調子いいぞ!
「…ふっ!!」
『Outstanding!!(ずば抜けてる!!)』
「ふんっ!!」
『I'm impressed!!(素晴らしいねっ!!)』
「ふんふんっ!!」
『You're a genius!!(マジ天才っ!!)』
「…いや褒めのバリエーション多いな!!」
…まぁモチベーションを保つという意味では有難い。
これなら飽きずにどんどん続けられるからな。
俺はDDTに応援されながら、順調にトレーニングをこなしていく。
…そして。
「『Muscles do not betray(筋肉は裏切らない)…!!』」(ビシッ!!)
よし、フルセット終了!
…この最後のポージングするヤツ、楽しくなってきたな。
ちょっと癖になるかも。
『Mission complete!(任務完了!)「クソ雑魚スライム野郎コース」を達成しました。』
■氏名:夢野 新作
■性別:男 ■年齢:35歳
■身長:175cm ■体重:84.4kg(-600g!!)
□LV:1
□HP:15 □MP:0
□力 :8(+1!!)
□知恵:5
□魔力:0
□体力:9(+1!!)
□速さ:3
□運 :5
よしよし、順調にステータスも上がってるな。
…ん?
体重-600g…?
昨日は確か-500gだったハズだけど…なんで100g多いんだ?
…あ、コレか?
『Login Bonus (ログインボーナス)体重:-100g 継続は力なり。』
…ログインボーナスとかあるのかよ、ネトゲか。
確かに、トレーニングは長く続けることに意味がある…とか聞くしな。
しかしまぁ…ログボで体重-100gって…なんか変なの。
実際に俺の体重が減るわけでもあるまいしなぁ…。
あ、そういえば…昨日から体重、量って無かったな。
…折角トレーニング始めたんだし、ちゃんと量っておくか。
体重計、体重計…。
え…。
「…ぴったり84.4kgだ。…偶然ってあるんだな…。」




